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■ 鉄道紀行 ■

第5回


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2月25日(土)
アクスラ頂上から
 オーレスン。ガイドブックの表紙の写真を見てから、ずーっと気になってた街だ。
 朝、荷物をバスターミナルのコインロッカーに入れると、アクスラ(Aksla)という名の岩山の登る。もしかしたらロープウェイかなんかあるかも、なんて思ってたが見事に裏切られ、階段を登るはめに。でも、上へ行くたびに景色が広がり、期待は裏切られなかった。頂上に着くと平べったい岩があったので、そこに座ってしばらくボーっとしていた。360度フィヨルドの景観。缶ジュースでも持って来ればよかったな。
トイレ利用券
 このすばらしい眺めの感動が醒めないうちに、ボクはコケた。スノトレも氷の上では無力だ。その痛みがひかないうちに、トイレに行きたくなった。バスターミナルの近くでトイレの表示を見つけたので行くと、有料だった。5NOK(約100円)也。
 14時00分発のバスで引き返す。オンダルスネスで列車に乗り換え、18時08分、ドンボスまで戻って来た。
 次に乗るのは19時34分発のトロンハイム(Trondheim)行きである。その前にオスロ行きの急行「Dovre Sprinten」が来るんだけど、定刻の18時13分になっても現れない。吹雪いていたからそのせいだろう。放送があり、周りの人が「チェッ」とか言ってるからだいぶ遅れてるらしいけど、ボクにはさっぱりわからない。ま、ボクには関係ないけど、と、その時は思っていた。
 オスロ行きは40分ぐらい遅れて到着し、ドンボスで20人ぐらいの人を乗せてすぐに発車していった。
 ボクの乗る「Dovre Express」はほぼ定刻通り到着し、発車した。全車新型車両で編成されている。車両の中央で禁煙席と喫煙席が仕切られているんだけど、その仕切りのドアも自動だし、座席の形も近代的だ。座り心地はイマイチだけど。
 さて、この列車のトロンハイム着の予定は22時05分。しかし、その時刻になってもまだ走っている。おいおい、ボクはトロンハイムで22時50分発のボードー行きに乗り換えるんだぞ。間に合うんだろうな。しかし、さらに新事実に気付き、ボクは愕然とした。窓の外を通り過ぎていくはずの架線柱がない! トロンハイムまでは電化されているはずなのに…。そういえばさっきよりスピードも落ちている。列車ジャック? またまた有名になれるチャンス到来か? 周りを見ると、覚悟を決めたのか、目を閉じて祈っている人がほとんどだ。ん?眠ってるだけか。
 そのうち、列車は操車場のような所に停まると、なんと反対向きに走り出したのだ。そのままポイントを渡って数分走ると、駅に着いた。トロンハイム駅、終点である。別線経由で来たのだろうか。いまだに謎である。
 すでに接続列車は発車している時刻だが、隣のホームで待っていてくれた。これがボードー(Bodo)行きの快速列車である。2等座席車だけで編成されている。トロンハイムはドンボスから北へ200kmの所だが、この夜行列車でさらに北を目指す。約1時間遅れて発車。
 車内で日本人男性2人組みにあった。やはりさっきの「Dovre Express」で来たとのこと。久しぶりに日本語しゃべるなー。しゃべり疲れて、いつの間にか眠っていた。

2月26日(日)
 目が覚めると外はまだ薄暗い。列車はフィヨルドに沿って走っている。それとも川かな?
 やがて、汽笛を鳴らして北緯66度33分を超える。いよいよ北極圏だ。荒涼とした風景。人間の作ったものは鉄道しかない。
「それにしてもこの列車、まだ遅れてるのかな。」
「うん、どうだろう。」
そう、列車は我々の予想をはるかに超えるほど遅れていたのだ。
 ボクたち3人は、この先しばらく行動を共にすることになる。この後、8時48分着のファウスケ(Fauske)で、9時20分発のナルビク(Narvik)行きのバスに乗り換えるつもりだが、9時半を過ぎてもまだファウスケに到着しない。
「1日2本しかないバスだから、待っててくれるんじゃない?」
「うん、たぶん。」
しかし、それは希望でしかない。
 結局、ファウスケに着いたのは11時を過ぎていた。でも、やっぱりバスは待っていてくれた。満員の客を乗せ、ナルビク行きの2台のバスは約2時間遅れて発車した。
 北極圏のバスの旅。いいもんだ。青い空、雪をかぶった岩山、ノルウェーの森…。フィヨルドをフェリーで渡ったりもした。5時間という時間があっという間だった。そして、16時30分、バスは2時間遅れのままナルビクに着いた。
ナルビク駅
 ナルビク。北緯68度28分。世界最北端の駅のある街である。とにかくここへ来てみたかった。さっそく駅へ行く。なんの変哲もない駅舎と片面ホームが1つあるだけだ。駅舎内では「到着証明書」みたいなものを売っている。ただの紙切れなのになんと15NOK! ちょっと高いんじゃないの? 結局買わなかった。
ナルビク駅に到着した列車

 列車が着いた。列車といっても、電気機関車1両、客車(でもパンタグラフが付いてるな)1両だけ。スウェーデンとの国境が近いからどこの車両か興味があったけど、これはNSBだった。ローカル列車だろう。

 さて、今日の宿だが、ユースホステルにしようと思う。ユースホステルの国際ハンドブックでは冬季休業となってるけど、営業中という情報をつかんでいる。
 ドアを開けると、愛想のいいカワイイ女性がにこやかに迎えてくれた。彼女、窓の外の夕焼けを指差して、きれいだから見てみろ、なんて言っている。でも、ボクたち3人は、彼女の顔しか見ないで、
"Yes, yes."
と答え、お互いに、
「ホントにきれいだよね。」
などと言い合っていた。

(つづく)

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