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大島蓼太

『笘のやど』(蓼太・眠江編)


雪外舎眠江序。

 宝暦9年(1759年)、大島蓼太が門人眠江に誘われて求光・山奴と共に鹿島詣の旅に出た折の記念集。眠江は香取市(旧山田町)竹之内の人。山奴は香取郡大寺(現:匝瑳市)の住。

此秋雪中庵にあそへは俳士幾人か額を合て語あへるに予か帰路は中秋にむかふ折から浦々の月野山の色つくまて心にうかひ庵主に見せまほしくいさゝせ給へといふに師も鹿島香取の神拝は常々の願なからかれにこれにさえられ打過ぬるときこえけれは其座に日を定め船をうかへて稲こきちらす舎に伴ひ木枕にもてなすけふは殊に物もふてする日なれはとてともなふ人もありて二の島をぬかつきあるは明月に漂ひあるきし其夜のあらましを苫の宿と名付て隔ぬ友に見せはやと書集侍るのみ

雪外舎眠江

しもつふさ竹内なる眠江此秋予か草廬にあそふ折しも鹿島山の月見せはやと頻に催されてとみの艸まくら思たゝんとするに兼てかの御神をおかみ奉らはやと聞えけれは求光老僧をいさなふはた若き人々の見送りなともやと尋常のさまにうかれ出て柳橋に小舟を浮ふ

鯊釣にまきれて出たり杖と笠
   蓼太

五本松跡


五本松

いつれの秋にやはせをの翁 河上と此河下 と申されし松も只一本残て殊更になつかし

乗うちの船に吹なり松の秋
釈 求光

十人の月見の友や松ひとり
蓼太

常夜燈


    行徳 夜泊

低うなる時はうつゝか夜の雁
   眠江

闇を来た痩さへ見えて月に雁
   求光

息栖 法楽

磯にふたつの石瓶あり忍潮井と名つく満来る時はかくれなから清水を湛ふとあれは

をしほ井の和光や波と水の月
   蓼太

鹿島神宮楼門


    鹿島 社頭

けふ満る月や鳥井のみをつくし
   求光

君が代や兜の角は鹿に見る
   眠江

松高し注連に働く蔦かつら
   山奴

浪にわく日の本松に月のもと
   蓼太

香取神宮拝殿


香取 遙拝

十六日は波風あるれは神拝は帰路にとちきりて

ふしおかむ蘭の香取やこなたより
   蓼太



   下総

風落て木の葉の戻る千鳥哉
 大寺 山奴

かゝみほと顔出す窓や梅の花
 蕪里  玉斧

華散て誠の嵯峨に戻りけり
 竹内 眠江

   上総

掃よせて一輪の牡丹かな
吐月

   北越

早稲苅て波干うらの景色哉
 越中  麻父

十六夜や今あそこにて見える雁
 カゝ 素園

卯の華や下て消えたる鷺一
エチコ  桃路

   駿州

(きぬた)から足袋屋へ秋の行衛哉
乙児

   三州

初霜やいつれの橋を置はしめ
千代倉 和菊

春の夜を買尽したる牡丹哉
蝶羅

   尾州

梅はまた寒しと藪に初音哉
ナコヤ 木児

秋たつや昼寝も桐の枕より
也有

鍋ならは幾つ着るへき田植笠
以之

   勢州

涼しさや硯の中に砂の音
 山田 麦浪

出し入も錦の中や後の月
二日坊

   近江

遠浦に帆の見える夜の千鳥哉
 粟津  文素

けふはまた雲て見せるや初時雨
可風

   洛陽

目のまへの雪盗人や春の風
山只

ほとゝきす啼やすゝりの清濁
文下

咲てから月日は遅し菊畑
鳥酔

華の散音聞出すや朧月
秋瓜

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