このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
☆初回訪問 〜相生に中国蒸機?半信半疑のまま、18きっぷで西へ・・・〜 |
日本人をはじめ世界各国の鉄ちゃんが、中国の鉄道と聞いて最初に思い浮かべるのが蒸気機関車(SL)でしょう。中国のSL列車は、もくもくと空高く煙を吐きながら、まるで竜のように長い長い列車を牽引する姿が魅力的だということもあるのですが、現在、世界で唯一と言っていいほど多くの現役SLが残っているということで、世界中から注目を浴びています。 その姿を想像しただけで「この目で実物を見てみたい!」と思うのが世界中の鉄ちゃんの悲しい性。しかし、日本からの企画ツアーの料金は20万円以上という高価なもの。もちろん、その値段に似合う内容だということは容易に想像できますが、なかなか我々庶民には手が出る値段ではありません。 「現役のカマでなくていい、動態保存…いや、そんな贅沢も言わない。せめて静態保存でいいから、その勇姿を一目この眼で見てみたい!でも、中国なんて行く金も時間もないし…。」 このように嘆いていた私のような貧乏庶民にとって、日本国内で中国の蒸気機関車を観ることができる夢のような場所がありました。 穏やかな瀬戸内海に面した兵庫県相生市。その南の水辺に位置する相生中央公園がその場所でした。テニスコートのとなりに佇む2台の蒸気機関車こそが、中国の蒸気機関車『前進型』と『人民型』だったのです。 日本に居ながらにして中国の蒸気機関車を観ることができる貴重な場所でしたが、平成18年(2006年)の5月頃、両機関車共に解体撤去されてしまい、その雄姿を観ることはできなくなってしまいました。 このコーナーでは、平成15年(2003年)春に『青春18きっぷ』を利用して相生中央公園を訪れ、『前進型』と『人民型』に会ってきたときの記録を記してみたいと思います。 |
春3月、時速130Km/hで爆走する223系新快速と、のんびりゆっくりの普通電車を乗り継いで大阪から約1時間半。私が降り立ったのは、JR山陽本線の相生駅。駅の地図で場所を確認して、『前進型』と『人民型』が保存してある相生中央公園へ向かいました。 特に急ぐ旅でもないので歩いて向かいました。30分程度で到着するであろうという予想だったのですが、路に迷いながら約1時間かかってようやく相生中央公園に到着しました。 到着してから少し探しました。一体彼らはどこにいるのだろうと・・・。 そうしているうちに、彼らは突然現れました。 公園内のテニスコートの横、公園の西の端に、向かって右側に『前進型』、左側に『人民型』が、2輌並んで待ってくれていました。 思わず夢中で駆け寄って、その勇姿を目の前にしてしばらく放心。 紛れもなく本物の、大陸の広大な大地を駆け抜けていた中国の大型蒸気機関車です。 |
中国を代表する蒸気機関車と言っても過言ではないでしょう。 1−E−1の車軸配置も豪快な大型蒸気機関車『前進型』です。 東北へ向かう夜汽車から観た前進型重連牽引の貨物列車・・・ 蘇家屯機務段(機関区)で観た眼の前に聳える前進型・・・ あの迫力は今でも忘れることができません。 |
後部テンダー車の車軸配置は3−3です。初期に製造された『前進型』では、テンダー車の車軸配置は2−2だったそうです。 |
幹線用旅客型蒸気機関車の『人民型』です。 この『人民型』は、現存が確認されているのは相生中央公園と北京の中国鉄道博物館にある2台だけという非常に貴重な機関車です。 この1163号機は、前面装飾がされて美しいカマですね。 |
後部テンダー車の車軸配置は2−2です。 *** 私は中国で鉄道の旅をしている時に、車窓から眺める程度ながら、現役の『前進型』や、すこし小型の『上遊型』を見たことがありますが、その仲間である彼らを目の前に見ていると、記憶の中に眠っていた彼らの迫力ある勇姿が、鮮明によみがえってくるのです。そしてその場所が、中国ではなく日本であることが、とても不思議な気分にさせるのです。 そう、とても不思議なのです。どうして貴重な中国の蒸気機関車が中国でなく日本に、しかも、なんで相生の公園の片隅でひっそりと余生を送っているのでしょうか? そんな疑問の答えは、彼らの傍に立てられた説明版に書かれていました。 |
なんとなく思い出してきました。確か、今はハーバーランドとして整備されている所にあった神戸港の貨物列車ターミナルみたいな所に標準軌(レール幅1,435㎜)のレールを敷いて、中国のSLを走らせるデモンストレーション・イベントをやってました。 私のある友達は行ったと言ってましたが、残念ながら私は行けませんでした。一人でどこへでも行ける年齢になった今(笑)なら、きっと回数券買ってでも通うこと間違いありません。 昭和58年(1983年)、日中国交正常化10周年のイベントのためにやって来たこの2両のSLが、イベント終了後に、中国古来のカッター艇レースであるペーロン祭りが行われる相生に静態保存されたという、そういういきさつがあったようです。 どうして相生に『前進型』と『人民型』が静態保存されているのか、この説明板を見てようやく謎が解けました。 *** この説明から推測すると、私がはじめて相生中央公園で中国の蒸気機関車を観たこの平成15年(2003年)の時点で、この蒸機たちが相生に来てから約20年が経っていることになりますが、私が驚いたのは保存状態の良さです。 天井の無い雨ざらしの状態で保存されている車両や、廃車されてスクラップされるのを待っている留置車両というのは、使われないまま放置されていると色褪せ塗装が剥げて、1年はおろか、半年もすれば見るも無残な鉄くずのような姿と化してしまうのが世の常ですが、この2輌は違います。約20年の歳月が経ったというのに、両機とも雨による多少の色褪せ、また「前進型」のシリンダーの一部に塗装の剥離があるものの、そこらへんの現役機よりも美しい姿が保たれていました。 このような美しい姿を観ることができ、細かく手入れしてくださっている人々のご苦労と心意気が、ひしひしと伝わってきました。 このときには、いつでまでも、ここへ来れば彼らに会うことが出来るよう、私たち見物客も大切に見守っていかなければいけないという気持ちが、心の奥からこみ上げてきたのですが・・・。 *** 平成17年(2005年)秋、世の中を不安に陥れたアスベスト騒ぎのあおりを受けて、許容値の5倍にもなる量のアスベストが使用されているとの調査結果が出てしまった相生中央公園の『前進型』と『人民型』は、平成18年春にも解体撤去されてしまう運命となってしまいました。 貴重な中国の蒸気機関車だけに本当に残念ですが、事情が事情だけに仕方がありません。 せめて、はじめて相生中央公園を訪れ、不思議な気持ちで中国の蒸気機関車を眺めたあの日の記録を、写真とともにここに残しておきたいと思います。 訪問:平成15年(2003年)3月 ※写真について ここに掲載しました写真は、全て柵の外から撮影したものです。カメラは35㎜一眼レフ、レンズは28㎜〜80㎜のズームレンズを使用しています。 最後までご覧いただきありがとうございました。 |
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