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蕉 門
太田白雪 桃先・桃後
新城はむかし阿叟の逍遥せし地也。なにがし | |
白雪
といふお(を)のこ、風雅の子ふたりもち侍る。 | |
二人ながらいとかしこくぞ侍る。阿叟もその | |
少年の才をよみして、是を桃先・桃後と名づ | |
け申されしを、支考も名の説かきてとゞめけ | |
る也。 | |
其にほひ桃より白し水仙花 | 翁 |
是は水仙の花を桃前桃後といへるより、かく | |
はいへるなるべし。 | |
しのぎかね夜着をかけたる火燵哉 | 桃先 |
節季候のはりあひぬかす明屋哉 | 桃後 |
新城 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
風の香の出かけや軒の菖蒲草 | 白雪
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長者夫婦のむかしたちはな | 支考 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
小僧まて馳走のうへに寐ころひて | 露川 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
一里の中に見ゆる砂川 | 桃先 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
豆畑の痩て乏しき秋のかや | 雪丸 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
また新蕎麥の湯もからぬ也 | 扇車 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
毛氈はとなたのこさるけふの月 | 桃後 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
すへて伏見はこひた風俗 | 白紙 |
三河 | |||||||||||||||||||||||
鶯の相手をかえて椿かな | 白雪 | ||||||||||||||||||||||
竹の月鶯藪と見立けり | 桃後 | ||||||||||||||||||||||
すむ月に垢のぬけたりけしの華 | 桃先 |
眞直に雨の降來る柳かな | 桃後 | |||||||||||||||||
よき月の隱れて居たる青田かな | 桃先 |
三河 | ||||||||||
壱兩の金かうはしき牡丹哉 | 太田金左ヱ門 | 白雪 | ||||||||
せき一つせひてもきへす夜半の霜 | 同 又四良 | 桃先 |
三河 | ||
濱千どり緞子の夜着に聞く夜哉 | 白雪 | |
爐の炭を啼きほそめたる千鳥哉 | 桃先 |
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