このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
1989年2月、大学卒業を目前に控え、ボクは北欧4か国を巡る旅に出発しました。第一の目的は、鉄道作家宮脇俊三氏が「清潔感あふれる」と表現した各国の鉄道に乗ること。
※金額等のデータは、全て当時のものです。
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2月17日(金) |
それにしても、アエロフロート・ソビエト航空の座席は窮屈だ。ボクの席は窓際だから外が見えるのはいいんだけど、トイレに行くのが一苦労だ。片側3人掛けだから、眠っている隣の2人を起こさなくちゃならない。ま、その2人が女の子だったのは幸運といえるかな。
この2人、明治学院大学の4年生で、やっぱり卒業旅行だそうだ。でも北欧じゃないんだって。この時期、北欧を目指す物好きはそう多くはないと思うけど、確かに。
西へ向かって飛んでいるこの飛行機の外は、なかなか夜にならない。太陽を目指して進んでるからなんだけど、なんか不思議な感じだ。窓から下を見たら、シベリアの白い大地が広がっていた。うわっ、見渡す限り家が1件もない。あのまっすぐに伸びているのはシベリア鉄道かな。ボクの友人がシベリア鉄道でヨーロッパへ行くって言ってたけど、向こうで会えるかな。そういえば、ある人から、
「鉄チャンたる者、シベリア鉄道で行くべきだ。」
と言われたが、ビザを取るのに1か月、日本からヨーロッパまで10日間、それに意外に金もかかるとあっては、断念せざるをえなかった。ということでご了承を。
さて、やっと日が暮れた。成田から約10時間30分の飛行を終えたSU580便は、約30分遅れ、午後7時30分、モスクワ・シェレメチェボ-2空港に無事着陸した。初めて乗った飛行機の感想は、
「あー、怖かった!」
今日の宿は空港からバスで3分くらいの所にあるトランジット・ホテルである。乗り継ぎ客用のホテルで、タダである。1泊分トクをした気分。それにしても、汚いホテル!
ここで明学の女の子たちと別れる。明日の便は、彼女たちはフランクフルト行き、ボクはコペンハーゲン行きなのだ。
2月18日(土) |
朝、ホテルの人が出発時刻であることを知らせに来てくれた。外はまだ真っ暗。
それにしてもこのホテルの部屋の鍵、いったいどうなってるの? どうしても開かない。寝ていた同室の人も起こし、2人で5分くらい格闘して、やっと開けることができた。なんだ、同じ方向に2回まわせば良かったのか。
さて、空港に戻り、コーヒー(50円!)を飲んだりするうちに出発30分前になったが、まだ搭乗は始まらない。やがて出発時刻を過ぎたけど、なんの動きもない。ふと外を見ると、すごい霧! これじゃあ飛んでくれない方がありがたい。
やがて霧も晴れ、SU215便コペンハーゲン行きは、定刻より2時間半遅れ、午前9時にモスクワを飛び立った。
この飛行機は、モスクワまでと違って片側2人掛けだ。前の座席との間隔も広いような気がする。しかも、すいてる。なかなかいいぞ、と思ってたら機内食が出た。はっきり言ってマズい。モスクワまではウマかったのに・・・。
とか何とか思ううちに高度が下がり、窓から地面が見えるようになった。うわっ、見渡す限りの畑! この辺はスウェーデンかな。
そして、やっぱり2時間半遅れたまま、午前11時にコペンハーゲン・カストロップ空港に着陸した。2度目の飛行機の感想、
「やっぱり怖かった!」
さて、やっと北欧最初の国デンマークにたどり着いた。まずは空港内の銀行で現地通貨に両替する。100米ドル紙幣を出すと686クローネ90オーレというお金になった。1クローネは100オーレで約20円である。クローネとオーレという単位は、デンマークだけでなくノルウェーとスウェーデンでも使っていて、相場もほとんど変わらないが、各国ともスペルが違う。デンマークとノルウェイではKroner(DKKおよびNOK)そして、スウェーデンではKronor(SEK)となる。もちろん、国際航路の出る港などを除けば、他国のお金は使えない。
ではさっそく、市の中心へ行ってみようかな。同行者は2人。2人とも飛行機の中で一緒になった日本人の学生(男!)である。ホントは女の子が良かったな。
S電・市バス共通切符 |
リムジンは使わず、安い市バスを使う。市バスのターミナルである市庁舎前広場までは12クローネ(リムジンは21クローネ)。運転手から切符を買って乗り込む。この切符はS電(後述)・市バス共通で、1時間以内は乗り換え自由である。
このバスの中で周りの乗客を見、窓から石造りの建物を見て、自分が外国にいることをはじめて感じた。と思ったら、日本でもよく見るコンビニが目に入った。ガクッ!
30分ほどで市庁舎前に着いた。これが市庁舎か。日本の味気ない市役所とは大違い。尖塔を持つ時計台もあって、まるで教会みたい。歴史を感じるなー、などと思いつつ別の建物を見ると、TOYOTAだのNECだのの広告が。気分こわすなー。でも、日本から遠く離れたこんな所にも広告を出す日本の企業を誇りに思う気持ちも少し。そういえば日本車も多い。
さて、とりあえず今夜の宿を決めなければ、ということで、3人で駅の西側の安宿街へ。この辺はアブナそうな人がゴロゴロいる。パトカーも多い。そんな中にある「サガ・ホテル」に決めた。3人部屋で1人130クローネ。物価の高い北欧ではかなり安い方だろう。これから先、安宿探しで苦労しそうだ。
コペンハーゲン駅 |
荷物を置くと、まず駅へ行った。コペンハーゲン駅。レンガ造りのこの駅、実にいい感じ。重量感がある。そして中には、銀行、郵便局、レストラン、スーパーなど、何でも揃ってる。こいつは便利だ!
ところでどこへ行こうか。3人でガイドブックを見ながら話したが結局決まらず、とりあえず歩こう、と駅を出たところで雨が降ってきた。風もあり寒い。しかし、ウワサには聞いてたけど、現地の人は傘なんかささない。ボクたちもささない。ただ持って来なかっただけだけど。
まず国立博物館へ行った。無料である。北欧では、税金はものすごく高い代わりに、文化的なことや病院などにはほとんど金がかからないんだそうだ。
それにしてもこの博物館、見るものが多過ぎるよ。3階建てなんだけど、1階を見ただけで外に出た。風雨はますます強くなっていた。
3人で寒さに震えながら歩くうちに、道に迷った。この街は実にわかりにくい。しばらくウロウロしてたら、コペンハーゲンまでの飛行機で一緒だった、やはり日本人の学生(これも男)にばったり出会った。彼はコペンハーゲンに住むおじさんに街を案内してもらっているんだという。で、そのおじさんが、
「腹が減らないか?」
というので、みんなでピザ屋に入った。鬼のように大きなピザはうまかったが、しっかり自分の分は払わされた。オッチャン、おごりじゃなかったの?
その後は結局めんどくさくなり、まだ午後4時ごろだったが、3人であのオッチャンの悪口を言いながらホテルに戻り、ベッドに横になってるうちに、いつの間にか晩飯も食わずに眠ってしまった。こうして北欧での第1日は、なんだかよくわからないうちに終わってしまったのである。
(つづく)
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