このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 

 

 

 

PART7 

 

● 8日目 【06.05.24】(カールスルーエ⇒シャフハウゼン)


 宿の窓は、カールスルーエ駅前の朝をはっきりとしたコントラストで映し出している。気持ちのいい朝だ。朝食を摂って駅に向かう。特に乗る列車は決めていなかったが、シャフハウゼンに向かうにはスイスとの国境、バーセルへ行って乗換えが必要となる。ちょうどスイスのクールへ向かうEC(国際特急)があったので、これに乗車。機関車の引く客車列車だ。居心地の良いコンパートメントを占領する。


 列車はバーデンバーデン、フライブルクと、シュバルツバルトの西の端、フランスの国境に近い地域を走り、バーセル・バードに到着。ここでICを降り、シャフハウゼン行きの近郊列車に乗換える。バーセル・バードはドイツ鉄道(DB)の駅だが、スイスの領土内にある。ホームの自販機を使おうとしたら、ユーロではなくスイスフラン用だったのでその事に気が付いた。バーセル・バードを発車。このシャフハウゼンへの路線は、ドイツとスイスの国境線近くを走るが、国境線が複雑に入り組んでいるので、どちらの領土を走っているのかよくわからない。路線はドイツ鉄道の管理だが、絵に描いたような完璧な風景を見ると、スイスだな、と思う。前の車両でジーンズにリュックの男が、何かを見せながら客に尋ね回っている。私のところにもやってきた。抜き打ち検札だった。通常は制服を着た車掌が車内を回っているが、ローカル線の一部区間ではワンマン運転で、時々、このような抜き打ちの検札が行われる。見せていたのは身分証明書。リュックの中には車掌さんの七つ道具が入っていた。


 列車はあと10分ほどでシャフハウゼンに到着するはずだが、途中の駅をなかなか発車しない。そうしているうちに、他の乗客と一緒に列車を降ろされてしまった。ホームでは検札をしていたリュックの車掌が状況を説明しているが、とにかくこの列車は先へは行かないということは分かった。乗ってきた列車はしばらくすると折り返してしまい、30名ほどの乗客はこの無人駅のホームで日なたぼっこするハメになってしまった。


 結局、1時間半ほどして後続列車がやってきた。10分ほどでシャフハウゼンに到着。長い道のりだった。さて、シャフハウゼンから程近い保存鉄道でも行こうかと思っていたが、この遅延で時間的に厳しくなったので予定変更。ラインの滝を観光することにする。近郊電車Sバーンの2駅目で下車。ライン川沿いの遊歩道を歩いていくと、だんだんと水の落ちる地響きのような音が近づいてきた。遊歩道の終点が、ラインの滝の展望台。目の前に現れたラインの滝は、150メートル幅のラインの流れが、一気に23メートル急降下し、雲海のような白い水しぶきを上げる、勇壮で幻想的な光景だった。展望台から下流の方へ階段を降りると、途中、滝に突き出るように設置された展望台があり、水しぶきを浴びながらその迫力を体験できる。家族連れやカップルがキャアキャア言いながら写真を撮りあっている。こういう感動は共有できる人が一緒にいた方がいいだろうな。と思う。

 

ラインの滝を行く列車

 

 ラインの滝を後にし、シャフハウゼンの街へ戻る。今度はシャフハウゼンの街を歩く。シャフハウゼンは、ラインの滝に阻まれてしまう水路での交通の荷揚げの場所として、中世から栄えた街である。ドイツに近いためか街の様子は堅牢な建物が多い。その典型のような建物が、街のシンボルであるムノート要塞。ここからシャフハウゼンの街が一望できるということで来たが、今日はパーティーのため中に入ることができず残念。傾いた陽の中、旧市街を通って駅に戻った。


 シャフハウゼンから列車で、20分ほど。再びドイツに入ってすぐのジンゲンの駅で降りる。街をひと回りするもあまり宿が無い。と思ったら、線路沿いすぐのところに発見。値段もお手ごろ。ここに決める。なぜ、ドイツで宿を探したのか? それはスイスより物価が安いから。

 

 

● 9日目 【06.05.25】(ジンゲン⇒ダルムシュタット⇒フランクフルト)

 

 最終日の朝を迎えた。夕方までにフランクフルトに着けばよい。今日はフランクフルト近くのダルムシュタットの街で鉄道祭りが開催されるので、これを観てから帰国したい。ジンゲン発、8時過ぎのシザルピーノ(国際特急)でまずはシュトゥットガルトへ。イタリアはミラノ発のこの列車。白に青のカラーリングが爽やかで、カッコイイ。発車してすぐ、空いた車内で夢見心地だった。


 …が、長い停車中、突然、スーツ姿のビジネスマン風の乗客に起こされる。「…んん。シュトゥットガルト?」と寝ぼけ眼で車内を見ると誰もいない。あぁ、昨日に引き続きまたトラブル発生らしい。山間の小さな駅に降ろされた乗客たち。呆れ顔で向かいのホームに来たRE(快速列車)に乗り込む。またも大幅に時間のロスだ。


 シュトゥットガルトからICEに乗り換えてフランクフルトへ。そして更に乗り換えダルムシュタットに向かう。ダルムシュタット中央駅では、蒸気機関車が引く鉄道祭りの臨時列車がスタンバイ。これに乗り込む。会場までの約15分。蒸気機関車の旅を楽しんで到着。会場は多くの家族連れとカメラを抱えたマニア(私も含む)でごった返していた。息を上げる蒸気機関車が5〜6両も顔をそろえて壮観。その中でも、今回の旅で会いたかった機関車が「23−042」号。2年前ここを訪れたとき、まだバラバラだった機関車が、ボランティアの手によって蘇った。その様子はインターネットで配信されていて、その進捗を見守っていた。そして、元気な姿で私の前に現れた。

 「どうだい! 客車だって引けるんだぜ!」


 と言わんばかりに、帰りはこの機関車の牽引する列車だった。ダルムシュタット中央駅で名残惜しく引き揚げる様子を見ていた時、気笛一声。私には、「また来いよ!」と聴こえた。

 

会場で見つけた古い労災防止?ポスター復活した23−042号!!

 

 

 

 ※ 最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

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