このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

横田柳几

柳几の句


痩て居て力つよさよ梅の花


雲に消麦にきえたる雲雀哉

いま行う行うとて巨燵かな


今往ふ往ふとて火燵かな


杏や日本も酒に植ならい


   紫野にて

靜さよ菫の中の寺幾つ


野の駒は裸に成てはつしぐれ


雪の日や川は一筋黒きもの


昼中はこらへ袋のかわづかな


三日月のかたいでこぼすしぐれ哉


水へ來す空にも置かす朧月


名月や松のよし野は只一夜


いなつまや捨子のあたり立さらす


名月や折形になる鳥の影


入相につかえておりる雲雀かな


夕暮をこらへこらへて初しくれ


不二の裾ふまえる人や若菜つみ


うくひすや初音の跡のしたり顔


出る事をしらぬ神馬や春の雨


ぬれ色に壁もして置け初時雨


艸花に坂東声のうづらかな


出る事もしらぬ神馬や春の雨


ゆく水を夜々もどす螢かな


川せみや居るほど居れば急にたつ


来て見ればたしかなものやふぢの花


老行もわすれて嬉し初桜


来て見ればたしかなものや藤の花


夜はきゝ今朝はながむる時雨哉


豆腐さへ持たぬ手台を氷室守

羽二重に立て恥さる紙衣哉


舵取のよけあふこゑやおほろ月


寒菊に屋根の奢はなかりけり


花守の問ず語りや夏木立


庭鳥の臼に眠るや春の雨


暁の筆を探るやほとゝきす


蓮の實やこゝを去ル事遠からず


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