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■ 鉄道紀行 ■

第6回


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2月27日(月)
 今日はひたすら列車に乗るだけだ。3人でコケそうになりながら駅へ向かう。ここまで一緒に来た2人のうち1人とはここで別れる。ボクたち2人は、ここナルビク駅から、9時10分発のヨーテボリ(Goteborg、スウェーデン)行きの「Bottenviken」号に乗る。もう1人は午後の列車に乗るという。
80号車の28番?
 さて、列車に乗り込もう。ボクの席はどこかな、と切符を見る。80号車の28番か。80号車? そんな車両ないじゃないか! 発車時刻が迫っていたのでとりあえず乗り込み、大きなザックを背負ったままひんしゅくを買いながら列車内を歩き回ったが、やっぱり見つからない。もう1人の彼も同じようだ。車掌に聞いてもよくわからない。とりあえず空いた席に座り、何か言われたら動こうということになった。
Bottenviken号 ナルビク駅

 この列車は、 SJ の電気機関車を先頭に、2等座席車、2等コンパートメント車、2等座席・1等座席・1等コンパートメント合造車、荷物車から成っている。ボクたちは2等座席に陣取った。陣取ってから後悔した。ボクたちが座ったのは進行右側、雪の壁しか見えない。それに比べて左側には、壮大なフィヨルドの景観が広がっている、ようだ。首をネジ曲げ、向こう側の人と視線が合わないようにして眺める。

 フィヨルドが終わると、雪原の中を行くようになる。いつの間にか国境を超えてスウェーデンに入ったようで、重そうな鉄鉱石を積んだ貨物列車と何本かすれ違うと、12時07分、キルナ(Kiruna)に着いた。ここが高校の地理で習った有名なキルナか。チェックペンで印を付けておこう。あ、間違えた。消しペンで消そう。家に帰ったらチェックシートで復習だ。
 キルナからはまた1人日本人と一緒になる。彼は昨日の列車でナルビクまで行こうとしたが、列車が大雪のためキルナで運転打ち切りになり、列車の中で知り合ったキルナの人の家に泊めてもらったとのこと。言葉ができるっていうのはうらやましい!
 ここで何両か増結される。後ろの空いている車両に移り、ついでにビュッフェに行く。ピザみたいなものの上にサラミやらレタスやらがのった物を注文。あっためてくれるのかと思ったらそのまま出された。コーヒーとあわせて34スウェーデン・クローネ(SEK、約680円)也。
 今日の宿泊地はボーデン(Boden)という街(別にアイスクリームの産地ではない)。列車はそこに16時30分に着いた。もう薄暗い。キルナから乗った彼は先まで乗っていくというのでここで別れた。
 駅の真ん前の宿に泊まることにした。2段ベッドの部屋に素泊まりで50SEKだって。あまりの安さに驚きつつ眠った。

2月28日(火)
ハパランダ行き ボーデン駅
 今日はいよいよフィンランドに入る。7時55分発のハパランダ(Haparanda)行きで出発。国境へ向かう列車にしては、ディーゼルカー2両という軽い格好だ。でも、座り心地は、日本の代表的ディーゼルカーであるキハ58系よりずっといい。
 特にどうっていうこともない田舎の雪景色の中を進んで、10時10分、ハパランダ着。フィンランドとの国境はすぐそこだ。でも、ここからはバスで行く。 SJ 、NSB、 DSB の3国鉄が標準軌(線路の幅が1,435mm)なのに対し、 VR (フィンランド国鉄)はソ連(注・当時)と同じ1,524mmで、線路がつながっていないのだ。
ハパランダ駅

 それにしても、ハパランダ駅の建物は変だ。どこが1階でどこが2階だかわからん。教会みたいな所もある。

 11時55分、フィンランドの国境駅、ケミ(Kemi)駅行きのバスに乗る。5分ぐらい走るといかにも国境だなみたいな所があり、制服のオッチャンが乗り込んで来た。そして、他にも何人か乗客がいたが、わき目も振らずにボクたちの所へ来るなり、パスポートを見せろと言うので渡すと、それを持って小屋に戻って行った。数分後、ボクたちのパスポートは無事に戻り、国境を越えることもできたが、その間ずっと周りの人に注目されているみたいで、やーな感じだった。そうだ、ボクたちは今、外国人なんだよね。
 ま、とにかく無事にケミ駅に着くことができた。フィンランド時間で13時40分。と書いたのは、フィンランドと他のヨーロッパ諸国との間には1時間の時差があるからで、ヨーロッパ時間では12時40分である。通貨単位もマルッカ(Markka、FIM、1マルッカ=約30円)となる。
 15時35分、ケミ発。 VR の初乗車だ。3両のディーゼル機関車に牽かれた青に水色の客車は、今まで赤い車体ばかり見ていた目には新鮮に映る。車内も車体が広いのに横1列4人掛けで、すごくゆったりだ。
 ところで、ボクたちが乗った車両にはテレビが付いていて、アメリカ製のアニメ(バックスバニーとか)をやってた。「つまんねーなー」とか言いながら全部見てしまい、定刻17時ちょうど、終点ロバニエミ(Rovaniemi)に着いた。おかげで途中の景色、何にも見なかったんだけど。すぐに窓の外は暗くなっちゃったし。
 ロバニエミ・ユースホステルは駅から歩いて10分くらいの所にあった。受け付けの人に明日行く予定のサンタクロース村のことを聞くと、バス停の位置の地図まで書いてくれた。
 落書き帳みたいなのがあったのでパラパラとめくってみると、けっこう日本人も多い。その中の1つを同行の彼が、
「あっ、これ!」
と言って指差した。女の子の名前である。
「去年、ヨーロッパからの帰りの飛行機で一緒だったんだ。」
彼はその子に書くんだといって絵葉書を買いに行った。ひとり部屋に残されたボクは、なぜか疎外感のようなものを感じた。

(つづく)

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