このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

 
 
 

相生の中国蒸機
☆2度目の訪問 〜蒸機の前で会いましょう〜


平成17年(2005年)秋、日本中を不安に陥れたアスベスト騒ぎの最中、
兵庫県相生市の相生中央公園に静態保存されている中国の蒸気機関車に
基準値を大幅に上回る量のアスベストが使用されているということが判明し、
当地の『前進型』と『人民型』が解体撤去されることになってしまいました。
中国蒸機ファン、また、中国の鉄道を愛好する中国鉄道ファンにとって、
このニュースはあまりにも衝撃的でした。
 
あまりの衝撃と、この知らせをまだ信じられない私は、
一刻も早く相生の彼らに会いたくて、会いたくて・・・。
年末にかけての予定の関係もあって、年内にはその週末にしか時間がとれず、
一人で彼らに会いに行こうと思っていたとき、
中国の蒸機をこよなく愛し、中国蒸機の姿を美しい写真に残し続けている
「STEAM IN CHINA」の羊肉さんと訪問予定日が重なり、
ご一緒させていただくことになりました。
 
「では当日、蒸機の前で会いましょう!」
 
中国蒸機の前でお会いするのを楽しみに、
当日を待つこととなりました。
 
そして当日。
部屋の窓を開けると一面の銀世界!
前夜から降り続いた雪が積もり、まるで雪国のような景色になってました。
 
「羊肉さん、大丈夫やろか・・・。」
 
大阪駅に着くと、その心配が的中。この雪の影響で列車に遅れが発生し、
新快速をはじめとする東海道・山陽本線のダイヤは乱れていました。
しかし、列車の運行そのものは継続されていたので、
姫路行きの新快速に乗り、姫路駅で赤穂線の普通電車に乗り換え、
私は羊肉さんより一足先に西相生駅に到着。
改札を出ると、まだ地面に積雪が残っていました。
雪で滑らないよう注意しながら相生中央公園へ向かって歩き始めた私でしたが、
列車の遅れと足許の悪さもあり、羊肉さんと西相生駅で合流するべく引き返しました。
 
「まぁ、どうぞどうぞ、こちらに座ってお待ち下さい。」
 
駅員のおじさんのお言葉に甘えて、改札口の椅子に座らせていただきました。
駅前の自動販売機で買ったお茶をひと口ふた口飲みながら、
鳥のさえずりと、ゆっくりと流れる時間に身を任せてのんびりと・・・。
 
心地よい時の流れに身を任せていると、
「間もなく列車が到着しますよ。」と、駅員のおじさんが教えてくれました。
駅前に出て見上げると、シルバーボディーの223系新快速が到着。
ちょっと緊張しながら改札口を見ていると、
最初に階段を降りてきたのが羊肉さんでした。
 
「蒸機の前で会いましょう!」
 
思わぬ雪の影響で、この約束は実現することができませんでしたが、
西相生駅で無事にお会いすることができました。
よかったよかったと、お互い胸をなでおろすことしばし、
駅前で合流した私たちは、相生中央公園に向かって歩き始めました。

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前進型蒸気機関車
前進型蒸気機関車
相生中央公園の入口から正面を見ると、前進型と人民型が並んで私たちを待っていてくれました。心配していたビニールカバーもかぶされておらず、威風堂々とした雄姿を観ることができました。まずは一安心。
 
写真は前進型の正面斜め前からのカットです。
初回訪問のコーナーの一枚目と同じアングルですが、その写真と比べると、正面に掲げられていたスローガンボードが外されているのがわかります。
解体への準備が確実に進んでいるのだと実感させられました。
真正面から撮ってみました。
機関車を取り巻く柵を入れずに撮ろうとすると、どうしても足回りの部分を入れて撮ることができません。
でも、なかなか迫力があって、バックの青空もきれいで、自分では気に入ってます。
キャブのアップです。
タブレットキャッチャーが渋い!
 
毎年5月のペーロン祭りのときには、祭りの一環として前進型と人民型のキャブが公開され、内部を見学することができるということですが、春頃に解体される予定とのことなので、もうチャンスは無いようです・・・。
中国の大同機車廠で製造されたこの前進型6200号機は、日中国交正常化10周年イベントのために製造されたカマで、実際には中国で運用に就いたことがありません。おそらくは、全ての前進型の中で最も走行距離が短いカマであろうと思われます。
このような経歴のカマですが、炭水車には、大同機務段に所属することを意味する『京局同段』の所属区表記がありました。
羊肉さん曰く
「前進型のスローガンボードが無いので、中国のどこかの機務段で廃車体を観ているような気分になりますね。」
 
なるほど!
 
そう言われてみればそうです。
スローガンボードが外されていて、確実に解体への準備が進んでいるのだと実感させられたようでちょっとショックだった私でしたが、この言葉を聞いて少しショックがやわらぎました。
 
前進型(手前)と人民型(奥)が、機務段の片隅で並んで留置中・・・。
青空の下、2台の中国蒸機が並んでいる姿を観ていると、本当にそんな錯覚に陥りそうです。
美しく装飾された人民型(RM1163号機)の正面アップです。
 
『乗風破浪☆奮勇前進』
 
〜風雨に挑む船のように、強く勇ましく前進しよう〜
 
紅い鋼鉄のリボンに記された勇ましい言葉を乗せて、中国大陸の果てしなき大地を駆け巡っていた蒸気機関車。
 
爆煙、汽笛、ドラフト音・・・。
 
思いを巡らせると、胸が熱くなってきます。
 
「本当に解体するんですか?」
「はい・・・、解体です。」
「そうですか・・・。」
 
羊肉さんが、この人民型の周りで調査をしていた作業服姿の関係者の方に質問したら、やはり「解体」の答えが返ってきました。
人民型を斜め後ろから・・・。
デフレクターに反射する僅かな光を強調しようと、絞りをちょっとアンダーにして撮ってみましたが、中途半端だったみたいです・・・。
 
私も羊肉さんも、2台の中国蒸機を夢中で撮影。
楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
 
名残惜しいですが、そろそろ帰る時間となりました。
私たちは、日本に居ながらにして中国の蒸気機関車を観ることができることに、やっぱり不思議な気持ちを抱きながら、相生中央公園を後にしました。
 
後ろ髪引かれながら歩く、蒸機の前の駐車場。
歩みを止めて振り返る羊肉さん。
そして、2台の中国蒸機を観ながら一言、
「さよなら。」
私も振り向き頷いて、
「さよなら・・・。」
 
もしかしたら、これで相生中央公園の前進型と人民型とはお別れになってしまうかもしれない。そんな思いで彼らに語りかけるように・・・。
 
不思議な思いと残念な気持ちを胸に、昼下がりの相生中央公園から、雪が融け始めた西相生駅への帰り道を進む私たちでした。
 
(訪問日:平成17年(2005年)12月18日)
 
※写真について
このコーナーで使用している写真は、全て柵の外側から撮ったものです。
カメラは広角35mmまで対応のズームレンズを装備したデジカメを使用しています。
 
最後までご覧いただきありがとうございました。


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