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■ 鉄道紀行 ■

第3回


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2月21日(火)
 朝食をとらずにホテルを出る。午前7時。夜はまだ完全には明けていない。でも心はワクワク。何と言っても今日はノルウェーの真髄に迫ってしまおうという日なのだ。
 最初の列車はベルゲン行きの急行「PERNILLE」(意味も読みもわかりません)。予約した席につくと7時35分、定刻に発車した。夜も明けた。晴れてる。ますますワクワク。
 今座っている席は466号車の14番。といっても466両もつないでいるわけではない。そして、おとといオスロまで乗った列車のコンパートメントと違って、このNSB(ノルウェー国鉄)の車両は日本と同じ開放型の座席である。でも、標準軌(線路の幅が1,435mm。新幹線と同じ)でも横1列5人掛けなんてことはしない。4人掛けのゆったりしたサイズで枕付き、座り心地も最高。それにしても、なんでこんなに混んでるんだ? 女の子4人組(カワイイ)とか家族連れとかがけっこう乗っている。
 さて、女の子から窓の外に目を移すと、オスロ市内にはほとんどなかった雪が一面に広がっている。そして、ノルウェーの森。そこを抜けると湖。時にはトンネル。そんな景色を繰り返す。列車は雪煙を上げて走る。まさに「煙」だ。ときどき外が真っ白になる。
 そして、長いトンネルを抜けると12時09分、ミルダール(Myrdal)に着いた。実はここが今回の旅の最大の目的の1つ、 フロム(Flåm)線 の始発駅なのだ。ミルダール駅の標高は746m、フロム線の終点のフロム駅は、ソグネ(Sogne)・フィヨルドから枝分かれしたアウールラン(Aurland)・フィヨルドの水面とほぼ同じ高さなので0mに近い。これを長さたったの20kmで下ってしまうのだから、鉄道としてはすごいことだ。平均37.3‰は、JRの最急勾配35‰をすでに超えている。考えるだけでもドキドキワクワクしてしまう。
 電気機関車1両、客車1両というフロム行きの列車は、雪のせいか15分ほど遅れて発車した。そういえば、ミルダール駅に降りた時から吹雪いてたな。列車はノロノロと素掘りのトンネルに進入する。トンネルなんかとっとと抜けろ! 抜けた! うわっ、いきなりフィヨルドの崖の上!と思ったらまたトンネル。これを繰り返す。
 いくつか目のトンネルを抜けたところで、向こう側の崖に滝が見えた。こっちにはまるで恐竜の牙みたいな(見たことないけど)巨大なつららが列車すれすれまで迫っている。もっとゆっくり走れ! 時間よ、止まれ! しかし、無情にも列車はトンネルへ…。
 そうこうするうちに水面が近づき、列車はフロム駅に着いた。スリルと興奮の45分間だった。
フロム駅今下りてきた崖を見上げる
 ここからはフィヨルドを船で行きたかったが、東京の観光局の人が運休していると教えてくれたので、そのまま列車で引き返す。しかし、その後ミルダール駅で会った日本人に聞くと、船は動いていたとのこと。もう観光局の言葉は信じないことにする。
 彼は昨晩、ボスという所のユースホステルに泊まったという。今日はベルゲンまで行くつもりだったボクは、この一言でボス・ユースホステルに泊まることにした。
 ボス(Voss)はミルダールから50kmほどベルゲン寄りにある。ここはフィヨルド観光の拠点となっている町で、ツアーバスがここから出発する。すでに薄暗くなっている中を吹雪きに打たれ、道に迷いながらもユースにたどり着いたボクを迎えてくれたのは、優しく微笑む女性の受付だった。彼女がくれた鍵で部屋のドアを開けると、なんと、10代に見える男女が2人っきりでいるではないか。しかも男の方は下着だけ。そして、
「ここはぼくと彼女の部屋だ。」
みたいなことを言う。さすが北欧である。

2月22日(水)
 8時38分発の列車でベルゲンへ向かう。ローカル用の車両で、横1列5人掛けだ。フィヨルド沿いに走り、9時50分、ベルゲン(Bergen)着。ここはノルウェー第2の都市で、最大の漁港のある街でもある。しかし、歩いてみても、あまり賑やかさは感じない。まあ、平日の朝だということもあるだろうけど。ボクの横を、あまり人の乗っていないトロリーバスが走って行った。
ブリッゲン
 まずは青空市場へ。ガイドブックには賑わっているようなことが書かれているが、ほとんど店がない。ガイドブックも信じないことにする。青空市場のすぐ近くには港に面してブリッゲン(Bryggen)という通りがある。ここはドイツ風商館が修復されて建っている。今日は雨。しっとりと濡れていい感じ。ここで毛糸のセーターと帽子を買う。
 次にケーブルカーでフロイエン(Floybonen)山に登る。このケーブルカー、地下鉄みたいな駅から発車すると、途中2駅に停まり、下りの列車と交換して頂上に至る。ケーブルでつながっている下りの列車は、2回も何もない所で停まるわけだ。頂上は吹雪いていた。眺めはいいが、あまりに寒いのですぐに下りた。
フロイエン山からケーブルカーの乗車券
 それにしても、見るべき所はあらかた見ちゃったなー。というわけで、早めに宿に入る。今日の宿は「クロステル・ペンション(Kloster Pension)」。朝食付きで220NOK(約4,400円)である。今日もまた部屋でむなしく夕食をとる。ただし今日はデンマークビール付き!

(つづく)

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