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第8回
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3月3日(金) |
目が覚めた。午前7時。船はまだ動いている、と思う。何しろぜんぜん揺れないのだ。連れも起きたみたいだ。一緒に甲板に出てみる。もう完全に明るい。船は島を縫うように走っている。それにしても、連れの機嫌は悪そうだ。ブスッとしてるし、話し掛けてもロクに返事もしない。でも、いったん話し出すと止まらない。ソーウツの気があるようだ。
時計を1時間戻してスウェーデン時間に合わせる。午前8時、「Silvia Regina」は15時間の航海を終え、定刻通りストックホルム港に入港した。ヘルシンキの海は氷が張ってたけど、こっちは鉛色の水が見えている。
ストックホルム中央駅 |
地下鉄でストックホルム中央駅へ。この地下鉄は「Tunnelbana」と呼ばれ、ストックホルム市交通局「SL」が運営している。料金は4クローネ(SEK、約80円)で、1時間以内なら乗り降り自由。車内は全てクロスシート。この国にはラッシュ・アワーってもんがないの?
20分で中央駅着。人がウジャウジャ。コーヒースタンドに席を見つけ、
「さて、どうする?」
でも、彼がここは2度目だとわかり、ついて行くことにした。荷物は、今晩夜行列車に乗る彼はコインロッカーに、ボクはユースホステル(YH)に置きに行き、国立美術館の中で落ち合う。美術館の作品はピカソやルノアールやロダンなんかがあったらしいけど、そんなもの(と言っちゃ失礼だけど)より美術館の建物自体が気に入ってしまった。
ガムラスタン |
次に王宮の横を通ってガムラ・スタン(Gamla Stan)へ。王宮「Kungliga Slottet」の中も見たいけど、彼は目もくれない。「ガムラ・スタン」は旧市街の意味。中世の建物が、磨り減った石畳の横にぎっしりと建ち並んでいる。メイン・ストリートが1本あって、そこは賑わっているけど、1本外れると誰も歩いてなかったりする。ゆっくり歩きたい! しかし、彼はスタスタと一直線に歩き続け、外れにあるスーパーでコーラを買うと、
「次、行ってみよう!」
その後、市庁舎に寄って中央駅に戻った。今度は地下鉄を見に行くと言う。もちろん賛成。ここの地下鉄11号線は芸術路線と呼ばれ、各駅ごとに装飾を任された芸術家が、自分の思い通りの駅に仕上げている。中央駅の隣、クングストレードゴーデン(Kungstradgarden)駅へ行ってみる。電車から1歩出ると、そこは中世の城の中のようだ。鎧があったりする。出口の方へ歩いて行くと、堀に橋がかかっていたりもする。薄暗さも雰囲気を盛り上げている。
さて、彼はもう何駅か見るという。ボクは王宮の中を見たかったので、ここで別れることになった。王宮へはここから近い。
「絵ハガキ待ってるから。ボクも送るし。」
「うん。」
1週間行動を共にした割にはあっけない別れだった。なお、結局、彼から絵ハガキが来ることはなかった。
一部にしろ王宮を一般公開しているのはスゴイと思う。宝物の間「Skattkammaren」という部屋があり、数百の宝石で飾られた王冠があったりする。
王宮を出ると、もう一度ガムラ・スタンをぶらついた。落ち着くようなワクワクするような、不思議な所だ。「KOKORO」なんていう日本の古道具屋を見つけた。うちで10年以上使ってるテレビを買い取ってくれないかな。
その後、今晩の食事を買いに市営市場「Saluhall」へ。ここはおもしろい! スウェーデン人が食べるものはなんでもあるって感じ。肉あり魚あり野菜あり…。惣菜類もある。その中から、何だかわかんない魚をクリームシチューに漬けたような物を選んだ。
「そのまま食べられるの?」
と英語で聞いたつもりだったけど、何回言っても通じないからそのまま受け取った。
夕暮れのストックホルムをぶらついてYHに戻る。途中の橋上から眺める対岸の夜景がきれいだった。YHでさっきの魚のシチュー漬けを食べる。うまい! でも、あったかいうちに食べたかった。
3月4日(土) |
9時ちょっと過ぎにYHを出る。ぼくの泊まったYHの前に「アフ・チャップマン」という帆船が繋がれている。実はこの中はYHになってて、ボクはそっちに泊まりたかったのだ。ところが、ガイドブックには3月1日から開業になってるのに、4月1日からの張り紙が。3本マストの白い帆船に恨めしげな視線を投げつつ駅へ向かう。
ストックホルム中央駅は、北欧4ヶ国の首都の駅の中でいちばん広々として明るい感じがする。構内のカフェテリアで朝食を済ませると、日本人に声をかけられた。彼はボクが数日前に行った ナルビク へ行くんだって。
ストックホルム→カルマル |
ボクはというと、10時06分発のカルマル行きインターシティーに乗る。カルマル(Kalmar)はストックホルムから南へ450kmの所。インターシティーっていうのは日本のL特急みたいなもんだ。ボクが乗る列車には他にマルメ(Malmo)行きも併結している(っていうか、カルマル行きがマルメ行きにくっついてる)。マルメ行きはだいたい1時間おきに出ている。
ストックホルムを定刻に発車。しばらくは都市近郊って感じだけど、そのうち雪原と森と湖の北欧っぽい景色が続くようになる。400kmも走れば大きな街があってもいいと思うけど、窓の外はずーっと田舎の景色。日本では考えられない。14時55分、やっと街らしい街、アルベスタ(Alvesta)に着いた。ここでマルメ行きと別れ、3両編成と身軽になる。
カルマル駅 |
薄暗くなった頃、16時45分、終点カルマル駅に着いた。ホームが1面あるだけ。1両だけのディーゼルカーの方が似合うんじゃないの? 駅前も建物は並んでるけど人気がない。あ、今日は土曜日か。開いてるのは駅前のハンバーガー屋くらい。
さて、今日の宿が決まっていない。一覧表に載っているいちばん安い所へ行こうと歩き始めた。17〜18世紀に建てられたという建物が整然と並んでるけど、目当てのホテルがない。町外れまで歩いて、やっと見つけた。と思ったら、ドアをいくらたたいても何の反応もない。コラコラ、ホテルまで休んでるのか? 仕方ないから駅近くまで戻った。で、その辺のホテルで値段を聞いたら、なんだ、けっこう安いじゃないか。アホらしい。1時間以上も歩き回ったんだぞ!と怒ったら腹が減ったので、駅前のハンバーガーを食べてとっとと寝た。
(つづく)
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