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----「下道韓国への旅」----

メニュー:

 (1) 前菜
 (2) Kopchangchongor -内臓の味噌煮-
 (3) Purkogi -プルコギ-
 (4) Murkimchi -水キムチ-
 (5) ポン菓子
 (6) Nengmyen -冷麺-
 (7) デザート
 (8) 最後に...

 (9) 当店ご案内


〜Murkimchi -水キムチ-〜 (6/15)
23.湖発見!! さっぱり何処だか分からない。どうしたらいいのだろう。  遭難者の心得を1つ。「捜索隊が来るまで、なるべく現場を離れないこと」  ...先ほどから2時間ず〜っと走り尽くめ。どこがどこやら状態が続いている。  色んな街を過ぎ、また延々と人気の無い道を駆け抜けた。  韓国では、町中へ入る道路にカマボコ状の膨らみが設けられている。Bump と呼ばれる、米国など  でも採用されている、走行速度を落とす為のものだ。住民の安全を目的とする。しかし同時に、  警察や軍隊の詰め所、いつでも閉じられる簡単バリケードを時折目にするだけに、Bump からは  侵入者への妨害を想像してしまう。  そんななか、下校中の小学生達の群れに出会った時のことである。  「お!なんなありゃ〜」  「おぉ!オープンカーじゃ、オープンカー」  「ほんまじゃぁ」  「すげすげぇ〜」 ... (以上筆者推定訳,日本語広島弁によった)  警察官も苦笑した、子供達からの口笛の嵐がっ!!  ヒュ〜ヒュ〜ヒュ〜!!   新店鋪の工事に忙しそうなオヤっさん。道ばたで一点を見つめつづけて座る老人。  買い物に向かうおばちゃん達。  畑の多い田舎道をパタパタトラクター。  いったい、ここはどこ?  もう1つの問題は残燃料である。果たして釜山まで帰られるのか。フェリーが出るまでに戻れるのか。  ただひたすら、それを知りたかった。
 と、左手に湖発見!!! これで現在位置が分かる〜〜〜かも!?  喜び勇み、写真に地図にと慌ただしくなるも...が〜ん...この湖の名前分からん。  どーすんな。やはり現在位置の分からぬ旅が続く。
24.現在位置発覚!! 「どこだか分かりましぇ〜ん」も、はや3時間。いつしか国道30号線は終わり、同じく3号線を  南へと快走している。道幅も十分で、きちんと2車線で引かれている道を走るのは、このうえない  快適なドライビングをもたらし、信号はおろか交差点すら滅多に無いここは極楽のよう。しかも、  それが延々と続いている。  まぁ、それがため道に迷っているのに3時間も走ってしまう結果に繋がっているのだが。  お!前方に町だ。中規模の街が見えてきた。  道路標識もある! 地名が分かるゾ!!  地図は...あった〜! Kechang ! P-71だ〜!! うおおおお〜!.......しかし、Kechang ってどこ?  予想だにしない場所。Pusan を彼方に、予想よりも西に流されている。  ともかくも、これで現在地が分かった事が限り無く喜ばしい。ここから東へ10キロ位いのところに  温泉マークが記されている。宿のマークだ。今夜はそこに決めたっ!!  期待に胸が膨らませ、アクセルを踏み込んだ。  もう道に迷う事はないと、その時は思っていたから。そう、その時は。
25.油断 国道3号線に別れを告げ、進路を東に1084号線を突き進む。  イェイイェイ、イェイ〜!!  快適なドライビングに酔いしれる。  緩やかなワインディング、適度な高低さの道は尽きることを知らない。  「あっと数キロでぇ〜♪ ふふふん。お休み〜!!」  それにしても長い数キロだな、ふふん。長い...ん、ん、を〜〜〜〜!!  メーターを見ると先の地点から18kmも進んでいる。  行・き・過・ぎ・た・ぁ〜ぁ〜ぁ〜!!! が、快適ロードを身体は勝手に先へ先へと進ませてゆく。ああ、通り過ぎているのに。
 すっかり夕暮れちゃって...
 どうなってしまうの、ワシ?
26.宿 ま、街だ。人がいる。下校中の高校生もいる。突然のオープンカーにびっくりしているオッチャンに  オバチャン。左官屋や小さな商店らしきものが、100mに満たない道路沿いに並んでいた。  とても小さな街。  通り過ぎようかとも思ったが、既に陽が暮れ始めている。できれば夜間走行は控えたい。  それにこの先に街がある保証もない。とにかく駄目もとで宿を探してみよう。  南へ向かったがすぐに街がずれに出てしまった。ならば北だ。  お! 温泉マーク(韓国では宿泊施設マークも兼ねる)のついた3階建てが。あれかっ!!  ズザザッ。車を止めた。
 今夜の宿である
居室
風呂・トイレ

27.こみゅにけー・・・しょん? 写真にもあるが良い旅館である。これで一泊25000ウォン(2500円)。安い。  サービスに良く冷えた飲料水も差し出してくれた。  店の番をしているのは若い、高校をこないだ出たばかりの青年だ。  と、書けばすんなりと宿泊できたかのように映るだろう。  さて現実は...。  見なれぬ車が止まった事で、その青年は建物を飛び出してきた。驚いている。  「あの〜、すみません。今夜泊まれますか?」  「あ、う、??」  そうだろうなぁ。日本語が通じるとは思えないからなぁ。私は手持ちの「旅の会話集」から、宿泊の  ページを開き示す。  「あ〜!」  Yesの回答にホッと一息の私を横に、彼は次の質問を読み答え始めた。  No...No...あ〜、これはうちには無いな、この辺には...  待ってくれ、待って。そこは違う、最初の「今夜泊まれますか」だけでいいんだ〜。そんな次の例文  「2人部屋はありますか」とか「314号室の山田です。シャワーが出ません」とか読まなくていい  んだ〜。  余計な例文を見るうちに混乱する我々のコミュニケーション。  こうなっては、もうアレしかない! Let's ボッディ〜ランゲッジ!!  「ここで(建物を指差す)、泊まれますか?(両手をちょっと傾けた顔の右側で合わせ...)」  ひたすら寝る真似をくり返しつつ。「ここで、泊まれますか? ここで、泊まれますか?」  「はい、はい、はい、はい」(日本語訳)  やった!通じた!  こうして私は部屋へと案内される事と相成った。  我々の格闘は終わらない。「旅の会話集」を間においてのやり取り。  「明日の出発は何時だ?」  「う〜ん、何?」  「・・・う〜ん」  「(会話集を指差し)明日...何時...え〜っと、え〜っと」  「(会話集を取り戻し)出発?」  「そうそうそう、何時?」  「え〜っと。時刻のページを発見!9時」  「よっしゃ...(ふぅ〜、2人汗だく)」  「これはサービスのヌルだ」  「何?」  「ヌル」  「ヌル...水?」  「そうヌル!」  「宿代は25000ウォンだ」  「何?」  「...う〜。マニィ」  「宿代かな?...書いてみて」  「"25000W"」  「OッK〜!!(支払う)」  「布団はこれだけで大丈夫か?」  「(なんとなく意味が分かる気がする)大丈夫!」  「晩飯は食べるか?(匙で口元へやる動作)」  「ペコペコ!(腹を押さえて苦笑い)」  「なら...私...一声かける。下の食堂で食べられる」  「OK!!」  限られた会話集だけが頼り。言いたい言葉を探して、まずは相手にぶつけ様子をみる。  些細な質問でも、自分の意図が伝わる嬉しさ。相手の青年も汗だくになって努力してくれる。  その悪戦苦闘振りを横から、ハハハハ、笑う少女がいる。恐らくは彼の妹であろう。  見知らぬ異国の人間と奮闘する兄貴が面白くてならないのだ。気付けば3人で笑っていた。  私にも妹がいる。掛け替えのない、大事な妹。  なんだか自然に寛いでいる自分がそこにはいた。  時間があったので周辺をぶらついてみた。  どうやらここは「海山寺(ヘイサンジ)」という有名なお寺のある、景勝地カカ山国立公園の入り口  にあたる街らしい。ただ今は観光シーズンではないらしく、客もまばらだ。  部屋に戻ってくると「サービスだ」と言って、青年がコカコーラを差し出してくれた。いい奴だ!
28.「わし帰れるの?」 それにしても、この宿は落ち着く。  すんげぇ田舎だ。田圃の蛙や虫の音だけが聞えている。夏の夜の原風景。ベッドの上に大の字に、  窓から風に時を忘れてしまう。何もかもが意識できなくなる。  私は先の青年が「メシ出来たよ」と呼びに来るのをひたすら待つ。ぐぅ〜。腹は正直。ひたすら忍の  一字で待つ。  「TVでも見てみるか。お!ニュースの時間か...何ぃ!!」  ドバババ、ドババババッ!! シュドドドドン、ドドゥ!! "北"(北朝鮮民主主義人民共和国)との発砲映像が、繰り返し繰り返し、どのチャンネルを捻っても  写し出されている。何を説明しているのか分からないアナウンサー。ななな、何が?  一体なにが起こっているんだぁ!?  ブラウン管は続けて船から下りる人々のインタビューを流している。どうやらフェリー乗客のインタ  ビューらしい。  フェリー...乗客...発砲...ワシの帰国は......あれれ?  なんか、北の船をこう追い詰めてとか説明し始めたぞ。どこの海だろう...まさか対馬海峡では...。そう  思えば思う程、段々と...。  ワシは帰れるのか〜! 日本へ〜っ!!
29.深い眠り それにしても腹が減った。  いっかな呼びに来ない。どうなってるんだろう。  私の脳裏に先の会話がフラッシュバックされる。  「私(青年は自分を指差し)...あなた(私を指差す)...食事...呼ぶ...下で食べる(食べる動作)」  まさか...あれは...こういう意味では?  「私(青年は自分を指差し)...あなた(私を指差す)...食事...呼んで...下で食べる(食べる動作)」  がぁぁ〜ん。きっとそうだ。  いま何時だろう。なんかもう食堂終わってる気がする...あああ〜!!  TVから流れる歌声を聴きながら、いつしか私は混沌とした眠りの世界へと引きずりこまれていた。  ベッドの上で大の字になって。  [役に立たない韓国情報]   TVをつけっぱなしで眠った私は、夜中に高音の電子音で目覚めた。   ピー。真夜中に見た韓国のTV試験電波は、全く日本のものと同じだった。   どの観光ガイドにも載っていない試験電波情報。これで君も韓国通へまた一歩近付いた!  現在までの走行距離420km。  釜山までの推定距離150km。(地図上にて算出)  50Lの燃料タンクを燃費12km/Lで計算すると...走行化膿距離600km。  余裕30km。  はたして日本へ、釜山まで辿り着けるのであろうか。道に迷ったらお仕舞いである。  [予告] ... もちろん迷わぬわけがない。
 ( つづく

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