このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
北京の郊外に存在した21世紀の奇跡! 大灰廠のナローゲージ蒸機を振り返ります。 |
西へ西へ走り続けて1時間ちょっと。こちらでご紹介するのは、北京の西の果てにある大灰廠という小さな街です。 大灰廠とは、北京市豊台区にある石灰石を切り出すところの略称で、正式には「首鋼總公司建材化工廠」といいます。ここはこの施設を中心に発展した街で、地名もそのまま「大灰廠」となっています。 ここでは山で切り出した石灰石を、トロッコ列車を使って積み出し場所まで運搬しています。その全長約1.5キロの専用線でトロッコ列車を牽引しているのが、ディーゼル機関車や電気機関車ではなく、なんと、C2型というナローゲージの蒸気機関車なのです! 「北京でナローゲージの蒸機を見られる!」 北京の西の果てにあるナローゲージ蒸機の桃源郷・・・。 そんな夢のような話を聞いてじっとしていられず、ナローゲージのかわいい蒸気機関車に会いに行ってきました。 |
北京の中心部から地下鉄とタクシーを乗り継いで約1時間、大灰廠の集落を通り抜けてさらに西へ。街の西の端にある専用線の基地までやってきました。 基地の事務所の前には、列車の入替えができる配置をされた線路と、トロッコ列車で運ばれてきた石灰石を降ろすための荷降ろし場施設があります。 そして、さらに西へ延びる線路。これが専用線の本線です。ナローゲージの“へろへろ〜”な線路が、ディープな鉄ちゃんの心をくすぐってくれます。 |
私が訪れた日には、ドイツから来たという気合の入ったマニアご一行様も来ていました。 「30分ほど前に1本ヤマに向かって行って以来、全然列車が来ないんだ。きっと向こうで何かトラブルでもあったんだろうね。」 と、英語で教えてくれました。(たぶん、こんな意味だったのでしょう(笑)) |
そんなことを話していると、だんだん聞こえてくる走行音とともに、C2型蒸気機関車が牽引するトロッコ列車がやってきました! 機関車はテンダーを先頭にしたバック走行で、その後に小さな4輪のトロッコが「ゴロゴロ〜」と続いています。“へろへろ〜”な線路にナロー蒸機とトロッコ!このディープさがたまりません!! |
「ゴロゴロゴロ〜」と通り過ぎるトロッコ列車を見ていると、なんと、編成の中の1輌が脱線しているではないですか! 脱線したまま強引に引っ張ってきたようですが、なるほど、これではなかなか来ないわけです。 |
列車が荷降ろし場の手前に着くと、脱線した車両だけ切り離して復旧作業がはじまりました。脱線はいつもことなのでしょうか? 作業員の方々のジャッキアップのテクニックは秀逸で、さっさと復旧作業を済ませると、トロッコ列車は荷降ろし場へと入っていきました。 |
機関車は全部で4両あり、運用中のカマが故障した場合でも、予備機を入れてリカバリーできるようになっています。 機関車の形式はC2型といい、車軸配置0−D−0のテンダー式のカマです。 |
石灰石を満載したトロッコ列車を切り離した機関車は、今度はテンダーの後ろに空のトロッコ列車を連結して、力強いドラフト音を響かせて、もくもくと煙を吐き出して、力いっぱいのフルパワーで再びヤマへと向かっていきます。 カマは小さくても現役蒸機!健気なほどにも見えるその姿は、決して標準軌の蒸機に負けない力強さです! |
大灰廠の線路は、ナローゲージの鉄道では珍しい複線で、その線路を2本のトロッコ列車が何度も往復し、石灰石をピストン輸送しています。 あっ、石灰石を積んだもう一本の列車が、蒸機に牽引されて反対側の線路を走ってきました! |
運行時間は午後2時から深夜までなので、写真撮影をできる時間は午後の3〜4時間前後と限られてしまいますが、沿線にはたくさんの撮影ポイントがあるので、カメラを持ってポイントを探すのが楽しくなってきます。 この写真は、上の『反対側からもう一本!』のカットを撮った後、列車のインターバルを利用し、場所を移動して撮りました。 セオリー通りの編成写真ですが、蒸機が牽引しているトロッコがなんともかわいくていい感じです。 |
編成写真を撮った後、振り返りざまにズームを28mmにセッティングして撮ったのがこの写真です。カマに突き刺さったように写ってしまった電柱がなければ、なかなかいい感じだったかも・・・。 |
丘の中腹に上がると、ヤマから列車がやってきました。 太陽が西へ傾き、夕陽がオレンジ色の光でかわいいナローゲージ蒸機を照らしてくれました。 |
石灰石を積んで積出場へ向かう列車を、丘の中腹から見下ろすように撮ってみました。大灰廠ではおなじみのアングルです。 |
もう少し残っていてくれと期待していた夕陽でしたが、残念ながら山に沈む前に雲に隠れてしまいました。 露出が厳しくなってきたので、絞り開放、スローシャッターで撮ってみました。 わかりにくいですが、バックの景色が微妙にブレています。 |
C2型蒸機が煙と力強いドラフト音を残して、空のトロッコを牽引してヤマへ向かって行きます。 太陽も雲に隠れて、そのまま山に沈んでいきそうです。 ちょっと撮り足りないのですが、もう光線が厳しくなってきました。 さて、そろそろ帰りましょうか・・・。 |
午前中の新鮮な陽光が、おだやかな日差しに変わり始めたお昼。 もし、あなたが北京で予定のない午後を迎える事ができたなら、迷わず車を西へ走らせてみてください。 さぁ、お昼ごはんなんて快餐庁でさっさと済ませて、2環路も、3環路も突き抜けてひたすら西へ。もう、永定河の橋も渡ってしまいましょう! そして、河辺の山の向こう側にある「奇跡の場所」へ・・・・。 北京の大都会から1時間ちょっと。 そこは、ナローゲージの蒸気機関車が牽引するトロッコ列車が走る「小さな蒸機の桃源郷」。 しかし・・・・・。 まさに、21世紀の奇跡の街と呼ぶにふさわしい大灰廠でしたが、 2005年6月をもって、石灰石を運ぶナローゲージ鉄道は廃止されてしまいました。 大都会の郊外に幻のように存在した「小さな蒸機の桃源郷」は、永遠に戻らない夢の世界となってしまいました。 本当に残念です。 訪問日:平成16年(2004年)2月9日 ☆鳴謝: このたび大灰廠を訪問するにあたり、「羊肉のSTEAM IN CHINA」の羊肉さまに、多大なるご教示をいただきました。 おかげさまで、大変有意義な時間を過ごす事ができました。 本当にありがとうございました。 最後までご覧いただきありがとうございました。 |
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