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有井浮風

『朱白集』(浮風編)



 宝暦12年(1762年)4月、有井浮風 が 四天王寺 に芭蕉と 野坡 の墓を建立した記念集。青陽菴杏雨序。

「浅生翁之碣」   「芭蕉翁之墓」


二翁教誡の吟

   勿謂人短
   勿説己長

物いへは唇寒し秋の風
   芭蕉翁

   天欠為常
   人足不知

百生りに思ふ形なし後の月
   浅生翁

二翁の石碑をならへて、四天王寺の傍、椎寺の後に築き、其名を松葉塚、又二つ塚とも唱ふ。

此編集を朱白集と題する事は、先師、古翁の意を得て、門人に教るに、朱をあかきといふは常也。朱を白きといふは変也。朱をあかきといふうちより白みも青みも顕はるゝこそ俳神也と、申されし。しかれは二翁の意、朱白の間を出されは、此道に遊ふ人、此の意を忘るましきために号とする也。

松葉とは散ての名なり二つ塚
 浮風

 湧出る岸に向ふ閼伽汲
 浅生翁孫
 野玉

静かさも藁の仮葺雨まちて
 文下



   石碑手向

月花の目當や石に若みとり
 文下

 人の出多き比をかけろふ
 江棧

うかるらん山鳥の聲町に来て
 浮風



屋根に来て鴻もはやすや薺粥
   洛陽
 山只

明ほのゝ中へ杖引桜かな
   大津
  文素

花に来て花による間もつはめ哉
 可風

火縄には伽羅もたかれす山さくら
   伊勢
 麦浪

をもしろい夢見る皃や涅槃像
   東武
  鳥酔

物置ぬ肩に一枚花見かな
 左明

朧夜や油汲かと水車
   上総
 吐月

三弦も接穂時なり梅の花
  蓼太

黒うなる雪や見かねてんめの花
  凉袋

竹きりのへらして行や秋の風
   大津
  雲裡坊

行秋や松をはなれて風の音
   伊勢
  二日坊

初雪や萍(うきくさ)ほしき水のうへ
   越中
  麻父

雪の日や煙に動く家ひとつ
      烏明



朝霜や鐘なき里の捨子鉢
 六合

町筋は水打かくるしくれ哉
  風律

富はこそ薦を着て居れ冬牡丹
 ゝ



白濱や松はみとりに春の雪
 杏扉

沖へ行聲気遣はし郭公
 杏雨

   粟津の庵に腰をかけて

雪見るや茶碗片手に一つ松
 杏雨

   文月朔日の曙、青陽庵を出るとて

手を振や秋より先に草の原
 浮風

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