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芭蕉の句


あかあかと日は難面もあきの風

青柳の泥にしだるゝ塩干かな

あけぼのやまだ朔日にほとゝぎす

あけゆくや二十七夜も三かの月

紫陽花や藪を小庭の別座敷

暑き日を海にいれたり最上川

あつみ山や吹浦かけて夕すゞみ

あの雲は稲妻を待たより哉

雨折々思ふことなき早苗哉

荒海や佐渡によこたふ天河

あらたうと青葉若葉の日の光

有難や雪をかほらす南谷

有とあるたとへにも似ず三日の月

粟稗にまづしくもあらす草の庵

いかめしき音や霰の檜木笠

いざさらば雪見にころぶ所迄

いざともに穂麦喰はん草枕

いざよひもまだ更科の郡かな

石山の石より白し秋の風

市人にいで是うらん雪の笠

稲妻にさとらぬ人の貴さよ

いなづまや闇の方行五位の声

うき我をさびしがらせよかんこ鳥

うぐひすの笠おとしたる椿哉

鶯や柳のうしろ藪のまへ

うたがふな潮の花も浦の春

卯の花やくらき柳の及ごし

馬に寝て残夢月遠し茶のけぶり

馬ぼくぼく我を絵に見る夏野かな

馬をさえながむる雪の朝哉

海くれて鴨のこゑほのかに白し

むめがゝにのつと日の出る山路かな

梅若菜まりこの宿のとろゝ汁

うらやましうき世の北の山桜

叡慮にて賑はふ民の庭竈

大津絵の筆のはじめは何仏

俤や姨ひとり泣月の友

御命講や油のような酒五升

折々に伊吹をみては冬ごもり

顔に似ぬほつ句も出よはつ桜

桟やいのちをからむつたかづら

笠嶋はいづこさ月のぬかり道

語られぬ湯殿にぬらす袂かな

鐘つかぬ里は何をか春の暮

鎌倉を生て出けむ初鰹

傘に押わけみたる柳かな

唐崎の松は花より朧にて

刈りかけし田づらのつるや里の秋

かれ朶に烏のとまりけり秋の暮

川上とこの川下や月の友

元日は田毎の日こそこひしけれ

観音のいらかみやりつ花の雲

象潟や雨に西施がねぶの花

けふばかり人も年よれ初時雨

清滝や波にちり込青松葉

霧しくれ富士を見ぬ日そおもしろき

草いろいろおのおの花の手柄かな

艸の葉を落るより飛螢哉

葛の葉のおもて見せけり今朝の霜

草臥て宿かる比や藤の花

雲折々人をやすむる月見哉

雲霧の暫時百景をつくしけり

雲の峯幾つ崩て月の山

鞍つぼに小坊主乗るや大根ひき

木がくれて茶摘も聞やほとゝぎす

木枯に岩吹きとがる杉間かな

此秋は何で年よる雲に鳥

このあたり目に見ゆるものは皆涼し

此梅に牛も初音と啼つべし

此松の実ばへせし代や神の秋

此道や行人なしに秋の暮

木のもとに汁も膾も桜かな

西行の庵もあらん花の庭

西行の草鞋もかゝれ松の露

咲乱す桃の中より初桜

さゞれ蟹足はひのぼる清水哉

さまざまのこと思ひ出す櫻哉

さみだれは滝降りうづむみかさ哉

五月雨をあつめて早し最上川

早苗とる手もとや昔しのぶ摺

しくるゝや田のあらかふの黒む程

閑さや岩にしみ入蝉の声

四方より花吹入てにほの波

しほらしき名や小松吹萩すゝき

白菊の目にたてゝみる塵もなし

白露もこぼさぬ萩のうねり哉

城あとや古井の清水先ツ問む

涼しさや直に野松の枝の形

涼しさやほの三か月の羽黒山

するがぢやはなたちばなも茶のにほひ

其まゝに月もたのまじいぶき山

蕎麦はまだ花でもてなす山路かな

田一枚植て立去る柳かな

たはみては雪まつ竹のけしきかな

旅に病で夢は枯野をかけ廻る

旅人と我名よばれん初しぐれ

ちゝはゝのしきりにこひし雉の声

蝶の飛ばかり野中の日かげ哉

月いつく鐘ハ沈める海の底

月影や四門四宗もただ一つ

月清し遊行のもてる砂の上

月はやし梢は雨を持ながら

寺に寝てまこと顔なる月見哉

としとしや櫻をこやす花のちり

手をうてば木魂に明る夏の月

ともかくもならでや雪のかれ尾花

猶見たし花に明行神の顔

永き日も囀たらぬひばり哉

夏来てもたゞひとつ葉の一葉哉

夏草や兵どもが夢の跡

菜畠に花見顔なるすゝめ哉

何の木の花とはしらず匂哉

庭掃て出はや寺に散柳

ぬれて行人もお(を)かしや雨の萩

ねはん会や皺手合る数珠の音

蚤虱馬の尿する枕もと

野を横に馬牽むけよほとゝぎす

八九間空で雨降る柳かな

這出よ飼屋が下のひきの聲

初さくら折しも今日はよい日なり

初しぐれ猿も小蓑をほしげ也

花ざかり山は日ごろのあさぼらけ

花咲て七日鶴見る麓哉

花に遊ふ虻なくらひそ友すゝめ

花の陰謡に似たる旅ねかな

花の雲鐘は上野か浅草か

蛤のふたみにわかれ行秋ぞ

原中や物にもつかす鳴雲雀

春たちてまだ九日の野山哉

春なれや名もなき山の薄霞

春の夜は桜に明てしまひけり

春の夜や籠人ゆかし堂の隅

春もやや気色ととのふ月と梅

一里はみな花守の子孫かや

一つぬいで後に負ぬ衣がへ

一家に遊女もねたり萩と月

人も見ぬ春や鏡のうらの梅

ひばりなく中の拍子や雉子の声

雲雀より上にやすろ(ら)ふ峠かな

ひらひらとあぐる扇や雲の峯

風流の初やおくの田植うた

文月や六日も常の夜には似ず

冬籠りまたよりそはん此はしら

古池や蛙とびこむ水の音

蓬莱に聞ばや伊勢の初便

ほととぎす声や横たふ水の上

ほとゝぎす消行方や嶋一ツ

郭公まねくか麦のむら尾花

ほろほろと山吹ちるか滝の音

升買て分別かはる月見かな

先たのむ椎の木も有夏木立

松風の落葉か水の音涼し

松風や軒をめぐつて秋暮ぬ

松杉をほめてや風のかをる音

まゆはきを俤にして紅粉の花

三井寺の門たゝかばやけふの月

道のべの木槿は馬にくはれけり

身にしみて大根からし秋の風

蓑虫の音を聞にこよくさのいほ

都出でゝ神も旅寝の日数哉

むかしきけちゝぶ殿さへすまふとり

むざんやな甲の下のきりぎりす

結ぶよりはや歯にひゞく泉かな

名月に麓の霧や田のくもり

名月の花かと見えて棉畠

名月や池をめくりてよもすから

名月や門に指くる潮頭

名月や座に美しき顔もなし

名月や北国日和定なき

めにかゝるくもやしばしの渡り鳥

目にかゝる時やことさら五月富士

物いへば唇寒し穐の風

百歳の気色を庭の落葉哉

やがて死ぬけしきは見えず蝉の声

薬欄にいづれの花をくさ枕

やすやすと出でていざよふ月の雲

やまざとはまんざい遅し梅花

山路来て何やらゆかしすみれ草

山中や菊はたおらぬ湯の匂

闇の夜や巣をまどはしてなく鵆

雪散るや穂屋の薄の刈り残し

行駒の麦に慰むやどり哉

行春にわかの浦にて追付たり

行春や鳥啼魚の目は泪

行春を近江の人とおしみける

よくみれば薺花さく垣ねかな

世にさかる花にも念仏申けり

世の人の見付ぬ花や軒の栗

世を旅に代掻く小田の行きもどり

両の手に桃と桜や草の餅

わせの香や分入右は有磯海

   存 疑

蝶鳥のしらぬ花あり秋のそら

花の陰硯にかはるまる瓦

   誤 伝

もろもろの心柳にまかすへし

  支考の句

牛阿る聲に鴫たつゆふべかな


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