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冬の北海道・最後の4線乗りつぶし

 1998年1月26日から30日まで、「ぐるり北海道フリーきっぷ」を片手に北海道に残った未踏破4線を乗りつぶす旅をした。北海道は私の大好きな場所で、すでにこの時まで10回以上旅をしており、その半分はクルマ・バイクの旅とはいえ、鉄道利用も相当なものがあった。しかし、いまだ4路線だけはまったく未踏破だったのである。それは、日高本線・石勝線新夕張〜夕張間、室蘭本線東室蘭〜室蘭間および留萌(るもい)本線であった。何回も旅していれば乗れそうなものだけど、クルマで旅したり、沿線に友人・知人がいなくて行かなかったというのが理由。ここ最近の北海道旅行の主目的は観光・グルメよりも友人等訪問ばかり。どういう縁か地元・山梨よりも北海道に友人等が多くなってしまったので。

あの人気列車「北斗星」で北海道へ!

 1月26日の午後、甲府から上京し、都内で少し用を済ませて上野駅へ。上野16:50発の札幌行き寝台特急「北斗星1号」でまずは苫小牧(とまこまい)へ。寝台列車など高いので鉄道マニアの私でも数年に1回しか乗らない。今回は往復とも寝台特急乗車可のぐるり北海道フリーきっぷを利用しているので、ありがたくB寝台で寝てゆく。このきっぷ、出発駅から北海道への往復(寝台特急か新幹線+在来線特急)と道内の特急指定席乗り放題という5日間有効のフリーきっぷで、東京都区内発着でなんと33500円!(1998年当時)ノーマル運賃・料金で東京と札幌を寝台特急で往復すると約4万3千円もかかるので、かなり激安。時間のない人は北海道へ(から)の片道ぶんを放棄して飛行機にしたって、道内の特急をある程度乗りまわせばじゅうぶんモトが取れる。

 この日の「北斗星」は最閑散期のせいかガラガラ。食堂車にシャワーカードを買いに行ったら、なんと客は鉄道ファンらしき男性がたったひとりでワインを飲んでいたのみ。人気列車にもこういう時もあるようだ。シャワーカードは係員が時間を指定して記入してくれ、300円也。寝台ももちろん下段。しかし翌朝起きたら上段のカーテンが閉まっていた。仙台あたりから乗ったらしい。

 1月27日、苫小牧7:57着。上野から15時間と7分とは長いように見えるが、熟睡できてすこぶる快適であった。8:21発の日高本線様似(さまに)行きへ。「本線」とはいっても実態はローカル線で名物の小型気動車キハ130である。次の駅の勇払まではなんと13km!軽快に無人地帯の雪の勇払原野を飛ばす。11分で走りきったのでなかなか快速。その後はふつうに4〜5キロごとに駅があり、沿線にもそこそこ人家がある。鵡川付近からは太平洋岸をトコトコゆく。寂しげな冬の小漁村が断続する。

映画ロケ地を訪問。しかし結果は予想外・・。

 静内・新冠といった競走馬の産地へ。厳冬なのでウマの姿はなし。そして浦河に11:06着。ここで下車。日高地方の中心地だが、駅は街外れにあって寂しい。特に観光地があるわけではないけど、私は映画ロケ地を訪ねるために下車したのである。たしか1995年頃公開の日本の映画「結婚物語」の一舞台となった場所。この映画はじつは3編で1作品となっており、超金持ちカップル・都会のコント的カップル・寂しい漁村の地味だけど「純愛」のカップルの3編が合計2時間余りで上映された。私が感動したのはもちろん最後の編。舞台のメインとなった、浦河町の古くてさびれた映画館「大黒座」(名取裕子演じる中年の女がここをひとりで守り、そこに男が来るというストーリー)を訪ねてみたとかねがね思っていた。駅から地元の人に道を聞きながら歩くこと10分。・・しかし、あらまっと!ロケ後に新築されたようで、ピッカピッカ。予想外でガッカリした。ただ「大黒座」という名称だけはしっかり残っており、実在が確認できてそれだけは良かった。映画のまま古くてさびれていたら、中に入って映画の1本でも見ていこうかと思ったけど、これでは風情がないのでそのまま立ち去った。昼食後、バスをつかまえて東町(ひがしちょう)駅へ。浦河の隣り駅。映画館はこれらのちょうど中間あたりにあるので、時間節約のうまい方法だ。

現在の大黒座

 東町13:28発で、約20分で日高本線の終点、様似へ。こんどは「大型」キハ40の2両。サマニとはいかにもアイヌ語の地名だが、どういう意味だろうか。駅前は襟裳岬(えりもみさき)方面へのバスが出るので交通の結節点であり、広くて商店も若干ある。しかしアイスバーン状態で歩くと危ないのでそそくさと駅に戻った。

 おり返し様似14:32発で一気に苫小牧まで戻った。さっきは乗らなかった東町—浦河間もこれで乗れたことになり、完全踏破には支障なし。静内付近から高校生が多数乗りこんで2両の車内は活気づいた。途中で日が落ちて、苫小牧17:50着。

 すぐに17:55発の特急「北斗13号」へ。加速後はずっと時速130キロの運転で、雪煙を上げてものすごく豪快な走り。まさに「弾丸列車」のようだ。特急に乗って「めちゃくちゃ速え〜!」を体感したのは久しぶり。71kmをたった40分で札幌へ。

 札幌で小休止し、また駿足特急「スーパーおおぞら11号」でこんどは釧路へ。北斗に負けぬ豪快な走りだが、単線なのと停車駅がわりあい多いのでずっとトップスピードとはならない。4時間揺られて22:57に釧路へ。しかし釧路滞在はわずか3分!上りホームへ急いで移動し、23:00発の夜行特急「おおぞら14号」の車内へ。このようなプランにしたのは、翌日、早朝の追分駅へ降りたいためである。追分で1時間くらい待つと石勝線夕張行きの始発に乗れる。これに乗るとその後のスケジュールがすこぶるいいのだ。

 1月28日、早朝4:51に追分着。もちろんまだ夜は明けない。張り詰めた冷気がただよう。おそらく氷点下10度以下。暖かい待合室で1時間弱ヒマをつぶし、追分5:47発夕張行きに乗車。新夕張までは「おおぞら」が走ってきた石勝線をトコトコゆく。いわばおり返しである。新夕張〜夕張間の石勝線(夕張支線)が未乗車。夕張といえば昔は石炭の町、今はメロンなどで有名。私は北海道へ10回以上来ているのに初めての訪問だ。私の興味がいかに偏っているか、わかるというものだ。

 新夕張からいよいよ夕張支線へ。無人駅ばかりだが、途中の清水沢駅だけはかつての石炭列車の基地の面影を残して比較的広い構内。今でも唯一の有人駅。鹿の谷駅付近からはちょっとした市街がつづき、終点夕張。新しくてきれいな教会風の駅だけど、街外れにあって中心市街地までは約2キロ。雪の中を歩くのは面倒なのでこのまま折り返す。数年前までは市街地近くまで伸びていたけど、都市計画とかで短縮されてしまったのだ。鉄道はそんなに邪魔なのだろうか?

 そういえば、夕張といえば映画「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」の舞台だ。いまでも映画のクライマックスになった、黄色いハンカチがいっぱい飾られたボロ家が「想い出ひろば」としてそのまま残っているという。しかし駅からは遠く、レンタカーかタクシーでないと行けないので今回はパス。

 折り返しは夕張7:07発で、通勤通学時間帯にかかるので、高校生などで少し混む。といってもこのあたりでは座席がだいたい埋まる程度のこと。追分まで乗ってここから室蘭本線岩見沢へ。室蘭本線はなんとキハ130の2両。日高本線と共通運用らしい。岩見沢からは特急「スーパーホワイトアロー」で深川へ。やはり雪原の中を豪快に飛ばした。

室蘭本線運用中のキハ130

 深川からは留萌本線を踏破する。深川〜増毛66.8kmで、途中に道内主要都市のひとつ、留萌(るもい)がある。このためローカル線ながらも廃止の話などとは無縁。そこそこ都市間の利用客があるのだろう。深川11:07発の留萌ゆきに乗る。キハ54の2両で、意外にも各車たった10人くらいしか乗っていない。石狩沼田付近までは石狩平野を快走。以降は山越えをの鉄路となる。山間に入ると大雪状態になり、車体は雪だらけ。雪と闘っているような感じだが、遅れは全くなし。深川からちょうど1時間で留萌へ。時刻表上ではここで増毛ゆきに乗り換えとなっているけど、実際は直通である。2両を1両ずつに切り離し、1両はそのまま進む増毛ゆき、1両は折り返しの深川ゆきになるのである。とはいっても増毛ゆきの車両は24分も停車するので一度改札から出て駅前を観察。大きな街なのだけど、大雪のためか人の動きがあまりないような感じ。

映画「駅—ステーション」のロケ地へ!

 留萌から増毛へ。こんどは海岸づたいの鉄路となる。日本海の荒波が車体を洗いそうな感じ。終点増毛着。ここは高倉健主演の有名な映画「駅—ステーション」の舞台となったロケ地だ。日本映画の傑作中の傑作で、私はこの映画が大好き。約20年以上前に撮影された映画のシーンと、現在の駅を見比べてみるのも楽しい。今はだいぶ寂れているようで、映画に登場した港町の面影は少ない。

雪に埋もれた増毛駅

 増毛でわずか9分の滞在。13:05発の深川ゆきで折り返す。深川には14:37到着。本日はファン活動はここまで。あとは富良野に直行してユースホステルでゆっくりするのみ。深川から函館本線を特急でちょっと走り、滝川で根室本線の鈍行に乗り換えて富良野へ。ろくごう・ふらりんユースホステルのスタッフがお出迎え。ワゴン車で走ること25分、真新しいYHへ。車中で私が鉄道の話をしたら、なんとYHに着いた直後に中国の鉄道が紹介された「朝日グラフ」をプレゼントしてくれた。感激!!そして、ペアレンツ(ユースホステル用語で、要はオーナーのこと)にはなんと子供が5人!このせいか大変家庭的な宿であった。本日の宿泊はなんと私ひとりのみだったけど、このおかげで寂しくなく過ごせた。

「北の国から」の舞台へ

 翌1月29日は午前中、YHの付近でじつにノンビリ過ごした。書くまでもなく、ろくごう・ふらりんYHの「ろくごう」とは、富良野市麓郷—TVドラマ「北の国から」の舞台だ。撮影に使われているあの小さな「五郎の家」はユースから2キロの所にあるという。もちろん、私はこのドラマの大ファンなので見にゆく。雪と氷の厳寒・氷点下10度付近の世界だが、快晴なので苦にせず歩くことができた。慣れればそんなに寒さは感じないものだ。徒歩約30分で例の現場へ。夏なら観光バスが頻繁に来る人気の場所だけど、この閑散期のせいか他に訪問者は数人くらいしかいなくて、ゆったりと家を観察できた。なんだか、本当に黒板五郎(田中邦衛 演)がひょいと現れそうなほどの場所。次回のドラマは、ストーリーが「石の家」で暮らすことになっており、そちらは離れた別の場所に造られたそうで、今後はこの小さな家はこのまま観光用に残すそうだ。

五郎の家

 約2時間くらいこのあたりで過ごし、喫茶店で暖をとっているとYHのワゴン車が迎えにきてくれた。もう午前11時を回っており、無料送迎してくれる時間外だが、市街に買い物に行くので駅まで乗せてくれるそうな。こういうスペシャルサービスはユースならでは。バスが1日3本しかないので大助かり。お礼を言って、駅で下ろしてもらった。

フラノ・エクスプレス

 この後は移動のみ。あと1線区・室蘭本線東室蘭〜室蘭間わずか7.0kmを踏破すれば北海道内いよいよ完全踏破であるが、それは明日に回す。富良野12:00ジャスト発の臨時特急「フラノ・エクスプレス滝川ゆきに乗り、滝川から特急「スーパーホワイトアロー」で札幌、さらに特急「スーパー北斗」にて伊達紋別へ。ここから路線バスで大滝村北湯沢温泉へ。北湯沢ユースホステル泊まり。私はここの露天風呂がお気に入りで、またペアレンツの堀田夫妻と親しく、北海道に来たらほぼ毎回訪れることにしている。ユースも先日建て替えして、新築のピカピカになってすこぶる快適。本日は食堂を地元の企業が貸しきり、宴会が開かれていた。しかし、それが終わって彼らが退散してしまうと、残り物でこんどはユースの宿泊者・スタッフで自然と無料の宴会に。こういうノリはいかにもユースらしい。楽しい雪の夜であった。

最後の1線をついに踏破!

 1月30日、道内最後の日である。バスで伊達紋別へ出て、そこから特急で20分、東室蘭へ。ここから7.0キロの室蘭までの枝線が最後の線である。東室蘭11:30発の室蘭ゆきは、キハ40の単行(1両)。北海道有数の工業地帯の風景を眺めながら11:44に室蘭到着!やりました!ついに北海道内JR線を完全踏破。缶コーヒーでひとりで乾杯。その後、移転・新築してきれいになった駅舎を眺める。夕張と同じく、ここ室蘭も少し短縮されているのだ。鉄道ファンとしては、その前に乗っておけばよかったかなと少々悔やまれるけど。

 

 

室蘭駅ホーム

 駅を眺めた後、せっかくなのでホームの駅名標をバックに記念撮影。ホームにきた背広姿の男性に声をかけて撮ってもらった。他の路線ではこういうことをしたことがあまりなかったが、今回は特別。その後、その男性が話しかけてきた。なんと、JR北海道でダイヤグラムを組んでいる、いわゆる「スジ屋」だという。おかげで鉄道談義となった。旅の最後にいい想い出となった。話込みすぎて、発車時刻も忘れ、気動車のドアが閉まって発車直前になったが、急いで運転席に駆け寄ってドアを再度開けてもらったほど。いやいや・・。

 あとはとぼとぼと甲府への帰途についた。室蘭から東室蘭に出て、特急「スーパー北斗」で函館へ。函館17:17発の快速「海峡12号」に乗り、青森から寝台特急「はくつる」に乗れば翌朝6:10に大宮埼京線新宿に行き、新宿から特急「スーパーあずさ1号」で甲府8:28着。急いで自宅に戻って着替えて会社に行き、9時の勤務に間に合わせた。

 (終)

  (1)最初は身近な東海地方へ。 (高山本線・名松線) (2)関西・山陰ウルトラ乗りつぶし旅 福知山線以下12線 前編  (3)関西・山陰ウルトラ乗りつぶし旅 後編(木次線・山陰本線など) (4)東北・落ち穂拾い紀行(釜石線・利府支線・石巻線ほか) (5)北陸地区完全踏破・周遊きっぷ初使用の旅(北陸本線ほか)   (6)真夏のお四国・乗りつぶし旅(牟岐線・予讃線ほか)   (8)九州踏破の旅・写真館(後藤寺線・指宿枕崎線など) (9)最後の4線踏破、国鉄・JR線全線完乗の日  

 

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