このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

■ 鉄道紀行 ■

第9回


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3月5日(日)
カルマル城
 朝飯後の散歩に出かける。外は雨。線路を渡るとすぐに、霧にけむるカルマル城が見えてくる。海に突き出るように建っているのは、対岸のエーランド(Oland)島との間の狭い海峡を見張る砦だったからだとか。城の周りは公園になっている。犬の散歩のおじいさんとすれ違う。この雰囲気、好きだなー。
 城壁をくぐって中庭へ。さらに城の中に入って石造りの階段を眺めてると、男の人に声をかけられた。ついて来いって言ってるみたいだな。中を案内してくれるのかな?と思ったら、城の中の礼拝堂に連れて行かれた。そうか、今日は日曜日か。この人は神父さんのようだ。一緒に祈っていけって訳ね。まだ始まるには間があるらしく、2〜3人が座ってるだけだ。神父らしき人も階段を降りて行った。残されたボクは、ロココ調(というんだそうだ)の礼拝堂を眺めていたが、列車の時間もあるのでそのままそこを出た。今日は日曜日ということで、城の中の他の場所は見られないらしく、公園を抜けてホテルに戻った。
 今日の最初の列車はカルマル発11時11分。ホテルの人に教えられたニーブロ(Nybro)という駅で降りる。西へ27キロ、24分で着く。ここにはプーケベリ(Pukeberg)というガラス工場がある。駅員が歩いて20分だと教えてくれたので、雨の中を歩き出した。森の中の道を抜けると確かにガラス工場はあった。でも、今日は日曜日。やってるわけない。と、ふと見ると、工場の向かいの直売所はやってるじゃないか!
 中ではきれいな女性がつまらなそうにしていた。ボクは、たくさん並んでるガラス製品をゆっくり見始めた。しばらくして、そのうちの器を1つ彼女の所に持って行き、
「これください!」
すると彼女は、それを手に取って眺め回していたが、これは失敗作だと言う。見ると、確かに気泡がたくさん入っている。でも、客に売れないような物を置いとくんじゃないってゆーの。結局、彼女のお墨付きをもらうまで3つもレジへ持って行くことになった。
 ニーブロ発13時35分。アルベスタで15時ちょうど発のインターシティーに乗り換え、マルメ(Malmo)には16時52分に着いた。ここでまた宿探しをするハメに。結局、中心部のホテルを諦め、バスで郊外のYHへ。
 夕食はYH近くのピザ屋で。コペンハーゲンのピザ屋で一緒に食べたみんなが懐かしい。あの オッチャン も。

3月6日(月)
 マルメは対岸がすぐにデンマークのコペンハーゲン、というところにある国境の街。月曜日休館のマルメ城を外から眺め、駅前のインレ埠頭(Inrehamnen)へ行く。ここからコペンハーゲン行きの水中翼船が30分から1時間おきに出ている。
 コペンハーゲンまでの切符を買おうとすると、窓口の女性がやたらと何か言ってくる。意味がわからないので何回も聞き返すと、諦めて切符を売ってくれた。65クローネ(約1,300円)也。で、その切符を受け取ってからわかったのだが、あの窓口嬢は、往復割引があるみたいなことを言ってたようだ。この航路の所要時間は45分。しかし、れっきとした国際航路である。スチュワーデスみたいな人が免税品を売りに来る。
人魚の像

 あっという間にコペンハーゲン着。なつかしのコペン!実に16日ぶりの再会である。あの時は雨が降ってて寒かった。今日は曇ってるけど寒くはない。

 帰国までの3日間、ここの近郊をうろつこうと思う。まずは市内の人魚の像(Den Lille Havfrue)へ。デンマークはアンデルセン(H. C. Andersens)の生まれた国。この像は彼の「人魚姫」に因んで作られた。でも、行ってみると、港のはずれにポツンと建っているだけで、どうってこともない。

 次に時間を見計らって、王室の住居であるアマリエンボー宮殿(Amalienborg Slot)へ。その前の広場で12時から衛兵交替式があるんだって。待つことしばし。来た来た。街をパレードして来た衛兵がブンチャカブンチャカ楽隊と共に入って来たのだ。続いて交替式。これは厳格に。声が広場に響き渡る。そして楽隊の演奏。これで終わりである。
クロンボー城
ヘルシンオア駅前
 ここで日本人に会った。銀行員で、仕事半分遊び半分で、ヨーロッパ中を見て周ってるんだって。泊まるホテルは一流ばかり。ここではシェラトン。でも、部屋を見せてもらったけど、どうってことないな。
 これからクロンボー城(Kronborg Slot)を見に行かないかって言う。一緒に行くことに。「ハムレット」の舞台と言われるこの城は、コペンハーゲンから列車で50分のヘルシンオア(Helsingor)にある。でも行ってみたら本日休館。どうもぼくは城にはツキがない。
 ところで、コペンハーゲンに戻る途中で気付いたんだけど、この列車はおもしろい。電気機関車牽引の客車列車なのに、終着駅で機関車の前後の付け替えをしない。それもそのはず、客車の最後尾にも運転台があるのだ。なーるほど。
 さて、いったんコペンハーゲン市内のホテル・ダニア(Hotel Dania)に戻ってから出直す。さっきの人が夕食をおごってくれるんだって。ストロイエ(Stroget)という歩行者専用のショッピング・ストリートから少し入った所にある、「SUZURAN」という日本料理店に入った。店の中は、和と洋が見事なまでに不調和な異様な感じ。ちょっとやめてほしい。味の方はまあまあ。でも何なんだ、この量の多さは! ボクはカツ丼、もう1人はとんかつ定食を頼んだんだけど、どっちもとてもじゃないけど食べきれない。その晩、腹痛を起こさなかったのは奇跡だ。

(つづく)

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