このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

俳 書

『其便』(泥足編)


元禄7年(1694年)、刊。 其角 序。 嵐雪 跋。

 長崎勤務の江戸会所商人であったという泥足が故郷の江戸に帰った時の記念集。

   其便に申し送りける。

      月は 幻住庵 にて

三井寺の門たゝかばやけふの月
   芭蕉

木母寺 に哥の会ありけふの月
    晋子

   けふ長崎の泥足めづらしき顔もて、目なれぬ
   うつはものをおくり侍るに

新月の心ばえ(へ)也唐煙筒(からぎせる)
    嵐雪

   舟中吟

名月や眠る人さへ酒とらず
   泥足

初雪や柊の葉の角ばかり
   彫棠

   花は

花はよも毛虫にならじ家桜
   嵐雪

   東叡山明鏡坊より花送られしに

文を跡に桜さし出す使哉
   晋子

   花影とある詩を

花は江に香を追ふ魚は飢ぬべし
   泥足

花守の心にほむる女かな
   秋色

   「林中不薪」と『文選』に

ぜになくや山時鳥町外レ
   晋子

其 便 下

   両国橋上吟

千人が手を欄干や橋すゞみ
    晋子

   并に舟中の吟

此人数(にんず)船なればこそ凉み哉
   仝

   嵯峨に籠りて

清滝や浪に塵なき夏の月
   芭蕉

初雪や人の機嫌は朝の中
    桃隣

真夜半やふり替たる天の川
   嵐雪

    深河大橋 半かゝりける比

初雪やかけかゝりたる橋の上
   芭蕉

   愛 蓮

唐蓮の華待顔や椽(縁)の先
   助叟

   浅茅が原にて

刈残す月は有けり夜田の道
   泥足

   古関越にて

牛の子や杭にすり付むらしぐれ
   泥足

   久留米

蓑ばかり見る水無月も田面哉
   西与

   文月の初、船路に赴

七夕の夜よ楹に哥かゝん
   泥足

    上野 にて

小坊主や松に隠れて山桜
   晋子

   巴峡の猿を

声かれて猿の歯白し峯の月
   晋子

   江戸を立日

後の月浅草川に残しけり
   泥足

   難 波

鶯もふできに成て山ざくら
   之道

   天王寺

咲花も乱より後の古び哉
    洒堂

   伊 勢

山鳥の樵夫を化す雪間哉
    支考

   膳 所

鯉鮒も青葉につくか城の陰
    正秀

談合の温飩(うどん)にしまる後の月
    曲翠

   洛 邑

青柳や覆ひ重るいと桜
    去来

駒牽の木曾や出らん三ヶの月
   仝

近付に成りて別るゝ案山子哉
    惟然

ひだるさに馴てよく寐る霜夜哉
   惟然

   此集を鏤(ちりばめ)んとする比、芭蕉の翁は難波
   に抖数(藪)し玉へると聞て、直にかのあたりを訪
   ふに、晴々亭の半哥仙を貪り、畔止亭の七種の
   恋を吟じて、予が集の始終を調るものならし。

此道や行人なしに秋の暮
   ばせを

 岨の畠の木にかゝる蔦
   泥足

月しらむ蕎麦のこぼれてに鳥の寐て
    支考

 小き家を出て水汲む
   游刀

天気相羽織を入て荷拵らへ
   之道

 酒で痛のとまる腹癖
   車庸

片づかぬ節句の座敷立かはり
    洒堂

 塀の覆にあかき梅ちる
   畔止

線香も春の寒さの伽になる
    惟然

 恵比酒の餅の残る二月
   亀柳



菜畑に花見顔なる雀かな
   芭蕉

俳 書 に戻る



このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください