このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 
 
 

さらば大灰廠
時間に追われての訪問となってしまった2度目の大灰廠。
まさか、これが最後の訪問になるとは知る由もなく・・・。


「なぁなぁ、北京といえば、あの16番ゲージみたいなヤツ!」
「ん?16番ゲージみたいなヤツ??」
「あの、年賀状の写真のあれやんけ!」
「あぁ〜、あれねぇ〜!」
「あれ観てみたいなぁ〜。」
「・・・・・」

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力強いドラフト音を響かせながらやってくるC2型蒸機
力強いドラフト音を響かせながらやってくるC2型蒸機
ある日、中国の鉄道をあまり知らない旧知の友人と鉄ネタの撮影に向かう車の中、いつか一緒に中国へ行けたらいいのにねと話しているとき、彼が真っ先に話しだしたのが、大灰廠のナローSLの話でした。
北京市内から非常に近い場所に存在することで、お手軽に行けるナローSLの撮影地として世界中の中国蒸気機関車ファンの注目を集めていた大灰廠。私も2度訪問し、その長閑な雰囲気の中でかわいいナローSLの撮影を楽しみました。
 
しかし、平成17年(2005年)6月をもって突然の路線廃止・・・。
私は2度目の訪問が夕方近くになってしまったため満足に撮る事ができず、3たびの訪問をと思っていたのですが、残念ながら叶わぬ夢と消えてしまいました。
 
「実は、去年の6月で廃止になってしまって・・・。」
「えっ?そうなんか・・・。観てみたかったなぁ・・・。」
 
年賀状に使ったのはこのカットでした(笑)
年賀状に使ったのはこのカットでした(笑)
そりゃぁ、こんな濃ぃ〜い列車の写真の年賀状が届いたら、印象に残りますわな(笑)。もっと情景的な写真にすればよかったのですが、なぜかこの写真を使いました。
 
北京の街から1時間ちょっと西へ行った所にあるナローゲージ蒸機の桃源郷、まさにそんな形容がぴったりな大灰廠。大都会の喧騒から離れた山間の小さな街、その街外れを走る小さなかわいい蒸気機関車。まるでおとぎ話の中に登場しそうなロケーションの中にこだまする力強い蒸機の息遣い・・・。
 
そんなことを想いながらあらためて観てみると、C2型蒸機って、本当におとぎ話の中に登場しそうな形の機関車ですね。
 
積載場で待機する蒸機とトロッコ
積載場で待機する蒸機とトロッコ
大灰廠のナローゲージ専用線は、石灰石の採石場に敷設された鉄道で、山で採石された石灰石を運ぶため、蒸気機関車に牽引されたトロッコ列車が採石場と積出場の間をピストン運転する鉄道でした。
 
前回はじめて訪問したときには、積出場付近での撮影でしたが、2回目の訪問となる今回は、採石場付近で撮影することにしました。
 
写真の左奥に見えるトンネルの中が石灰石の積載場になっていて、空のトロッコを積載場のトンネルに押し込んで、積込みが終わると、約1.5キロ離れた積出場へ向けて発車していきます。
 
機関車は全部で4台あり、常に2台の機関車が本線上を走ってました。
機関車の向きが全て積載場の方を向いているため、機関車の向きは、積出場から積載場へ向かう空のトロッコ(空車)を牽引する機関車が前向き、積載場から積出場に向かう石灰石を満載したトロッコ(積車)を牽引する機関車が後ろ向きのバック運転となってました。
 
見よ!この“へろへろ〜”転轍機!
見よ!この“へろへろ〜”転轍機!
ナローゲージの魅力と言えば、かわいい車両達が健気に活躍している姿とともに、やっぱり“へろへろ〜”なレールを外すことはできません。
もちろん大灰廠も例外ではありません。ご覧下さい、この“へろへろ〜”なレールを!しかも転轍機!これで萌えないわけがない(笑)!
ナローゲージ蒸機の競演!
ナローゲージ蒸機の競演!
大灰廠の線路は、ナローゲージの専用線では珍しい複線になってました。そのため、ナローゲージの蒸機がすれ違ったりする珍しいシーンを観ることができました。
 
この写真は、厳密にはすれ違いのシーンとは言えませんが、積荷の石灰石を満載したトロッコを牽引して出発してきた列車(左)と、積載場で空のトロッコをトンネルの中に押し込む列車(右)を一つの画面におさめたものです。
力強く力行するナロー蒸機と、高々と煙を上げてトロッコを押すナロー蒸機。こんな魅力的なナローゲージ蒸機の競演を観ることができるのも、大灰廠の大きな魅力でした。
さらば大灰廠!
さらば大灰廠!
積載場で撮ったあと、ぼちぼち撮りながら、路線の中間付近にある踏切まで歩いて来ました。
ぼんやりと曇ったはっきりしない空に見え隠れしていた太陽はすでに西に傾き、そのぼんやりとした空からほんの少しだけ射し込む夕陽の赤さが、山間の大灰廠を微かにその色に染めている夕方、そろそろ帰ろうかという時間になってきました。
そんな景色の中、空のトロッコを牽引して山へ向かう蒸機がやってきました。
走ってくる列車を撮って振り返ると、夕暮れの山へ走り去っていく蒸機。踏切を通過していく列車を撮ると、山間に汽笛が響き渡りました。
 
***
 
大灰廠、突然の路線廃止・・・
このニュースにがっくりと肩を落とした同好の士の皆さんもたくさんいたのではないでしょうか?私もその中の一人でした。
私にとって大灰廠は、はじめてナローゲージの蒸気機関車を観た場所であり、小さくてかわいいナロー蒸機が、標準軌の蒸機にも負けない迫力で力強く走る健気な姿に魅了された場所でした。
2度目の訪問で満足に撮ることができず、3度目の訪問を願ってから僅か半年で廃止。本当に何ともし難い悔いが残ってしまいました。
 
もうこの景色の中を走って行くナローゲージ蒸機を観ることはできませんが、中国の首都北京の郊外というロケーションにありながら、奇跡的に21世紀まで残っていた“ナローゲージ蒸機の桃源郷”の姿を偲んでいただければ幸いです。
 
訪問:平成16年(2004年)12月
 
最後までご覧いただきありがとうございました。


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