このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

5日目(96.5.29)

・ニュルンベルクを歩く

 居心地の良い部屋だったのか、ぐっすり眠れた。朝食はホテルのレストランで、ここもバイキング方式。しっかり朝食をとれるのがうれしい。時間のせいもあるかもしれないが、客は私を含めて3人ぐらいだった。愛想のいいマダムと別れて、駅に向かう。駅から歩いてすぐのところにタクシー乗り場があったので、そこから駅に向かう。「ハウプト・バーン・ホフ」と言うだけでいい。ベンツのタクシーだったが、内装は質素だった。駅に向かったのは、荷物を預けて街歩きをするためで、すぐに列車に乗るわけではない。今日は、昼過ぎの列車に乗ってシュトゥットガルトへ向かい、乗換えてスイスのチューリッヒへ向かう。

 昨日と同じように荷物をコインロッカーに預け、身軽な格好でオールドシティーへ向かう、駅前の車通りを横断して、ケーニヒ門からオールドシディーに入った。ケーニヒ門のすぐ横は職人広場。そのままメインストリート、ケーニヒ通りまっすぐ行くと、セント・ローレンツ教会がある。ガイドブックには「受胎告知のレリーフがすばらしい」とあった。中に入ってみると、街の人たちが熱心に祈りを捧げていた。教会を出てさらにまっすぐ行く。ムゼウム橋を渡って中央広場へ。ここでは昨日同様、市場が広げられていた。ここは屋外スーパーマーケット。色とりどりの野菜や果物。にわとりまで売られていた。この広場の端の方に静かに建っている金色の塔は「美しの泉」。泉といっても水が流れている様子はなかったのだが・・・。セント・セバルドゥス教会と市庁舎の間を抜け、坂道に差し掛かると、街の一番奥に聳え立つ、カイザーブルクが姿を現した。ここまで、駅から約20分くらいだった。

 

セント・ローレンツ教会を見上げるカイザーブルクの入場券カイザーブルクの塔

 

・カイザーブルク

 カイザーブルクはニュルンべルクのシンボルで、中世の軍事用の城。木に囲まれた石畳の細い坂道を登っていくと、城の門が現れる。そこをくぐると、遠くからも見えていた城の塔が目の前に迫っていた。石畳も、塔も、城の壁も茶褐色で、絢爛豪華な貴族たちの城とはまた違った雰囲気だ。早速、街のシンボルである2本の塔のうち、円筒形の塔に登った。ここからはオールドシティーはもちろん、はるか地平線まで見渡すことが出来る。今日は本当にいい天気だ。次は城の内部へ。城内の見学はツアーになっていて、1グループ20人程度が一緒になって見学する。ツアーが始まる前に、言語は何かと全員に聞いていたが、日本人は私一人だけ。とりあえずなのか、英語のガイドブックを渡された。城内は、木組みの骨組みとレンガで重厚な造りになっていて、外の明るさとは対照的に薄暗い。展示品の武器が雰囲気を出している。窓は少なく、監視用と、銃口を出すためのものがまばらにあるくらいだった。その小さな窓から、街を囲む城壁と、デューラーの家が見えた。中庭に面している側には、テラスがあり、花が飾ってあった。小高い丘の上にあり、城壁が何重かにあり、門もいくつかある。このあたりは、軍事的要素が強い日本の城と構造がよく似ている。城内を一回りして、最後に井戸のある建物に入った。井戸にはろうそくが吊るされていて、このろうそくを井戸の中に下ろして、中の深さがどれくらいあるかを見せてくれた。ツアーはこれで終了。ドイツ語の説明も、英語のガイドブックもまったく分からなかったが、ガイドさんの指をさしている方向を見れば、意図していることは分かるのでよかった。

 城を後にして、駅に戻る。城から見下ろしたデューラーの家の前を通り、路地を抜けて駅の方向に向かった。オールドシティーの街並みはどこを切り取っても絵になる。このニュルンベルクは、第2次大戦の時に壊滅的に破壊されたが、市民の努力で中世の街並みが復活したという。そうとは思えないほどに、昔から手付かずで残っている街並みに見えてしまう。駅の近くまで来ると、歩行者専用の商店街があった。この商店街は、もともと城壁があったところらしく、ところどころに監視用の塔がモニュメントとして残っていた。商店街を歩いていると、突然、鉄道用の腕木信号機が現れた。どうやらこれは鉄道模型屋の看板らしい。ここニュルンベルクは、オモチャの国際見本市が毎年開催されている。鉄道模型の新製品も、この見本市で発表されていて、最近では日本の企業も積極的に参加している。メルクリンに並ぶドイツのトップメーカー、フライッシュマン社はここニュルンベルクが拠点だ。駅構内のショーケースには、フライッシュマンの模型が展示してある。ヨーロッパでは鉄道模型はとてもメジャーなホビーで、一家に一台が当たり前なのだ。うらやましい環境である。さらに商店街を歩き、ヘンケルスの看板が出ている店に入った。ここで、小さなナイフを2つ、お土産に買った。60DM。店員さんに「ろくじゅう。」と言われる。日本人はよく寄るみたいだ。発車時間が近づいたので、駅に戻った。

 

・ローカル列車でシュトゥットガルトへ。

 ニュルンベルクからシュトゥットガルトまでは、約2時間。REという種別の列車に乗る。日本で言えば快速列車。割と大きな都市を結ぶので、IC級の列車が来ると思ったら、ホームで待っていたのは3両編成で、ドアが中央よりに2つあるステンレスの近郊型客車。しかもディーゼル機関車の牽引。車内はガラガラ。おまけに駅舎から一番離れたホームからの発車だった。しかし、こんな列車でも、ちゃんと1等コンパートメントがある。なぜか日本人の姿もある。RE3100列車。12:41定刻発車。走り始めて10分もしないうちに、車窓は牧歌的な風景になっていた。快速だけに、小さな駅にも停まる。小さな泉の前のベンチに老夫婦が腰掛けてなにやら話をしている。それだけで絵になる風景だ。車窓はのんびりと、草原、畑、森を繰り返す。1つの駅での停車時間は長いところもあるので、時々降りて写真を撮る余裕もあった。途中の駅を発車したところで、なんと小型の蒸気機関車が息を上げている。気が付くのが遅かったので写真に撮ることが出来なかったが、廃車体を含めて3〜4両が並んでいた。ここは保存鉄道? ちょっと驚いた。シュトゥットガルトに近づくと、工業地帯が姿を見せる。シュトゥットガルトは車の街。あのメルセデス・ベンツの本社がここにある。鉄道の街と車の街を結ぶ路線は、とても静かなローカル線だった。

 

カイザーブルクから見下ろした街並み。

商店街の中の腕木信号機RE3100、シュトゥットガルト行き。

 

 

・スイスへ!!

 シュトゥットガルトではあまり時間がなかった。30分弱で次の列車に乗り換えなければならない。次の列車はDツークという、国際急行列車だ。D389列車、シュトゥットガルト発、ミラノ行き、ドイツ、スイス、イタリアの3ヶ国を走る列車だ。この列車でチューリッヒへ向かう。駅の売店で、焼きたてのパンとジュースを買って、列車に乗り込む。客車はスイス国鉄の5両編成で、コンパートメントではなく、日本でもおなじみのオープン形式の車両だった。機関車はDBの110型電気機関車。ICカラーだ。15:42、シュトゥットガルトを発車。またもや、草原、畑、森と、のどかな風景の中を走る。列車は約2時間で国境駅シンゲンに到着。時刻表を見ると、シンゲンでは12分停車となっていた。外へ出ようとしたら、ここでは入換作業が行われるらしく、操車係の人に「動くよ」のようなことを言われた。すると列車は何度か前進、後進を繰り返し、別のホームに据付けらえた。シンゲンから進行方向が変わった。シンゲンを出ると、入国審査官がやってきた。パスポートを見せようとすると、「いいよ、いいよ。」というジェスチャーをしてきた。その後、なにやら英語で話し掛けられたが、どうも税関審査らしく、「ノーシング。」と答えたら、「サンキュー。」と言って行ってしまった。EU加盟国同士の国境通過は簡単だ・・・。そういえばドイツに入ったときは入国審査官自体乗ってこなかった。

 スイスに入るといきなり、そこは名勝ラインの滝。そのすぐ上を列車が通る。これにはびっくり。遠くにはうっすらとアルプスの山々が見えて、スイスに入ったことを実感した。そのとき、カーブでふと列車の先頭を見ると、赤いスイスの電気機関車が牽っぱっていて、編成も長くなっていた。シンゲンの入換で、機関車の付け替えと同時に、客車も連結していたらしい。列車は18:47にチューリッヒ到着。日は傾いていたが、まだまだ明るい。列車はまだこの先、進行方向を変え、ゴッタルドトンネルてミラノへと向かう。さっきまで最後尾だった車両に、ゴッタルド線の主力機、スイス国鉄の電気機関車、緑色のRe6/6型が連結された。

 

・チューリッヒの夜。

 両替を済ませて、タクシー乗り場へ。ホテルに向かうことにする。乗ったタクシーはどうもイタリア系の人らしい。手荷物もかなり乱暴に扱われて、ラジオから流れるカンツォーネを大声で歌う。約5分で今日のお宿、ホテル「セナター」に到着。するとなぜか、タクシーの運転手も一緒に入ってくる。客の私に便乗してトイレを借りにきたらしい。なんて人だ・・・。

 ホテルに荷物を置いて、食事に出ることにした。中央駅からはあまり離れていないようだったので、今度はトラムに乗って駅まで出ることにした。自動券売機で切符を買おうとすると、どう見ても初乗りが3.40SF(スイスフラン)。日本円で約300円。物価は高いと聞いていたが・・・。明日は夜行列車で旅立つので、バンホフ通りのちょっと高そうなレストランでディナー。生演奏つき。味は・・・それなりだったが、いい気分になったので良しとする。値段も・・・まぁそれなりに高かった。しかし、夜のこのあたりはとても綺麗。道の真ん中をトラムが走り抜けているが、風景に溶け込んでいる。そのトラムに乗ってホテルに戻った。

 

6日目へGO!

 

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