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第7回
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3月1日(水) |
ロバニエミにはサンタクロースの家がある。今日は手土産も招待状もないけど、そこを訪問しようと思う。彼の家のあるサンタクロース村へは、駅近くのバスターミナルの、その裏のバス停から約20分。ここはまさに北極圏との境目である。
横に細長い、丸太小屋風の建物に入ると、まず目につくのが各国語で書かれた歓迎のあいさつ。「ようこそ!」という日本語ももちろんある。建物の中はというと、要するに土産物屋街みたいなもんだ。でも、こういう所を見て歩くのって、けっこう楽しかったりするんだよね。絵ハガキを見てるだけでもけっこう時間がたっていく。トナカイの肉を売ってたりする。
この中の一角に郵便局がある。ここから郵便を出すと、サンタクロース村特製の消印を押してくれるんだって。そこで、同行の彼と、コーヒーでも飲みながら絵ハガキを書こうということになった。ここで書いた絵ハガキ、10枚。考えてみると切手代もバカにならない。ま、そういうことを考えるのはよそう。もう二度とは来ない所だもんね(たぶん)。
と、その時、鈴の音と共にサンタさん登場! 握手をして、セーターにシールを貼ってもらって、写真まで一緒に撮ってもらった。お礼に、今年のクリスマスにはボクのうちに招待してあげよう。でもこの人、実はただの郵便局の職員なのだ。おっと、種明かししない方が良かったかな?
郵便局の前に住所と名前を書くノートがある。これに記入すると、今年のクリスマスにプレゼントが届くんだって。子供向けみたいだけど、当然記入する。その他、世界各国の子供たちがサンタにあてた手紙が展示してあったりする。もちろん日本からのもある。へぇー、サンタっていったい何ヶ国後しゃべれるんだろう。
さて、トナカイの肉と毛皮をお土産にサンタの家をあとにして街に戻った。今日は夕方6時発の夜行列車でヘルシンキに向かうことにしている。まだかなり時間があるので、バス停から5分くらいの図書館に行くことにした。ここではレコードの試聴ができるのだ。何を聴こうか迷ったけど、フィンランドに来てこれを聞かないテはない!ということで、シベリウスの「フィンランディア」を選んだ。レコードを受け付けに持って行き、自分の席を指すとヘッドホンをくれ、レコードをかけてくれる。あとはヘッドホンの端子を自分の席のジャックに差し込むだけだ。ボクは深々としたソファーに身を沈めて目を閉じ、心を無にして名曲の調べに耳を傾けた。しかし、クラシックなんか聴き慣れないボクは、いつしか眠りへと誘われていったのだった…。
ロバニエミ18時00分発のヘルシンキ行き急行列車は、1・2等それぞれの座席車・寝台車、それに食堂車もつなぎ、10両以上の長い編成である。相変わらずゆったりの座席に腰を下ろし、列車が動き出すと、昼間買ったトナカイの肉をパンに挟んで食べた。今日の夕食、終わり。あとは寝るだけ。
3月2日(木) |
また夜中に起こされた。今度は男同士の口論だ。こちらの人たちが、夜行列車で歌ったり大声を出したりするとは思わなかった。少し失望。
朝8時ちょうど、ヘルシンキ着。まだ薄暗い。でも、通勤列車が次々に到着し、たくさんの人が足早に駅の外へ消えていく。ボクたちも天井の高い駅舎を抜けて外へ。そして、振り返ってびっくり! まるで美術館みたいな駅舎だ。
ヘルシンキ駅に到着 | ヘルシンキ駅 |
「ところで、この荷物どうする?」
しばらく考えたけど、やはり港のコインロッカーに入れることにした。今晩は船に乗る。
大聖堂と路面電車 |
20分歩いて荷物をロッカーに入れ、身軽になったボクたちは、まずカウパトリへ。青空市場である。八百屋や花屋などが並んでいるが、いまいち活気がない。その中に、やかんに「+20℃」と書かれた看板がある小屋を見つけた。思ったほど寒くなかったけど、もうもうと湯気の出ているその店に吸い込まれた。腹もへっていたのでコーヒーとドーナツを買う。
次に大聖堂へ。薄緑の屋根と白い壁。この街の象徴といえる建物である。中にも入れる。その荘厳さに心が洗われた。大聖堂の前はセナーティントリと呼ばれる広場になっている。その向こうを路面電車が通過していく。よく似合っている。
さて、そろそろ帰りの飛行機のことを考えなければならない。ここでリコンファーム(予約の再確認)をしといた方が無難だろう。これをしないと予約が取り消される。やっとの思いでアエロフロートの営業所を捜し当てたボクたちは、KGBの隠しカメラがあるというウワサのあるその中に入った。女性が2人座っている。
「リコンファームしたいのですが(いちおう英語で)。」
「OK!」
彼女はボクの航空券をを受け取ると、端末をカタカタたたいていたが、しばらくすると、ニッコリ微笑んで航空券を返してくれた。
「さあ、これで一安心だ!」
しかし、彼女の微笑みの裏には恐ろしい事実が隠されていたのだ。ボクはまだその時、何も知らない…。
今日の昼食はヘルシンキ大学の学食で食べる。久しぶりにまともな食事をしたような気がする。食事の後は、美術館とデパートで時間をつぶした。ヘルシンキ最大のデパート「ストックマン」は、買い物街の真ん中にある。ひどく混んでいて、同行の彼とはぐれてしまった。1人で港へ。しばらく待つと彼もやって来た。
さて、今日はここからスウェーデンのストックホルムへ向かう。船はシルヤ・ラインの運航する「Silvia Regina」。排水量26,000t、定員2,000人、自動車500台も積める。レストラン、バー、ディスコ、サウナなどがあり、まるで海に浮かぶホテルである。これに、なんとタダで乗れてしまうのだ。「ユーレイルパス」の魔力である。
「さあ、今夜は思いっきり楽しむぞ!」
心は軽い。でも、財布も軽い。結局、使った施設はサウナとベッドだけ。ちなみに、夕食もヘルシンキで買ったパンとハムである。
船は金持ちと貧乏人を乗せて、夜のバルト海を滑っている。
(つづく)
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