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2009年12月版、「成田スカイアクセス」の現況

成田高速鉄道アクセス (成田スカイアクセス/成田新高速鉄道)の工事の様子について過去分は下記の通りご紹介しております。

2005年8月
2006年8月
2006年12月
2007年8月
2007年12月

2008年6月

2008年9月
2008年12月
2009年3月
2009年6月
2009年9月

2009年度第3四半期の「四半期報告書」となる12月時点での現況です。
これまで変わり映えのしないタイトルが、と繰り返してきましたが、今回からタイトルが変わったことでもわかる通り、2009年12月16日、遂に京成電鉄から、成田新高速の愛称が「成田スカイアクセス」となること、ならびに停車駅と上限運賃が発表になり、来年7月の開業も同時にアナウンスされたことで、事態は大きく動きました。

工事のほうは2009年12月9日に全線のレールをつなぐ締結式が行われ、あとは電気、信号関係の工事を残すのみとなり、地上から見る感じは今後は北千葉道路関係以外は変化がほとんどないと言って過言ではないかと思います。

一方で京成本線ルートとの運賃格差がつくのかどうかと様々な憶測を呼んでいた部分についても一定の回答となる事象が見えてきており、今回のレポートは工事進捗からこうした制度面への対応に関連する部分に軸足を移すことになります。

駅名表示もお目見え

※特記なき写真は2009年11月、12月撮影

※成田新高速の進捗に関しては下記もご参照ください。

2005年8月
2006年8月
2006年12月
2007年8月
2007年12月

2008年6月

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2009年6月
2009年9月
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2010年3月
2010年6月
2010年7月


●「成田スカイアクセス」に決定
2008年12月から翌年1月にかけて公募していた成田新高速鉄道の愛称名が ようやく決まりました
成田湯川駅の名称が10月の公募から半年で発表になったのに対し、それから半年以上音沙汰がなかったので、まさか「北総線」が圧倒的な支持を得てしまったとか、二進も三進もいかない事態になって頭を抱えているのでは、といった憶測を呼んでいましたが、とにもかくにも新しい路線に新しい名称を添えることができました。
まあ応募総数のうち「成田スカイアクセス」が何票で、という発表でないあたり、微妙な選定ですが。

同時に路線名としては京成高砂−成田空港間を通して「成田空港線」と命名されており、新線区間の事業者は成田高速鉄道アクセス、プロジェクト名は「成田新高速鉄道」、路線名は「成田空港線」で愛称が「成田スカイアクセス」と、「七つの顔を持つ男」とまではいきませんが、よくもまあいろいろな名前をもったものです。

さらに「成田空港線」の上限運賃が発表されましたが、高砂−空港第2ビル−成田空港間で既存の京成本線の運賃と異なる運賃となっており、そうなると現在の施設に「成田スカイアクセス」が乗り入れるだけだと運賃を識別することが不可能なため、空港第2ビル、成田空港の両駅の構造に必然的に変更が生じるはずです。

特に2009年11月14日に新しい上りホームが開業した空港第2ビル駅は、少なくとも現時点ではそうした分離構造になっていないだけに、開業わずか半年でさらに手直しとなるのか、いろいろな憶測を呼んでいます。

今回はいつもの現況に加え、見えてきた諸問題に関する問題提起編を加えた二部構成でお届けします。


◆第1部・現況編

●まずは日暮里から
「スカイアクセス」関連の事業として、2層構造になる大掛かりな改造工事を進めていた日暮里駅は、前回のレポート直後の2009年10月3日から地上3階の下り新ホームが開業しました。

線路自体は1本ですが、ホームを線路を挟んで2面設けて、片方を一般列車、片方をスカイライナーなどライナー列車の専用ホームに充てています。

改良工事のせいもありますがコンコースが覆いかぶさって薄暗くて狭かった従来ホームと違い、京成船橋駅と同じようにアーチ型の頭上を広く取った空間になり、2面のホームということもあり明るく仕上がっています。

JR側のコンコースも新しくなっており、連絡改札を経由して下りホームに出るとこれまでの日暮里とは思えないような出来ですが、京成の工事がひと段落した後、撤去した下り線を利用して常磐線ホームを拡幅する工事に入るため、連絡改札の真ん前を常磐線の階段がふさぐなど、やや動線が微妙な部分もあります。

新しい発車案内。左端に微妙なスペース

連絡改札には新しい発車案内が。左端にある微妙なスペースは隠された「凡例」と合わせて考えると「経由」の表示でしょうか。成田新高速は「スカイアクセス」と決まりましたが、本線経由はどう案内するのでしょうか。「本線」が素直ですが、メインとなる空港行きは「本線」でないというのも意外と不案内ですし。

ライナー中間改札付近

改札を抜けるとライナー乗り場への中間改札が右手に。連絡改札手間のほか、ここでもライナー券が買えます。
改札の中には待合室があり、相変わらず窮屈なレイアウトながらもかなり分かりやすくなった印象です。

右手のライナー専用ホームのほうが広い?

気になるのはその新ホームで、本線の事実上のターミナルということでここでの乗車が多いのですが、一般列車ホームのほうが圧倒的に狭いのです。千住大橋での通過追い越しをはじめとして、優等列車への狙い乗車も多々あるなか、ホームでの滞留をある程度織り込む必要があるのに、敢えてライナーホームよりも狭くしたのはなぜでしょうか。
待合室というバッファー的空間があるライナーホームとのバランスがどう見ても悪いです。

●北総線内〜印旛日本医大
深夜帯に新AE系の試運転が行われるなどいよいよという感じのする線内ですが、改良工事もひと段落して見た感じは平穏です。
そうした中、新鎌ヶ谷駅では本線側の工事を夜間に実施しており、最終と始発電車が副本線を使用するという案内が出ていますが、錆取りを兼ねた変更ということでしょうか。

発着番線変更のお知らせ

2009年12月16日に発表されたリリースにあった停車駅は、スカイライナーが日暮里−空港第2ビル間無停車で、一般特急が免許申請時の停車駅に東松戸を追加して、高砂−東松戸−新鎌ヶ谷−千葉ニュータウン中央−印旛日本医大−成田湯川−空港第2ビル−成田空港となりました。なお一般特急は上野、都交の両方に運行される表示になっており、その先京急線方面への直通もあると思われます。

印旛日本医大駅の6灯式の出発信号機は相変わらずそっぽを向いていますが、引き上げ線のほうは入換信号機を使ってそれなりに使っているようで、日中でも引き上げ線に入線している姿を見ることがあります。

引き上げ線に都交5300系
(後方が成田空港)

このあたりの変化はあまりなく、北千葉道路の路盤が舗装されており、千葉ニュータウン萩原線との交差部分のほか、手前の鎌刈北交差点側の形状もはっきりしてきました。

鎌刈北方向への北千葉道路路盤
(左後方が京成上野)

交差部分から先、架線が張られているのは前回確認済みでしたが、信号機が上下とも点灯しており、いつ電車が走ってきてもおかしくない感じです。

信号機が点灯中(後方が成田空港)

松虫高架橋のあたり、「スカイアクセス」を見下ろす「絶好ポイント」なんですが、北千葉道路のラインが予想以上に高くなるようで、少なくとも印旛日本医大側を向いての俯瞰は難しくなりそうです。

線路を遮る擁壁(後方が京成上野)


●印旛捷水路〜印旛沼橋梁
このあたりも架線が張られました。
セクション部分のエンドは通常の在来線使用なら重りで張ると言う感じですが、160km運転対応ともなるとかなりの重装備で、吊橋の端部のようにしっかり張っています。

エンド部はしっかり...

捷水路にかかるトラス橋には「印旛捷水路(橋梁)」の文字が見えます。そこから印旛沼橋梁へ続く高架橋もすっきりと連なっています。

印旛沼橋梁を含む高架橋(右手が成田空港)

甚兵衛大橋から成田市側に回り込むと、R464との交差付近の水道管移設のための迂回が復活していました。そして目につくのが北千葉道路の工事ですが、高架橋の南側に集中しています。線路を挟んで2車線ずつの整備となるはずで、印旛日本医大から瀬戸にかけては両側での整備が進行していましたが、瀬戸から印旛捷水路にかけては進捗が見られず、印旛沼橋梁のあたりからは南側で集中工事という様相です。

印旛沼橋梁の工事も線路の南側のみ
(右手が成田空港)


●甚兵衛機場〜八代
ある意味この12月で大きく変わった感じです。
というのも、12月初旬に訪問した際には鉄道工事がひと段落した格好でしたが、半月ほどたって再訪すると、北千葉道路の工事が急ピッチで進んでいるのです。

北千葉道路の橋脚が増えました
(左後方が成田空港)

このあたりは政権交代に伴う来年度予算の配分方針の見直しに際し、現状の進捗度合いを判断基準にすると言われているので、全線で工事が佳境、という実績を作っているのでしょうか。特に目覚ましいのは「スカイアクセス」の線路をくぐり北側に並行する区間になってからで、橋脚などの下部工が一気に進み、さらに松崎トンネルもどうやら着手したようで、「スカイアクセス」に並行するトンネル躯体の設置に取り掛かりだしたようです。

松崎TNでも北千葉道路の工事が
(後方が京成上野)


●松崎トンネル〜成田湯川駅
ここを抜けたら成田湯川駅となる松崎トンネル手前には成田湯川駅の場内信号機が見えます。本線(通過線)が黄色、副本線(ホーム)が赤を現示しています。

成田湯川駅はホームに点字ブロックも貼られるなど艤装の最終段階という段階。
見ているとやはり安全側線は上下とも無いようで、停車列車の追い込みにかかる時間ロスが心配です。

駅らしくなった成田湯川駅(後方が成田空港)

見ていて気がついたのですが、上下線のホームとも折り返し用の出発信号機が設置されています。成田空港方面は単線になるので道なりですが、京成上野方面は複線ですから渡り線が設置されるようです。

上りホームに下り向きの出発信号機
(後方が成田空港)

この出発信号機設置の意味ですが、非常用なのか、それとも早朝深夜に成田湯川折り返しの設定があるのか。
空港の発着自体は時間が限定されていますが、空港通勤需要がありますし、同時に都心方向への通勤需要などもあるので、両方向に区間列車の設定があってもおかしくありません。

アプローチ道路も建設中

成田NTの外周道路方向から成田湯川駅へのアプローチ道路の拡幅も進行しており、駅舎正面の駅前広場につながる様子が見て取れます。
ホーム上屋はやや短いようで、ホーム自体は我孫子線の交差地点の上にまで伸びているようです。
高架下に当たる駅舎を見ると、ホームに上がるエスカレーターも見えます。エスカレーター、階段はコンコースから両方に上がる設置になっています。

成田湯川駅(右手が成田空港)


●大谷津〜土屋
単線になってすぐのところに、6灯式信号機が背中合わせに設置されています。成田湯川駅方面を剥いたそれには2灯式の補助信号があり、下り線への逆線進入を想定しているのでしょうか。成田湯川駅上りホームの下り向き出発信号機の存在と合わせ、柔軟に対応できるようになっているようです。

6灯式が背中合わせ(右手が成田空港)

大谷津運動公園のあたりは北千葉道路の用地が整地されており、ここのトンネルはいつ着工でしょうか。

運動公園手前の北千葉道路用地
(後方が京成上野)

R408との交差点付近を見ると、ここもすでに用地は確保されており、R295への接続まではここで平面交差で終わる格好になりますが、すぐ南の土屋交差点が渋滞の名所だけに、交差点への負荷が高まることが心配です。

R408との交点(後方が京成上野)


●空港第2ビル駅〜成田空港駅
2009年11月14日に新上りホームが開業し、これまで1面1線を上下共用という苦しいレイアウトから解放されました。
空港2駅に共通した無機質なデザインから一変して、ほどほどに色をあしらったデザインは、新しい日本の玄関口となる意気込みでしょうか。

通路にデザイン

出色なのは、構造上の都合で既存ホーム(新下りホーム)との隔壁を全部取りはらえなかったことで生じた何ヵ所かの「通路」を門に見立てて、「和紙の門」「漆の門」などと題して、テーマに応じた色やデザインを配したことで、マイナス面になりがちなこの手の通路を、色調の違う上下ホーム間のゲートとしてうまく演出しています。

新下り線ホームは無機質

JR線とサイズが一緒のためホームが長いことを活かして実施しているスカイライナーと一般列車の「縦列停車」は新上りホームでも継続されましたが、18m車14両分しかないため、中央で2両分被る格好になっています。

停車位置が被る案内

京成上野側に一般列車、成田空港側にスカイライナーとなっていますが、壁面の乗車位置案内を見ると、成田空港側に一般列車用、京成上野側にスカイライナー用の停車位置が準備されています。

上野方の一般列車停車をライナー側から見ると

本線経由のライナー列車はモーニングライナー以外にも日中の設定を予定していることを京成電鉄側はアナウンスしているのでライナー、一般列車とも両ルートに設定されることは確定していますが、「成田スカイアクセス」、本線経由とも種別で縦列停車をするのなら必要のない準備工事であり、これは経由に応じた縦列停車としか言いようがありません。

成田空港側のライナー停車を一般特急側から見ると

なお新上り線からは「スカイアクセス」への進入路を分岐した後、本線上り線に接続しており(新下り線から上り線への進路は撤去)、本線の単線区間は空港第2ビル−成田空港間のみになっています。

新上り線。分岐は「スカイアクセス」方面

成田空港から空港第2ビルに向かうと分岐手前で「1」の案内表示が輝いていることから空港第2ビル駅は両ホームとも両方向への進路設定が可能か、と思いましたが、新上り線から下り方向、新下り線から上り方向の出発信号機が見当たらず、上下を峻別して使用するようです。

そして終点成田空港駅には1面1線の新ホームが増設されますが、下り方エンド付近で工事の様子が見えており、完成後は隔壁を取り払うと思っていたら、なんと隔壁が修復されました。
JR線側とは見通しが効いて、新ホームとの見通しが効かないと言うのも変な話ですが、どうしてこういう構造になるのでしょうか。

再建された擁壁


●空港第2ビル駅発車案内器の謎
そして11月の段階ではなかった設備ですが、12月下旬になると上野方2ヶ所に発車案内器が準備されました。
まだ「調整中」の張り紙があり稼働はしていませんが、なんか意味深な表記や「隠し」があります。
逆に成田空港方には1箇所だけ準備工事らしき箇所がありますが、それは「スカイアクセス」「京成線」の使い分けなのでしょうか。

とにもかくにも案内器にある「経由」の欄が一番眼を惹きます。種別の前、最先頭ですから。
しかし物理的分離をするという前提であれば全く意味のない表記であるわけで、どういう意図なのか。

そして和文で4文字、英文で17ないし18文字分を隠している箇所。
見えている箇所は「日暮里、上野、押上方面」「Nippori, Ueno & Oshiage」で、「隠し」はその前の行になります。
物理的分離なら「本線経由」「船橋経由」でしょうか。でも「Via Keisei Line」「Via Funabashi」だとしたら「隠し過ぎ」です。

発車案内器

「スカイアクセス」経由の一般特急は羽田空港系統と言う説を踏まえると、「羽田空港」「For Haneda-Airport」はどうでしょうか。字数的には最もフィットします。
行灯式の方面案内が「日暮里・上野・日本橋・東銀座・京急線方面」なのに、押上で終わっているのも変ですし、行灯式にある「for」がないのもまた変ですからそこには日暮里同様まず「経由」の案内が先に立つのですが、経由別の縦列停車ならあまり意味がないわけです。

◆第二部・問題提起編

●「二重運賃」と強気の料金
現在京成上野から成田空港まで1000円の運賃に対し、印旛日本医大までは1070円です。京成高砂からも空港まで890円に対し印旛日本医大までは820円と、印旛日本医大から成田空港まで延長したときの運賃体系が既存の北総線の運賃体系とどう整合性を取るのかが注目されていました。

特に北総線の「高額運賃」に対する値下げを訴える住民団体は、本線経由と同額になると、北総線に対する線路使用料が適切に支払われないと言う懸念を示すとともに、北総線の運賃値下げを訴えてきました。

北総線の運賃問題についてはこの稿で取り上げるテーマでないので論評は割愛しますが、北総線の運賃は森田県知事の仲介もあり、県や沿線自治体、そして京成電鉄の負担による5%値下げの実施を「スカイアクセス」開業に合わせて5年間の期間限定で行うことで妥結しましたが、この値下げを織り込んだとしても、本線経由と同額にするには新線区間の取り分が無くなる、という非現実的な運賃体系になるしか道はなかったのです。

そして2009年12月16日に発表された運賃は何と二重運賃でした。
上野からの全線で200円、高砂からでも60円の格差がつきました。面白いのは空港第2ビル−成田空港間も60円の格差がついたこと。
逆に北総線内は現状の運賃と同額であり、上記の5%値下げに応じて引き下げが行われます。なおこの値下げは印旛村以西の沿線8市村が原資を拠出していることから、成田湯川など新線区間はカヤの外になります。

さらにスカイライナー料金は現状の920円を1200円と280円の値上げとなり、運賃と合わせて1920円が2400円と480円の値上げは、圧倒的な時間短縮効果を持ってしても強気に過ぎるのではという懸念すら起きるものです。

●物理的分離へ
上野〜高砂、空港第2ビル、成田空港の各駅で現在「スカイアクセス」経由の列車と運賃徴収を分離する構造になっていません。
このままでは200円高い運賃を設定しても、本線経由の乗車券を購入したり、ICカードで乗車したら本線経由で計算することになります。特にICカードの場合は、規則として本線経由での計算となるので(自社−他社−自社の乗車の場合は自社経由で計算)、大手を振っての乗車です。

もちろん京成、北総で値下げ原資を負担する「特定運賃」を導入して同額にするという手もあるわけで、物理的な分離が難しいとしか言いようがない現状を見ると、特定運賃の採用しかないという判断に傾いたのです。

ところが白井市の 柴田圭子議員のブログ によると、同議員が12月20日に空港第2ビル駅を視察し、駅員から「成田スカイアクセス」と本線を分離すると言う説明を受けたとあります。

これは重大な情報であり、「二重運賃」を担保するために物理的分離を行うことが確実になったのです。
そしてその前提で空港2駅を見ると、いろいろな問題が出てくるのであり、「成田スカイアクセス」の利便性に水を差しかねない事態となったのです。

●物理的分離は出来なくはない
新ホームを設ける成田空港駅は従来ホームと新ホームを使い分けることで分離は出来そうですが、空港第2ビル駅が難物です。
縦列停車をするにしても、新上りホームの有効長が足りず、ホーム中央で2両分重なると言うのが問題です。「スカイアクセス」と本線の列車の到着のたびに柵を移動させるというのも非現実的ですし、2両分のドア締め切りを行うとしたら新AE系と新3050系、さらに「スカイアクセス」経由が可能な全編成にドアカット機能が設置されている人う要がありますが、どうなのか。(本線経由をドアカットにするのは京成の全8両編成と、都交、京急の乗り入れ対応編成全部に設置する必要が生じる)

ライナー8号車が右手だが正面に一般列車の乗車位置

ただ、下りホームはさらに延長工事がなされているなど完全分離が可能であり、到着時に総てのドアから降車させるという意味では対応が楽です。逆に上りホームは開いているドアから乗せるだけなので、ドアカットがあっても実は案内上はあまり問題はありません。(空港第2ビルで降りる客がいれば話は別だが)

1面1線時代はここで区分していた

また、これまで空港2駅降車時の煩わしさの象徴であったセキュリティチェックが「スカイアクセス」開業を機に廃止される方向という報道もあることから、廃止されるセキュリティ関係のエリアを活用できるかもしれません。

空港第2ビル駅のセキュリティエリアへの通路


●分離における空港第2ビル駅の問題
上記の柴田議員の情報によると、京成上野方を本線乗り場とし、京成上野方のエスカレーター、階段を専用とし上がったところに中間改札を設置し、本線経由を識別するようです。
確かに中間改札を設置するとしたらそこしかないのですが、「中間改札」を抜けた地点、つまり、今の改札があるエリアの混乱は現在の比ではなくなる可能性が強いです。

このあたりに中間改札か

セキュリティエリア廃止でJRとの完全分離は可能になりますが(現在はJR降車改札→京成コンコース経由京成降車改札→セキュリティエリア)、そうなるとJRの乗降客がウナギの寝床のような現乗車コンコースで錯綜するわけで、そのリスクを承知して分離するのか。
そして京成側も、降車客と乗車客がこのエリアで錯綜し、さらに本線経由と「スカイアクセス」経由で惑うの同エリアとあっては、狭いコンコースでの混乱が厳しくなりそうです。
本線経由の乗降を現セキュリティエリアに新改札を設けて分離する手もありますが、そうなると「スカイアクセス」の乗降が現改札通路で輻輳すると言う上記JRと同じ問題が発生します。

また、基本的には「スカイアクセス」は入場したら後ろに戻る方向の階段を降りるのが便利ですが、普通は目の前に順向きに降りるエスカレーターや階段に行くわけです。しかし降りるとそこは本線経由の乗車位置であり、新上りホームではなく下りホーム経由で迂回する必要があります。

ここでUターンして後方へ向かわせるのか

その時下りホームの幅員を割いて通路を設置することになるため、このままでは本線下りの降車客にしわ寄せが来るわけです。下りホーム延長による完全分離がこの構造変更を織り込んでいなければ厳しいことになりますし、織り込んでいたとしてもいったん下りホームを通って成田空港寄りの「通路」経由という大回りもどうも不細工です。

現状ただでさえ一般特急への乗客を前方に誘導するだけでも四苦八苦している状態で、11月の開業後から訪れるたびに新しい誘導用の案内が増えていると言っても過言ではない状態です。
物理的分離をすればかえって分かりやすくなる可能性はあるにしろ、案内や誘導に相当な準備や対応が必要です。

「分離」は社員の説明であれば分離は既成事実かもしれませんが、少なくとも空港2駅の工事の基本設計は分離を前提においていないことが明白であり(特に第2ビル駅の有効長などの構造。上下ホーム間の開口部も分離を想定していない位置にある。「スカイアクセス」対応のエレベーター工事は同時竣工ではなく遅れている)、取って付けたような変更が利用者にどう受け止められるか、懸念材料です。

●成田空港駅の問題
一方成田空港駅は新設ホームを「スカイアクセス使用としたら、「スカイアクセス」側に中間改札という空港第2ビル駅と真逆の構造になるしかなく、経路把握のデータ取得(特にエラー発生時が怖い)とその処理が心配です。
ちなみに成田空港駅は新ホーム側先頭側に新ホーム専用改札を置けばいいように見えますが、現在の京成線改札の隣にあるのは地上への階段であり、それを閉鎖、撤去しないと新改札は設置できません。
その工事に取り掛かっている形跡はなく、よって中間改札経由現改札という構造になるしかありません。

中央の出札を挟んで右が改札、左が例の階段

ただ、現状の一般特急のダイヤを考えると、本線経由が1面1線の新ホーム使用になる可能性もあり、そうなると常に本線側に中間改札とある意味すっきりはしますが、1面1線での折り返しは本線ライナーの運転や、朝晩の通勤特急や快速といった規格外の列車の運転が苦しくなる可能性があります。(これは「スカイアクセス」が新ホームを使う場合にも言える話)

新ホームへの通路と思しき箇所

また、乗車券を購入して改札を抜けたあと、特に一般特急に関して本線経由とスカイアクセス経由を天秤にかけられない(ホームに出てみたら座れなくて、次の特急に、というようなケース。時間帯によっては空港2駅で座席が埋まります)というフリークェンシーを殺してしまうサービス面での問題も指摘できます。

なお、「スカイアクセス」と本線を峻別した場合、空港2駅を分離すると、「スカイアクセス」の列車を宗吾に取り込むとき、必ず回送になります。まあ現在は朝の下り1本にしか存在しないケースですが、成田もしくは芝山千代田行きを受けて宗吾始発の空港行きを運転すると、終点成田空港では絶対に「スカイアクセス」のホームに入らないと折り返し「スカイアクセス」経由の列車になれません。

そうなると高砂以西からこの列車に乗ると「スカイアクセス」経由で徴収になってしまいますから、こういう宗吾とのやり取りは必ず回送にならざるを得なくなります。

これはレアケースですが、このほか成田空港で「スカイアクセス」と本線の折り返しを峻別しないといけないというのも不便な話です。渡航客のピークに合わせた「スカイアクセス」の対応は「スカイアクセス」経由でないと送り込み、引き上げができない(もしくは宗吾や成田からあえて回送で送り込む)というのもどうでしょうか。

●物理的分離と二重運賃は受け入れられるか
二重運賃採用による値上げは、確かに時間短縮効果は絶大ですが、それが一般特急で20%、スカイライナーで25%の値上げを正当化できる理由になるかどうか。特に一般特急は発表された停車駅だと成田湯川での交換、退避による長時間停車が不可避との説もあり、値上げに見合う時間短縮が期待できません。

京成の空港輸送の屋台骨が実はスカイライナーではなく一般特急(これは渡航客に限定してもそういう数字が出ている)という事実はどうして生じたかを考えると、今回の値上げは京成を志向するという流れに棹差すものといえます。
これでは「一人勝ち」どころか暗雲すら湧き起こっているといっても過言では無いかもしれません。

値上げによる増収に対し、分離に関する設備投資の負担、値上げによる価格競争力の低下による転移の減少というマイナスがセットになるわけで、さらに既存利用者に対する「大幅値上げ」の悪印象、後述するように空港2駅の煩瑣な構造による「不便さ」の悪印象も考えると、そこまでして「増収」を図るメリットがあるのかという疑問が消えません。

少なくとも足下のビジネス需要を中心とした渡航需要の冷え込みを考えると、円高によるとこう意欲がそれを補っているとはいえ、それがためにより価格に敏感な層のシェアが増加しているわけで、そこで「値上げ」というのはどうなんでしょうね。

よしんば将来の「値上げ」を考えているにしても、例えば「お試し価格」として従来と同額、もしくはスカイライナーは若干の値下げ(極端な話、特急料金の端数「20円」をカットするだけでも「話題」になれます)という戦略的誘導をして、まず「スカイアクセス」の利便性を定着させてからの話でしょう。

そもそも山手線の駅から最短30分台、一般特急を合わせると最大毎時9本以上(スカイライナー、スカイアクセス経由一般特急、本線経由一般特急が毎時3本ずつに、本線ライナーが入る)というフリークェンシーというのは、ややもすると20分台のモノレールや京急と比べて最早遜色ないと言い切ってもいいわけで、にもかかわらずメディアはともかく、いまだに「識者」までが「浜松町からモノレール15分」「成田空港まで小1時間」という羽田沖合展開前のカビの生えたような固定観念で論じている状況をいかに打破するかも、京成に課された課題なのです。

「スカイアクセス」の工事に関しては今回でほぼひと段落と言えますが、ハードの次はソフト面での対応がテーマになります。
それを考えたとき、一つの節目となった今回のレポートで大きな問題提起に至ったことは、開業を7ヶ月後に控えた段階としては決して軽くはない事態です。


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