このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
芭蕉の句
名月の花かと見えて棉畠
出典は
『続猿蓑』
(沾圃編)。
『芭蕉句選』
(華雀編)には「
花かとはかり
」とある。
元禄7年(1694年)8月15日、芭蕉が伊賀上野の
「無名庵」
で月見の宴を催した時の句。
各務支考
の評がある。
名月に麓の霧や田のくもり
名月の花かと見えて棉畠
ことしは伊賀の山中にして、名月の夜この二句をなし出して、いづれか是、いづれか非ならんと侍しに、此間わかつべからず。月をまつ高根の雲ははれにけりこゝろあるべき初時雨かなと、圓位ほうしのたどり申されし麓は、霧横り水ながれて、平田渺々
(べうべう)
と曇りたるは、老杜が唯雲水のみなり、といへるにもかなへるなるべし。 その次の棉ばたけは、言葉麁にして心はなやかなり。いはヾ今のこのむ所の一筋に便あらん。月のかつらのみやはなるひかりを花とちらす斗に、とおもひやりたれば、花に清香あり月に陰ありて、是も詩哥の間をもれず。しからば前は寂寞をむねとし、後は風興をもつぱらにす、吾こゝろ何ぞ是非をはかる事をなさむ。たヾ後の人なをあるべし。
支考評
服部土芳
の評がある。
新みは俳句の花也。ふるきは花なくて木立ものふりたる心地せらる。亡師常に願にやせ給ふも新みの匂ひ也。その端を見しれる人を悦て、我も人もせめられし所也。せめて流行せざれば新みなし。新みは常にせむるがゆへ
(ゑ)
に一歩自然にすゝむ地より顕るゝ也。「
名月に梺の霧や田のくもり
」と云は姿不易なり。「花かと見へ
(え)
て綿畠 」とありしは新み也。
『三冊子』
(土芳著)
『芭蕉翁全傳』
は、「新庵の月見」として、この2句に「
こよひ誰吉野の月も十六里
」を併記し、注記を付している。
此三句庵を見するとて門人たれかれ多く招かれし時と也。此菴赤坂にありて、無名庵といふ。(近頃庵を舊地の東白舌墅に移され、再形庵といふ。)三日月の記、口傳。其とし秋洛の
惟然
伊勢より
支考
斗從熱田より白鴻來る。(支考斗從は九月三日なり)。其ころ、
山形県米沢市の
心光寺
埼玉県春日部市の
不動堂
、加須市の
八幡神社
、行田市の
高橋家
に句碑がある。
八幡神社の句碑
高橋家の句碑
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