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3日目(96.5.27)

 

・地下鉄でトラブル!?

 3日目は、イギリスから、ベルギーを経由して、一気にドイツのケルンに向かう。ホテルでバイキング式の朝食を食べてから、地下鉄の駅に向かった。タクシーでもよかったのだが、やはりちょっとした移動にも鉄道を使ってみたいのが、鉄道ファン心理(?)である。駅に向かう途中、ロンドン名物の赤い二階建てバスが横切ったので、ちょっと浮気しそうになる。

 ホテルの最寄駅、「HOLBORN」駅から、1回乗換て、ウォータールーに向かった。が、チャリングクロス駅で、突然列車が止められた。行先はもっと先になってたはずなのに・・・。他の乗客は「何事か?」という感じで列車を降りていき、ホームの係員に何か聞いて、出口へ向かっていく。私も「ウォータールーへ行きたい。」と聞いてみたが、「列車はこの先、進まないので、BR(国鉄)で行け。」と言うのは聞き取れたが、どうして停まったのかは分からなかった。ただ、警察が出てきたりと慌しかったので、単なるトラブルではなさそうだった。

 

記念に買った地下鉄の切符。(子供用)

 

・「モニターを見ろ!」

 仕方なく、チャリングクロス駅で国鉄に乗換えることにした。チャリングクロスはウォータールーの隣の駅だ。チャリングクロス駅も、ロンドンのターミナル駅の一つなので、「隣の駅まで。」と言う感じで列車に乗る雰囲気ではない。自動券売機は、目的の駅がアルファベット順に並んでいるので、迷うことなく買えた。近郊線っぽい列車が停まっているホームへ行くと、発車時刻などが表示されているモニターがあり、それにはウォータールーと出ていた。念のため、ホームにいた係員に「ウォータールーに停まるか?」と聞いたら、呆れ顔で、「モニターを見ろ。」と返ってきた。日本なら、「態度が悪い。」とか、「不親切だ。」とか、くだらない苦情で新聞に載るか、会社のお客さま担当が頭を下げにくるところだが、こちらでは、「ちゃんと表示されてるのになぜ聞く必要がある?」と言うような感じである。それが当たり前。係員がいちいち案内するのを避けるために表示されているのに、聞くほうが間違っている。それに、通過駅が大きく表示されているわけはない。日本の当たり前を実行すると、時に変に思われることだってある。

 ちょっと勉強になったところで、その近郊電車に乗車。わりと新しい車両だった。発車してまもなく、ウォータールーの石造りの駅が見えてきたが、列車は、その駅舎をだいぶ行きすぎて停まった。「ホントにウォータールー駅か?」とも思える場所だったが、長い連絡通路が石造りの駅舎までつながっていた。ホテルを出て、40分も掛かってしまったが、やっとのことでユーロスターの始発駅、ウォータールーに着いた。

 

・ウォータールー駅にて。

 ウォータールーも大きな駅だ。ロンドンに大きな駅がいくつもあるのは、私鉄時代の名残である。昔は、国鉄と言う一つの枠は無く、各私鉄がロンドンにターミナル駅を持っていて、それらは互いに競い合っていたのだ。ロンドンに散らばる大きな駅は、会社の象徴だったのである。それはさておき、ここウォータールー駅は、ドーバー海峡をくぐりぬけて、大陸へと渡る、「ユーロスター」の始発駅なのだ。ユーロスターの乗り場は、在来線のそれとは別に仕切られた空間になっていて、まるで空港のコンコースみたいになっている。コンコースからユーロスターの姿は見えない。ユーロスターの乗り場の入口には、手荷物検査をするところがあって、ここが改札も兼ねていた。ちなみにイギリスの鉄道は、日本と同様、改札口があるが、合理化のせいか、ユーロスター以外で改札に係員がいるところは無かった。

 改札に入る前に、一つ疑問があった。このとき持っていたユーロスターの切符は、「PASS HOLDER TICKET」。「PASS HOLDER TICKET」とは、大陸の「ユーロパス」や「ユーレイルパス」を持っている人に、特別割引された切符である。しかし、このときまだ、持っていた「ユーロパス」は、有効になっていなかったのだ。「ユーロパス」を有効にするには、窓口で、刻印、有効期間とパスポートナンバーの記入などを係員にやってもらう必要があった。しかし、大陸専用のパスが、この島国イギリスでも手続きができるかどうか、疑問に思い、ガイドブックを引っ掻き回した。が、結局、インフォメーションカウンターのお姉さんに聞くことにした。お姉さんに聞く前に、出来の悪い頭の中で、6年間学習した「ENGLISH」を必死に思い出していたのは、言うまでも無い。ユーロスターの切符と、ユーロパスを見せて、身振り手振りで聞いてみた。すると、改札を指差して、「あそこで刻印してますよ。」と笑顔で答えが返ってきて一安心。「サンキュー。」と言いつつ、改札に向かった。

 

これがユーロパス。ブリュッセル南駅に到着したユーロスター

 

・飛行機に乗る感覚。

 改札で、ユーロスターの切符と、ユーロパスを見せると、あっさり刻印をしてくれて、一件落着。パスポートナンバーと、有効期日が書いてなかったので、筆跡を真似て、自分で書いてやった。ホントはいけないのかなあ?荷物にはユーロスター専用のタグを付ける。このタグは、日本で切符を受け取った時に付いていた。しかし、乗車するまでは、飛行機のように荷物を預けず、自分で持っていく。手荷物検査を抜けると、そこは出発ロビーになっていて、発車前のひとときを快適に過ごせると言った感じだ。ユーロスターに乗車する場合、発車の20分前に改札(チェックイン)を済ませないと、乗車できない。切符にもそう書いてある。

 出発ロビーは、カフェあり、免税店ありの、まさに空港の出発ロビーと一緒だ。ユーロスターグッズの店もあり、もちろん買いまくった。発車15分前になると、ホームへのエスカレーターの通行が許可される。自分の車両に行く前に、先頭車の写真を撮ろうとしたが、立入禁止になっていて撮れなかった。反対側へ行こうとしたが、時間が無くなったので、車両に飛び乗った。すると、男性の係員に切符の提示を求められたので、切符を見せると、指定された号車に案内された。飛行機に乗った時、座席を案内される感覚だ。1等車の一人掛けの座席に座り、発車を待った。ゆったりしていて気分は良いが、一つ残念だったのは、進行方向と反対向きだったことだ。ヨーロッパで、日本のような座席の向きが変わる「転換シート」はほとんど無い。運が悪いと、このように逆向きの座席があたってしまう。12:14、ベルギーのブリュッセルに向けて、ユーロスター9132列車は発車した。

 

・ユーロスター本領発揮!!

 ユーロスターは、しばらく、昨日のようなイギリス郊外を走り、約1時間でドーヴァーへ。日本の青函トンネルもそうだが、港町の雰囲気は、車窓から感じ取ることが出来なかった。そしていよいよトンネルへ突入!!車窓は当然真っ暗に。でも気になって外を見てしまうのはなぜだろう・・・?ユーロスターは、時速160キロでトンネルを走行する。トンネル内は単線で、青函トンネルのように広々とはしていない。あっという間にトンネルを抜け、フランスのカレーに着いた。

 カレーからはフランス国内の高速新線を走るため、ユーロスターはどんどんスピードを上げた。イギリス国内は時速140キロ程度しか出せなかったのが、一気に時速300キロの世界だ!!フランスの広い平野をものすごい速さで突き抜ける。時速300キロでも、車内は静かで、あまり揺れない。機関車方式と連接台車を採っていることと、直線的な線形が、快適な乗り心地につながっているのだろう。東海道新幹線の300系「のぞみ」の方がよく揺れた。まあ、ユーロスターも車外の騒音はすごくうるさいと聞いたことがあるので、どっちもどっちだと思うが。

 しばらくして、ユーロスターはまたスピードを落とし、ベルギー国内の在来線を走る。PBA線(パリ〜ブリュッセル〜アムステルダムの頭文字)の一部で、国際列車の行き来が多い路線である。現在はPBA高速新線が開通して、ユーロスターはパリ〜ブリュッセル間を走る新しいTGV「タリス」と、同じ路線を走っている。ベルギー国内に入ると、ゆっくり走っているせいか、車窓はのどかな雰囲気だ。その雰囲気の中へ、最新の超高速列車で乗りつけるのは、なんだか違和感がある。そして列車はブリュッセルのターミナル、ブリュッセル南駅に到着。

  

ユーロスターの客室乗務員ベルギーの近郊型電車

 

・ブリュッセルは乗換のみ

 女性の客室乗務員に見送られ、ブリュッセル南駅に降り立った。ゆっくり写真でも撮ろうかと思ったが、他の乗客はみんな出口と思われる方向へ向かっていったので、荷物をまとめてその方向に向かった。ホームの先端には、入国審査があり、私もパスポートを見せると、汽車のマークの入ったスタンプが押された。列車で入国したよい記念になった。入国審査を抜けたところで、やっとユーロスターの先頭部を見ることが出来た。ただしガラス越しにだが・・・。

 せっかくブリュッセルに来たのだから、豪華な市庁舎や、本家本元の小便小僧なんかも見てみたかったが、ケルンに向かう列車の発車まで小1時間しかなかったので、駅前の様子だけ見てあきらめた。なんだかもったいないが、ユーロパスも、このベルギーを通るためだけに、ベネルクス3カ国を追加国にしてある。もったいないと言えば、このブリュッセルでの乗換時間の間、サンドイッチとかジュースを買おうとしたのだが、持っていたのが日本円と、使いきる寸前のイギリスポンドだったので、1万円をベルギーフランに両替したが、結局、百数円のジュースを買っただけで、他は全然使わなかった。効率の悪い両替をしてしまった。

 などとやってるうちに、小1時間はあっという間に過ぎ、18:08発、EC35列車、「メムリンク」に乗車した。ECとは「ユーロシティー」の略で、ヨーロッパの国際特急の総称である。ベルギー国鉄の電気機関車を先頭にした客車列車で、まさに往年の国際列車といった感じだ。残念ながら、この列車も最近廃止されてTGV(タリス)化されたという。客車はベルギー国鉄のもので、外観はグレーを基本としているが、派手な色使い。1等コンパートメントに座ったが、室内は渋く、落ち着いた印象だった。

 

・気がつけばドイツ

 国際特急といえども、停車駅は結構あった。途中駅で老夫婦が同じコンパートメントに入ってきたところで、車内改札があり、ユーロパスを見せて難なく終わった。次の停車駅で、一緒になった老夫婦は、他のコンパートメントが空いたのを見て行ってしまった。外は曇り空、ユーロスターに乗ってたときは少し晴れていたのだが・・・。

 列車はまた駅に停まる。ボーッとホームを眺めていた。今度は結構長い停車時間があった。駅の雰囲気がさっきまでと変わった。よく見ると、ドイツ国鉄の駅である。駅のどこかしこに「DB」と書かれた、ドイツ国鉄のエンブレムがあるのですぐ分かった。知らないうちに国境を越え、ドイツに入っていたのである。今まで、国境越えと言えば、入国審査が儀式のようにあったのだが、車内でも改札があっただけで、入国審査は無かった。列車は何事も無かったかのように(と言うより何も無かった。)、ドイツ国内を走り出した。

 

ケルンに到着したEC35列車「メムリンク」

 

・ケルンに到着。

 EC35列車「メムリンク」は、20:42、定刻どおりケルン中央駅に到着した。もうすぐ夜の9時だというのに、まだ明るかった。相変わらず、天気は曇り。今日はほとんど列車に乗りづめだった。ロンドンを昼に出て、この時間に列車でドイツに着ける。トーマスクックの時刻表には、乗って来たユーロスターと、「メムリンク」は連絡列車として記載されていた。飛行機では行けないような細かい街を廻るのであれば、列車で移動することは十分実用的なことだと思う。なんたって列車には、車窓を眺める楽しみがある。

 ケルンに着いてまずやったのは両替。無駄に両替したベルギーの分も、ここでドイツマルクに両替した。日本円とコインを含めたベルギーフラン両方一緒に出しても、問題無く両替できた。コインはなかなか両替してくれないらしいが、ガイドブックに「ドイツの駅の両替は親切。」と書いてあったので、試しにやってみたのだった。駅で少し写真を撮ってから、タクシーでホテルに向かうことにした。ホテルのクーポンに書いてある住所を運転手さんに見せればOK。今日のお宿は、駅からちょっと離れたホテル、「フランドリッシャー・ホフ」。ロンドンのホテルよりだいぶ小さいが、中はきれいで、フロントのマダムも愛想がいい。部屋もすっきりとした、ドイツらしい(?)ホテルだった。

 さあ、明日はドイツ鉄道三昧だ。

 

 

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