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6日目(96.5.30)

・チューリッヒの街歩き。

 今日もいい天気、朝食を済ませて早速トラムに乗り込む。行先は中央駅。午前中はチューリッヒを観光して、12時の列車でルツッエルンに向かう。とりあえず中央駅のコインロッカーに荷物を預ける。

 昨日も歩いたバンホフ通りをチューリッヒ湖に向かって歩き出す。このあたりは有名なスイスの銀行街。並木が続くバンホフ通りは、道の中央にスイス国旗が掛けてあり、その下をトラムがゆっくりと走る。絵に描いたようなヨーロッパの街並みだ。通りの突当りは湖上船の桟橋になっていて、湖が一望できる。遠くを湖上船が行き交っていた。ここまで駅から20分くらい。リマト川に架かるケー橋を渡って、川沿いの道をまた中央駅の方向に戻る。このあたりは、ヨットハーバーになっていて、たくさんのヨットやボートが停泊していた。まっすぐ歩くと、ヴァッサー教会に突当り、その横にはチューリッヒのシンボル、大聖堂。大聖堂を背にして、川の対岸を見ると、屋根の先のとがった聖母聖堂の時計塔が朝の光を浴びていた。ミュンスター橋を渡り、入り組んだ路地を歩く。この辺はどこを切り取っても絵になる。2時間ほど歩いて昼前に駅に戻った。

 

チューリッヒのトラム聖母聖堂の時計塔橋の上から銀行街を望む

 

・チューリッヒからルツッエルンへ。

 チューリッヒ中央駅には、さまざまな列車が集まる。これを撮らない手はない。地上部分は行き止まり式のホームになっている。スイスの列車のデザインは、どことなくやさしい。ドイツやフランスの列車とは、違った雰囲気がある。私が特に気に入ったのは、電気機関車、Re4/4Ⅱ型とRe6/6型。ともに、赤と緑の2色が多く活躍している。4/4型などの数字は、動軸数/全軸数を表す。駅で1時間ほど撮っていると、IC、ECはもちろん、2階建てのSバーン、屋根まで窓のあるパノラマ1等車、新鋭の電気機関車Re4/4 460型、ドイツから乗り入れているICEなど、次から次にやってくる。さすが大ターミナル。

 ルツッエルン行きは、1時間に1本、決まった時刻に出る列車がある。私が乗ったのは12:01発の列車。毎時○○:01分に出ている。列車は緑と白のツートンカラーの客車列車。もちろん1等、2等の区別はあるが、すべてコンパートメントではなく、オーブンの客車だった。シートは向かい合わせのボックス型に配置されている。ルツッエルンまでは約1時間だ。列車は定刻に発車し、チューリッヒを後にする。しばらくすると、牧歌的なスイスの景色の中を走っていた。湖の湖畔に、小さなかわいい家が並び、牧場にはカウベルをつけた牛が寝ている。ハイジが出てきそうな風景だ。

 

・ルツッエルン交通博物館。

 列車は時刻表よりも5分遅れで、ルツッエルン中央駅に到着。ヨーロッパでは5分の遅れは、遅れと言わないと思うが・・・。ルツッエルン中央駅も行き止まり式の大きな駅で、お土産屋をはじめとして、構内にはたくさんの売店があった。まずは、街の地図をもらいに、駅の外にある案内所に向かった。案内所はバックパッカーでごった返していて、ホテルの予約に列が出来ていた。こんなに混んでいる案内所は初めてだ。幸い無料の地図はフリーで置いてあったので、1つもらって出た。絵で描かれたかわいい地図だった。ルツッエルンに来た一番の理由は、交通博物館へ行くこと。これは今回の旅行のテーマでもある。イギリスのヨーク、ドイツのニュルンブルクと来て、3つ目がこのルツッエルン。今回の旅行では最後の博物館だ。

 もらった地図を頼りに博物館に向かう。博物館は駅の前に広がる、通称ルツッエルン湖の湖畔にある。このルツッエルン湖は、正式にはフィーアヴァルトシュテッテ湖というらしいが、ルツッエルン湖で通るみたいだ。湖の向こうには、雪をかぶった山々が見える。雲ひとつない最高の天気。湖畔を歩くのもとても気持ちいい。が、意外に博物館までは遠かった。途中、湖畔の遊歩道から外れて、バスに乗るため車道に出た。バス停の路線図を見ると、博物館まであと3区間のところだった。自動券売機で切符を買って待っていると、すぐにバスは来た。なんとバスは2両連結のトロリーバス。しかもボルボ製。日本ではあまりボルボの大型車はなじみないが、バスやトラックも造っている。でも、電気式のトロリーバスまで造っているとは知らなかった。

 Verkehrshaus(フェルケールハウス)で下車。目の前が交通博物館だが、入り口までは少し歩いた。この博物館は、鉄道だけにとどまらず、自動車、船舶、航空機、さらに宇宙開発と、さまざまな展示物があり、規模も大きい。改装された直後で、中はとても綺麗だった。入場券を買って、パンフレットを取る。なんと日本語のパンフレットがあった。早速、鉄道コーナーへと向かった。外からの光が差し込む広い館内には、スイスの1号機関車「リマト」号をはじめ、アプト式の蒸気機関車や、古典的なトラム、ゴッタルド越えに活躍した電気機関車など、60両あまりが展示されていた。その中には、たくさんの勾配区間を持つこの鉄道の歴史が伝わってくる車両が多い。C5/6型蒸気機関車の下を歩けるコーナーがあり、覗いてみると左右の車輪の間に、2本の連結棒が動輪につながっていた。この機関車は4シリンダーになっていたのだ。他には「クロコダイル」の愛称を持つ大型電気機関車、Be6/8型。アプト式の蒸気機関車も展示されていた。ルツッエルンは、ゴッタルドに近いこともあり、ゴッタルドをテーマにした模型コーナーや、ルツッエルン〜ゴッタルド間を走る列車の様子が見られるコーナーもあった。

 自動車コーナーでは、大衆車、シトロエン2CV、ワーゲンのビートルから、ルノーのF1まで、航空機では、古典的な飛行機から、野外にはスイスエアーの旅客機が2機展示されている程、この博物館は、非常に規模が大きく楽しめた。カフェテリアで食事をした後、お土産にHOゲージの食堂車の鉄道模型を買って、博物館を後にした。

 

・湖上船で街に戻る。

 ユーロパスの守備範囲は広い。スイスでの湖上船にはすべて乗船できるのだ。せっかくだから使ってみたいと思い、交通博物館の近くにある、Lidoという桟橋に向かった。桟橋の近くの湖畔は、芝生の広がる公園になっていて、多くの人々が日光浴をしていた。桟橋でしばらく待っていると、大きな船がやってきた。船は満員状態。船員たちが手際よく錨を降ろし、乗降が始まった。案外、下船客も多かった。改札のようなものがまったく無かったので戸惑ったが、とりあえず船内に入る。席はすべて埋まってたので、デッキに出た。湖の向こうに見えるルツッエルンの街はまた格別。10分程で中央駅の桟橋に着いた。下船するときユーロパスを一応船員に見せたが、他の客は何も見せていなかったようだった。

 今度は、ブルバキ・パノラマ館と氷河公園に向かう事にした。トロリーバスで移動。まずはブルバキ・パノラマ館へ。12角形の古い建物は、今年で100歳を迎えたらしく、横断幕が掲げられていた。入口で入場券を買うとき、国籍を問われた(ような気がした)ので、とりあえず「ジャパニーズ」と答えた。何のことだろうと思いつつ、暗く急な階段を上った。パノラマ館の中は、十字軍遠征の絵が360°にわたって描かれていた。木の床に、木の柵。中は静かで暗く、ちょっと不気味だった。しばらくして、スピーカの電源が入ったかと思うと、日本語で絵の説明が始まった。さっきの問いはこのことだったのかと気が付いた。交通博物館のパンフレットといい、さすが観光国スイスだ。

 今度は氷河公園へ、パノラマ館からは歩いていける距離。氷河公園の手前にはライオンの記念碑があり、周りは静かな公園になっていた。入場券を買って中に入る。この氷河公園は、氷河期の痕跡が保存されていて、資料館の中には、ゾウの化石など多くの化石が展示されていた。氷河期の痕跡とは、大きな岩が何らかの作用によって渦状の穴を掘り、穴の底に、ボールのようになった岩が残っている。なんとも不思議な形だ。そんな穴がいくつもあった。他にも、公園の中には、パノラマ館と同じく100年前に建てられた鏡の迷宮というのがあり、中は書いて字のごとく鏡の迷路になっている。ここを出るのには時間が掛かった。

 

「クロコダイル」ことBe6/8型路地に日が差し込むカペル橋と塔

 

・シュプロイヤー橋とカペル橋。

 今度は歩いてオールドシティーを歩くことにした。オールドシティーは狭い路地が入り組んでいて、路地を抜けると広場があり、広場はいくつかの路地とつながっている。陽が傾いてきたので、路地に入るとちょっと薄暗いが雰囲気があった。広場を囲む建物の壁には、きれいなフレスコ画が描かれている。広場で売っていたホワイトウインナーを食べながら、さらに路地を進むと、旧市庁舎の脇の大きな時計塔に出た。低い光線に照らされてまるで輝いているかのようだった。

 ルツッエルンには有名な木造橋が2つある。ルツッエルン観光の最後に、この2つの橋を渡ってみることにした。まずは街の奥にあるシュプロイヤー橋。一見して貫禄があると言うよりはボロい。橋桁は上下に曲がっていた。このあたりは川の流れも急なのによく耐えているなと思い、橋脚を見てみると、石造りのしっかりしたものだった。橋には数十枚の宗教画が掲げられていて、途中には礼拝堂があった。もう1つはカペル橋。こちらはルツッエルンのシンボルとしてあまりにも有名。建造が1333年というから驚きだ。橋の途中にある8角形の塔が印象的だ。しかし1993年に火災にあい、橋の途中が新しく架け替えられていた。そこだけ新しい木に張り替えられているのでよく分かる。こちらの橋にもたくさんの宗教画が掲げられていた。

 ルツッエルンは本当に絵になる街で、思わず何枚もシャッターを切った。名残惜しいが列車でチューリッヒへ戻った。

 

・チューリッヒでの待ち時間。

 今日の宿は列車の中。夜行列車でパリへと向かう。チューリッヒの発車は23:00。それまで2時間ほど時間があったので、列車の写真を撮って時間を潰した。登場したばかりの「シティーナイトライン」を撮っていると、パイプをくわえたおじさんが近づいてきて話し掛けてきた。おじさんの背後にはRe4/4Ⅱ型電気機関車。身振り手振りで「オレはこの機関車のシェフだ!!」と自慢げだ。どうやらこの機関車の運転士のようだ。すると一緒にいた若いTシャツ姿の運転士が、なんと反対側のホームに停まっていた同じRe4/4Ⅱ型の運転台に招き入れてくれた。これには大感激。運転台に座っているところを写真に撮ってもらった。これで私はRe4/4Ⅱ型の大ファンになった。

 パリ行きの発車時間が近づいたので、ホームに向かった。指定された車両は111号車、とはいっても十数両編成の列車。編成両数と号車番号は関係ないようだ。先頭車寄りについていた111号車は。SNCF(フランス国鉄)の車両で、クシェットと呼ばれる簡易寝台車だ。車内はコンパートメントになっていて、1つのコンパートメントに3段式のベットが両側についていた。指定された寝台は、3段の1番上。ちょっとしたマットがあるだけのベットだった。料金が3,000円弱なので仕方ないが・・・。発車してまもなく、検札があり、パスポートを車掌さんに預ける。出入国手続きは寝ている間に行ってくれる。チューリッヒ発23:00、468列車。目が覚めたらそこは・・・。

 

  7日目へGO!!

 

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