このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

栗田樗堂

『萍窓集』


文化9年(1812年)、尾張朱樹叟 士朗 序。静嘯蘆鹿門・葛蘆才馬跋。

 士朗の序は寛政6年(1794年)の 『樗堂俳句集』 序文の日付を削ったもの。

尋常一様窗前月。纔有梅花敏不同。樗堂氏が家の集、世の梅月を同じうするものとおなじからず。芒の糸の長くさびわたり、萩の露のよく栞して常に古人とこゝろを同じうす。

尾張朱樹叟 士 朗 序

   春 部

出たければ出る世が出來て梅の花

初櫻花の世の中よかりけり

おほかたは散そめて花の盛かな

   夏 部

花青葉人の三月四月かな

    庚申菴 の小池をめぐる

かきつばた花にかくれん老の影

何所までかこゝろを誘ふ杜宇

行基菩薩は一生杖にも柱にも此木を用ひ給ひしとて、翁ある山中にて 世の人の見付ぬ花 と聞へしも

西の木の栗に寐るかよかんこ鳥

   一巻書を開き、一盃聖を樂む

水うつや掃や植たる竹のもと

凉しさのひとりにあまる菴かな

   秋 部

しら波のうへまで露の夜明哉

道野邊や小萩にうつる稲の虫

   冬 部

   大津に赴く

走井や行あはせたる初しぐれ

霜の夜の鼠來て踏枕かな

義仲寺 の祐昌身まかりけると聞て、千影のもとへ申つかはす。

外ならぬ終り處や枯尾華

烟してのどけき冬よ山の家

浮雲やまた降雪の少しづゝ

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