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俳 書

『続虚栗』(其角編)


貞亨4年(1687年)11月13日、『続虚栗』(其角編)刊。 素堂 序。

 春之部

   改 正

新年の御慶とは申けり八十年
   任口

誰やらが形に似たりけさの春
   芭蕉

桑さして栄行畑や老の春
    杉風

年の花富士はつぼめるすがたかな
   麋塒

元日や家にゆずりの太刀帯(はか)ン
    去来

鶯や雑煮過たる里つゞき
   尚白

日の春をさすかに鶴の歩哉
   其角

総角(あげまき)が手に手に手籠や薺つみ
    野馬

   大音寺

梅が香や乞食の家ものぞかるゝ
   其角

梅の花義経なりし姿かな
   曲水

   老 慵

蠣よりは海苔をば老の売もせで
   芭蕉

蕗のと(た)うほうけて人の詠かな
    嵐雪

よくみれば薺花さく垣ねかな
   芭蕉

つゆつゆと焼野にはやき蕨かな
   由之

   春 行

昼の鐘箒木きゆる霞哉
   仙化

巻付て筧をつたふかすみかな
   野馬

   同游と かしま に詣ける比、海の日の波を離
   出るに、「武蔵野の月といづれかさきにせ
   ん」といひて

松陰や旭見に行春の海
   不卜

    中山の塔 を見やりて

広き野の塔みよとてや舞ひばり
   不卜

雀子やあかり障子の笹の影
   其角

   結廬在人境

夕日影町半<ナカ>に飛こてふ哉
   仝

くりかへし麦のうねぬふ小蝶哉
    曾良

   重 三

不産女の雛かしづくぞ哀なる
   嵐雪

   草 庵

花の雲鐘は上野か浅草歟
   芭蕉

<コウ>の巣もみらるゝ花の葉越哉
   同

あらおぞや爪<ツマ>あがりなる花の山
   嵐雪
  去来妹
はなにあかぬ憂世男の憎き哉
    千子

炭うりもひとへ桜のあるじかな
   野水

石竈<くど>にさくら散りしく夕かな
   松江

さまざまの人にもあかぬ桜かな
   野馬

   剃 髪

西行の水にめしたくさくら哉
    荷兮

春もはや山吹しろく苣(ちさ)苦し
    素堂

   春 朝

蔀あけてくゝたち買朝まだき
   嵐雪

   艸庵を訪ける比

永き日も囀たらぬひばり哉
   芭蕉

原中や物にもつかず鳴雲雀
   同

   と聞えける次で申侍る

啼々も風に流るゝひばり哉
   孤屋

 烏帽子を直す桜一むら
   野馬

山を焼有明寒く御簾巻て
   其角



 夏之部

郭公なきなき飛ぞ閙はし
   芭蕉

時鳥一声まじる鶴の声
    杉風

夜こそきけ穢多が太鼓子規
   其角

   四月八日母のみまかりけるに

身にとりて衣がへうき卯月哉
   其角

   初七ノ夜いねかねたりしに

夢に来る母をかへすか郭公
   同

   五七の日追善会

卯花も母なき宿ぞ冷(すさま)じき
   芭蕉

   香消のこるみじか夜の夢
   キ角

色々の雲を見にけり月澄て
   嵐雪

   各 悼

卯花に目の腫れ耻ぬ日数かな
    露沾

啼入て音もなしそれは時鳥
    嵐雪

蚊遣にはなさで香たく悔み哉
    去来

   たのみなき夢のみ見けるに

うたゝねのゆめにみへ(え)たる鰹かな
   其角

   その夢に戯ル

下部等に鰹くはする日や仏
   去来

   端午三七日にあへりければ

我歎かぶとうらやむわらべかな
   其角

幟みぬ妹がり寒き外面かな
   彫棠

笋やかり寝の床の隅よりも
   嵐雪

たまたまに三日月拝む五月哉
   去来

   甲斐山中

山賤のおとがい(ひ)閉るむぐらかな
   芭蕉

   むらきみのもとにて

世をとへば安く茂れる榎かな
   自準

   木津へまかりて

山里の蚊は昼中に喰ひけり
   去来

さゞれ蟹足はひのぼる清水哉
   芭蕉

旅寐して香わろき草の蚊遣哉
   去来

唖蝉の鳴ぬ梢もあはれ也
   杉風

洗濯の袖に蝉鳴夕日かな
    杜国

   心法其コト口耳粗ナリ

蠅を打てともに生死(しやうじ)を軽くせん
    幻吁

更る夜を隣に効<ナラ>ふすゞみかな
   去来
  
夕立や箕に干(かて)のしばしだに
    宗派

鎧着てつかれためさん土用干
   去来

 秋之部

星合や瞽女<ゴゼ>も願ひの糸とらん
    嵐雪

蕣は二人ながめてあしき哉
    杉風

   遊女ときは身まかりけるをいたみて、久しく
      あひしれりける人に申侍る

露烟此世の外の身うけ哉
    去来

盆迄は秋なき門の灯籠哉
   嵐雪

躍子よあすは畠の艸ぬかん
   去来

花の秋草にくひあく野馬哉
    曾良

   去来 に供して伊勢へ詣ける
    道すがら初旅のこゝろを
  
伊勢迄のよき道づれよ今朝の厂
   千子

柴草の露もちかぬるそだち哉
   同

   聴閑

蓑虫の音を聞きに来よ艸の庵
   芭蕉

   聞にゆきて

何も音もなし稲うちくふ(う)て螽(いなご)
   嵐雪

   聖護院の宮覚寛法親王みね入
    有しを拝み侍りて

峯入は宮もわらぢの旅路哉
    宗因

   草庵の月見

名月や池をめぐつて夜もすがら
   芭蕉

雲折々人を休むる月見哉
   同

   鹿嶋に詣ける比宿 根本寺

寺にねて誠がほなる月見哉
   同

たれたれも東むくらん月の昏
   去来

   嵯峨に小屋作りて
    折ふしの休息仕候なれば

月のこよひ我里人の藁うたん
   去来

盲より唖のかはゆき月見哉
   去来

長き夜も旅くたびれにねられけり
   去来

痩ながらわりなき菊のつぼみ哉
   同

 不遊の部

   十月十一日餞別会

旅人と我名よばれん初霽 (しぐれ)
   芭蕉

   亦さゞん花を宿々にして
   由之

鷦鴒(かやぐき)の心ほど世のたのしきに
    其角



   芭蕉庵主回郷

時ぞ冬芳野をこめし旅のつと
    露沾

   烏巾を送る

もろこしのよしのゝ奥の頭巾哉
    素堂

木がらしの吹行うしろすがた哉
    嵐雪

鳴千鳥富士を見かへれ塩見坂
    杉風

冬がれを君が首途や花の雲
    其角

しぐれづく雲にわれたる入日哉
   杉風

   詩歌文章はもらし侍る。

雲よりも先にこぼるゝしぐれ哉
   去来

芭蕉いづれ根笹に霜の花盛
   素堂

   法華を聞侍りて

   (※サンズイ+「冗」)著世楽無有慧心
つとめよと親もあたらぬ火燵哉
   嵐雪

   十二月九日はつ雪降のよろこび

初雪や幸ひ庵にまかりある
   芭蕉

   友人

君火をたけよきもの見せむ雪まるげ
   同

    露沾 公にて

はつ雪は盆にもるべき詠哉
   其角

市に入てしばし心を師走哉
   素堂

年の夜や人に手足の十ばかり
   去来

おもへばや泣れ笑はれとしのくれ
   嵐雪

   

年の一夜王子の狐見にゆかん
   素堂

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