このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 
 
 
 


宣化の上游

河北省宣化で入換作業に勤しむ上游型蒸気機関車を観てきました!


宣化駅の駅名票
宣化駅の駅名票
春節も近くなった2006年の1月12日、ちらちらと降りだした雪はみるみるうちに積もり始め、北京西駅の待合室の窓から見える外の風景もだんだん白く変わり始めた朝、私は友人と共に、河北省の宣化という街で入換運転に勤しむ上游型蒸気機関車を観に行くべく、大同行きのN213次快速列車に乗り込みました。
 
春節の帰省ラッシュがすでに始まっていたので、私たちが乗った硬座車は通勤ラッシュのような大混雑!
 
「これは我慢できないよ!寝台車へ変更しよう!」
 
春節の帰省ラッシュがどんなものか体感するのも良いかと、いつもとはちょっと違う約3時間の汽車旅を楽しもうかと思ってましたが、中国の帰省ラッシュの激しさは、私が思っているほど甘くないようです。
中国人の友人が変更しようと言い出すのですから・・・。
 
「俺はここでもええけど・・・。変更するの?」
「アホか!このままここに乗ってたら、宣化で蒸機観るまでに倒れてまうわ!!」
 
彼がこう言うのだから間違いないでしょう。私たちは彼に従って寝台車に変更することにしました。大混雑の車両を何両も通り抜けて、食堂車にあるカウンターで寝台車への変更をしてもらいました。
私たちが変更したのは、日本のA寝台にあたる軟臥車。4人1室のコンパートメントタイプです。
さっきまでの喧騒が嘘のように静かなゆったりした車内で、やわらかいベッドに横になったりしながら、川沿いを走る豊沙線の景色を眺めつつ、しばし汽車旅を楽しみました。
入換作業中の上游型蒸気機関車
入換作業中の上游型蒸気機関車
やがて列車は宣化に到着。
なかなか写真を撮らせてくれないかわいい列車員の小姐に見送られて(笑)、私たちは宣化駅のホームに降りました。私がホームに降りると、宣化駅のヤードにいる上游型蒸気機関車を車内から見つけて、喜びのあまり先に降りていた友人がすでに大興奮!
 
「蒸機がいる!上游だ!活きている蒸機がいる〜!」
 
石炭の匂い、そして蒸機の“息遣い”・・・。
私たちが乗ってきたN213次の緑皮車の向こう側から、蒸機の気配が伝わってきます。
そして、程なく列車が発車していくと、宣化駅のヤードで入換作業に勤しむ上游型蒸気機関車が、私たちの目の前に現れました!
 
「おぉ〜、蒸機だ!上游だ!」
 
活きた蒸機を観るのははじめてだという友人は、すでに興奮のあまり誰の言うことも聞えてない様子(笑)。
私も活きた蒸機を目の前にして、興奮をおさえられなくなってきました。
 
「さぁ行こう!」
 
しばしホームで眺めたあと、彼の一言を待っていたかのように、私たちは上游のそばへ駆け寄りました。
貨車を押していく上游型蒸気機関車
貨車を押していく上游型蒸気機関車
煙を上げながら貨車を押していく上游型蒸気機関車が、私たちの目の前を通り過ぎて行きます。
 
「おーい君たち、そこで何をやってるんだ?!」
 
蒸機を観て舞い上がっている私たちに、詰所から出てきた係員のおじさんたちが私たちを呼んでいます。
友人がすぐに彼らのところに駆け寄って、事情を説明しに行きました。
私も一緒について行って、ちょっと緊張しながら聞いてました。
 
「私たちは鉄道が好きな“火車迷”で、北京から蒸気機関車を観るためにここへ来たんだ。」
「“火車迷”?北京から俺達の蒸機を観に来ただって?」
「そうなんだ、ただ蒸機を観て、写真を撮っているだけなんだ。怪しいものではないから安心してくれ。」
「君たち本当に北京から蒸機を観るために宣化まで来たのか?いやぁ、物好きもいるもんだ!」
「そうなんだ、ただ蒸機を観たくて北京から来たんだよ。」
「ハハハ、わかったよ!好きなだけ写真を撮っていってくれ!ただ、安全には気をつけてくれよ!」
「ああ、わかったよ!ありがとう!」
 
呼び止められたときには、撮影を拒否されるのかと一瞬ひやひやしましたが、話のわかる人たちでほっとしました。
彼らのお墨付き(?)をいただいたおかげで、引き続き安心して写真を撮ることができました。
 
上游型蒸気機関車
上游型蒸気機関車
さっき貨車を押していった上游が単機で戻ってきました。
2本の白いヒゲが入ったブルーのスローガンボードが美しいです。
 
私は、上游型を目の前でしっかり見るのはこの日がはじめてでした。入換や小運転をメインに造られたカマだということで、日本のC56のようなカマをイメージしていたのですが、予想に反して大きなカマなので意外でした。
大きさも迫力も以前観た前進型には及びませんが、やはり目の前で観てみると迫力があります。
 
この上游1342号機の機関士の皆様には本当にお世話になりました。
おかげさまで素晴らしい思い出ができ、私にとって宣化は忘れることのできない場所になりました。本当に感謝です。
上游の向こうにDF4C・・・
上游の向こうにDF4C・・・
上游が入換作業をしている向こう側を、東風4C(DF4C)牽引の列車が通過していきます。
宣化駅を通過する列車の多くは貨物列車で、フランス製の8K型電気機関車が牽引する貨物列車が頻繁に通過していきます。
 
本線を通過していくディーゼル機関車や電気機関車と、その横のヤードで入換作業に勤しむ蒸気機関車。ちょっと複雑です・・・。
白い煙をもくもくと上げながら貨車を押す上游
白い煙をもくもくと上げながら貨車を押す上游
この日はあいにくの曇り空。しかも、今にも雨か雪が降ってきそうな怪しい天気でした。もし晴れていれば、青空に昇っていく白い煙をきれいに撮れていたかもと思うと、とても悔しい天気でした。
 
生活道路になっている線路際を自転車で走るおじさんは、上游が通り過ぎるまで、しばらく停まって通過待ちです。
立ち昇る蒸気を纏って・・・
立ち昇る蒸気を纏って・・・
帰りの列車の時間が迫ってきました。もう時間がありません・・・。
 
お世話になった機関士の方々にお礼を言って、後ろ髪引かれながら帰る間際に撮ったのがこのカットです。
絞りもシャッタースピードも調節がめちゃくちゃで見苦しい写真になってしまいましたが、私の中では一応、メガロポリス中央駅で出発を待つ「銀河鉄道999」をイメージして撮ったつもりのカットなのですが(笑)・・・。
 
今日の運用を終えて、車庫へ帰るまでの僅かな小休止の間に、立ち昇る蒸気を纏った幻想的な姿を見せてくれました。
 
北京行きの列車の時間が迫ってきました。残念ながら、もう帰る時間です。
私たちは、お世話になった機関士の方々と上游に、何度も振り向き手を振りながら、宣化駅へ向かいました。
帰り間際にもう一枚
帰り間際にもう一枚
宣化駅へ戻り、待合室で帰りの列車を待ちます。
私たちが乗る北京行きのK44次は少し遅れている様子。待合室で待っている間にも、蒸機の音が外から聴こえてきます。せめてホームに行くことができるなら、交代で出てきた別の上游を撮ることができるのに・・・。
 
ちょうど所定の発車時間を過ぎた頃、改札が始まりました。
私たちがホームに上がると、ヤードでは別の上游が入換作業をしてました。さっきまで私たちに蒸機の感動を伝えてくれた1342号機に替わり、スローガンボード未装着の1528号機が運用に入ってます。
冬の夕方、しかも曇天。もう光線も厳しくなってきましたが、列車が到着するまでの間に一枚でも多く撮っておこうと、夢中でファインダーを覗いてました。
 
「あぁ、列車が来たよ・・・。」
 
友人が残念そうに私に伝えます。
汽笛が聴こえる方を見ると、東風4Bがこっちへ向かってくるのが見えます。
そして、25G型客車で編成されたK44次快速列車が入線してきました。
 
「ん〜、残念やけどここまでやな。」
 
列車に乗って、窓の外にいる上游を観ていると、列車はゆっくりと動き出しました。
私たちは車窓の上游を観ながら、北京への帰路に就きました。
 
訪問日:平成18年(2006年)1月12日
 
***
 
私が訪問した平成18年(2006年)1月現在、宣化には10台の上游が配備されていて、入換え作業に使用されているということでした。ディーゼル機関車への置き換えも噂されていますが、しばらくは蒸機を使用するとのこと。
しかし、その噂を裏付けるように、帰り際に宣化駅へ向かう途中、東風7型(DF7)ディーゼル機関車がヤードに入線している姿を目撃しました。
もしかしたら、次に訪れたときには、もう上游の姿は無いかも知れません。
 
☆鳴謝:
このたび宣化を訪れるにあたり「STEAM IN CHINA」の羊肉さまに多大なるご教示をいただきました。
おかげさまで大変有意義な時間を過ごすことが出来ました。本当にありがとうございました。
 
最後までご覧いただきありがとうございました。

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