このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

 

 

PART1

 

● 1・2日目 【06.05.17〜18】(チューリッヒ⇒ヴァッセン⇒ブリーク)

 

 今回の旅は、スイスからスタート。名古屋からの飛行機がなんと欠航となり、予定より1日と2時間遅れでスイス・チューリッヒ・クローテン空港に到着。初日は大都市であるチューリッヒを避けて、近郊のヴィンタートゥールという街に宿を取った。


 明けて5月18日、当初の予定3日目にして、やっと本格的に旅が始まる。今日の予定はスイスでというより、ヨーロッパでもっとも有名といっても過言ではない鉄道写真の撮影地「ヴァッセン」という小さな村へ向う。(いきなりマニアックな…)ホテルをチェックアウトし、大きな荷物をひきずって最寄り駅のオバーヴィンタートゥール駅から近郊線Sバーンに乗り、チューリッヒ中央駅へ向かった。8:15、オバーヴィンタートゥール発、ちょうど通勤時間帯。機関車1両に二階建て客車3両で構成された4両編成のSバーンを3編成くっつけた堂々の12両編成。途中から中学生位の子供たちがたくさん乗ってきてピーチクパーチク。賑やかになった列車はチューリッヒに近づくと地下に入り、チューリッヒ中央駅の地下ホームに到着。明日の夜にこのチューリッヒ中央駅から夜行列車に乗るため、1泊分の荷物を小さいリュックに詰めて、大きな旅行カバンをコインロッカーへ預ける。8スイスフラン。日本円で約720円。大きいコンロッカーとはいえ、やはりスイスの物価は高い。


 身軽になったところでホームに上がる。そこはまさに私にとって夢の世界!まさに「鼻血ブー!!」だ!(名古屋〜金山間で113系と名鉄パノラマカーが並走しているのを見た時もそうでしたが…)。かわいらしいスイス国鉄の赤い機関車をはじめ、ドイツから来たICEやイタリアからの国際列車が顔をそろえて私を迎えてくれる。約30分の乗換時間でカメラを持って右往左往。あっという間に発車時間が迫りホームへ。ここチューリッヒから乗る列車はイタリア、ベネチア行きのEC(ユーロシティー=国際列車)。15両ほどの長い編成を赤い電気機関車が重連で引っ張る。客車はイタリア国鉄のもので、車体の側面に愛称名「CISALPINO(シザルピーノ)」のロゴが描かれていた。


 9:09、チューリッヒ中央駅を発車。すぐに街を抜け、車窓は右手にツーク湖を映し出す。褐色屋根のかわいらしい街並みと湖、後方には雪をかぶった山々。これぞスイスの風景というべきものが、都会からわずか10分走っただけで展開される。線路は単線、湖の湖岸をなぞるように敷かれているので、大きな車体を左右にゆすりながらゆっくりと進んでいく。1等車用のユーレイルパスを持っているので、1等車の広い座席にゆったり座って汽車旅を満喫したいところだが、この列車には約40分しか乗らない。


 9:48、定刻に乗換駅のアルト・ゴルダウに到着、ここでIR(インターレギオ:急行)に乗換。外は雨模様。この先の写真撮影が心配になる。IRは途中こまめに停車し、約30分の乗車でエアストフェルド着。ここでバスに乗り換えて目的地のヴァッセンに向かう。駅前にバスが停まっていたので、運転手にヴァッセンに行くか聞いたところ、このバスではないので、ここで待っているように言われてその場で待つ。間もなく次のバスが来たので乗車。運転手に「ヴァッセンまで。」と告げ、その場で運賃を払うと、印刷された切符を渡された。さて、ここからバスの旅。この先は峠道ということなので、一番前の席に陣取る。エアストフェルドを発車。しばらくは街の中を走っていたが、だんだんと道が険しくなってきた。途中、工事で1車線通行になっているところもあったが、路面はフラットで走りやすそうな峠道。思わず、自分の車を持ってきて走らせたくなる。


 11時ごろ、目的地のヴァッセンに到着。雨は上がっていた。街、というより村はひっそり静まり帰っており、営業しているのはバス停近くの小さなスーパーだけ。早速「お立ち台」(注:マニア用語で有名撮影地)に移動する。このヴァッセン付近の線路について少し触れておくと、チューリッヒから南に延びてきた線路は、先程バスに乗り換えたエアストフェルドからこのヴァッセンを経由し、ゴッタルドトンネルに至りイタリアへと抜ける。この線路がヴァッセンの村を囲むように、大きなS字のループ線が敷かれている。高低差はなんと600メートル。この路線はスイスだけではなく、ヨーロッパにとっての重要な幹線の一つである。このスケールの大きな峠越えをカメラに収める為に、世界中から鉄道マニアが集まってくるのだ。


 バス停から歩くこと15分ほどでお立ち台に到着。本日はこの世界的に有名な場所に世界中から私ひとりだけ。さて、どんな列車が来るかなと、のんびりカメラを構えると、いきなり背後から赤い電気機関車が4重連で登場!1発KO。ああ、スイスに来てよかった。ハイジに会えなくてもいい…。その後も私にとってハイジよりかわいい機関車たちが次から次にやって来る。ここを通過する列車はほとんどが機関車列車。旅客列車なら機関車が1両、貨物なら重連。長い列車になると後補機を付けて来る。私のお気に入りの機関車はRe4/4Ⅱ型と、Re6/6型と呼ばれるタイプ。Re4/4Ⅱが動軸4つ、Re6/6が6つ。ほぼ同じ顔をしていて、正面から見ると正方形の窓が2枚、その下にスイスの十字エンブレム、3灯の前照灯がバランスよく配置されている。塗装は赤と緑があるが、赤が多いように感じる。今日遭遇するのも赤色ばかりだ。顔立ちにも惚れているが、スタイルも抜群。ドイツの堅牢さ、フランスの独創性、イタリアの洗練されたデザインの良いところばかり取ったような機関車だ。しかし、そのかわいらしいボディーに反してパワーは強力。日本の貨物用電気機関車EF210と比較して、Re4/4Ⅱは1.5倍、Re6/6で2倍以上の出力を誇る。

 

ヴァッセンに到着。

ヴァッセンのお立ち台にて、説明は要らない…。


 お立ち台は小高い丘の牧草地。好きに移動してアングルを決めるが、足元に注意しないと牛の落し物に足を突っ込んでしまうので注意が必要。長い編成をくねらせて眼下の大カーブを通過した列車は、2分ほどすると180度方向を変え、左上の線路を遠ざかるように登り続け、さらに3分後、またくるっと回って遥か頭上の谷に架かる石橋を渡る。同じ列車が下段、中段、上段といった具合に進行方向を変えて三度も姿を見せるので、ループ線を登っている様子が良くわかる。


 14時半ごろ、シュトゥットガルト行きのシザルピーノを撮ってこの場を引き上げる。来た道を引き返すと、眼下に大カーブを望むことが出来るところがある。ちょうどそのあたりの道路脇に、SBBのヴァッセン駅があり、小さな貨物ホームがある。現在、客扱いはしていないが、信号扱いはしているようで、事務所には人の気配がある。貨物ホームで初老の男性がカメラを構えていた。時計を見ると15時過ぎ、今度はミラノ行きのシザルピーノの通過時刻が迫ってきた。期待を裏切らず、シザルピーノの白いボディーが眼下を駆け抜ける。ループを登って今度はすぐ横のヴァッセン駅を通過するのでホームへ急ぐ。初老の男性に「もうすぐシザルピーノが来るよ!」と声を掛けて一緒に小さなホームで待ち構える。ループ線では左右に振っている車体だが、この駅構内ではちょっとだけ一直線になり、編成美を見せる。ジウジアーロがデザインしたイタリアの車両だが、この白ベースに青と緑のラインの車体は、スイスの風景の方が良く似合う。

 

アウトカーヴ狙いもイケる。ヴァッセン駅を通過するシザルピーノ


 駅での撮影を終えて、バス停に戻ってくる頃、雨が本降りになってきた。仕方なく折り畳み傘を広げてヴァッセンの集落を歩くが、少し億劫になる。それでもかわいらしい教会を眺めたり、ループを登るアングルを探したりして時間を潰した。集落に人の気配はあまり無く、ホテルやレストランは17:00オープンの札を下げて休憩中。ひとまわりしてバス停に戻ると、ゲシェネン行きのバスがすぐに来たので、これに乗車してヴァッセンに別れを告げる。繰り返すが、ここにはいずれまた来ることになるだろう。

 

 

PART2へ

EURO2006TOP  PART1  PART2   PART3   PART4   PART5   PART6   PART7

EURO EXPRESS    トップページ

 

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください