マレー半島の北部に位置するタイ国にロー・フォー・トー(RSR)あり。ロー・フォー・トーとはタイ国鉄を意味する。そのタイ国鉄のバンコク都内のマッカサン工場にて、1両の蒸気機関車が長い眠りから覚めたことを伝えたい。この蒸気機関車は『Soongnern(スゥーンニーン)』という愛称でタイ国鉄職員には親しまれている。正式名称はタイ語では『ロットチャク・アイ・ナーム・レーク・ジェッ』だ。 日本語に訳すと『ロット・チャク』とはエンジンを意味し、『アイ・ナーム』は蒸気を表し、『レーク・ジェッ』は7番ということだ。ここではあえて蒸気機関車7番スゥーンニーンと呼ぶことにする。このドイツ製の小さな蒸気機関車は今をさかのぼる1930年代にタイ国へ陸揚げされた(同型はRSR3〜9番)。蒸気機関車7番のスゥーンニーンはその小さな体に大きな期待をかけられて、バンコク〜ナコーン・ラーチャシーマー線の様な幹線を王室鉄道局を代表して走る機関車になったわけではなかった。
▲スゥーンニーン(0-6-0)
スゥーンニーンはスゥーンニーン線(ナコーン・ラチャシーマー周辺のスゥーンニーン村から伸びる小さな支線)というナロー・レイルに起用された。現在ではスゥーンニーン線は跡すらも残されていないのだが、実在していた。 スゥーンニーン以外にもRSR31〜33番という日本の協三工業製の小型機関車が同線を走行していた話もある。31番(6070)は鉄道博物館、32番(6071)はハッジャイ駅の正面、33番(6072)はチェンマイ駅の広場に静態保存されている。スゥーンニーンの軌幅はRSR標準の1Mに改装されたで、在来線の走行には支障はない。スゥーンニーンのはMRCやPRCのクラウス製のモデルと似ている。
▲スゥーンニーンが牽引する専用客車
さて、この蒸気機関車7番スゥーンニーンは長い静態保存から叩き起こされて動態保存にまで格上げされたのには理由があった。彼はまたふたたびローカル線をまかされる案が浮上したからだ。その案によれば新線である。それはタイ国鉄広報部の話では、バンコクの北100KMにあるアユッタヤー〜バンサイに建設された文化センターへつながる観光客向けの路線だった。 スゥーンニーン専用の真っ赤な客車もマッカサン駅で製造され、保管されている。ところでこの型の原型(ナロー使用)はチュムポーン駅正面に展示されている9番を見学するべし。この9番はこの0−6−0の最終機でもある。保存状態は素晴らしいものではないが、マッカサン工場の様に敷居が高くない分、近くによれる楽しみがある。 撮影協力/タイ国鉄 |