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「成田スカイアクセス」、開業レポート

成田高速鉄道アクセス (成田スカイアクセス/成田新高速鉄道)の工事の様子について過去分は下記の通りご紹介しております。

2005年8月
2006年8月
2006年12月
2007年8月
2007年12月

2008年6月

2008年9月
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2010年6月
2010年7月


2010年7月17日、成田スカイアクセス(成田新高速/京成成田空港線)が開業しました。

これはただ印旛日本医大−土屋−空港第2ビルの20km弱の新線にとどまらず、都心−成田空港70km弱の画期的新ルートの登場、確立であり、運営する京成電鉄にとっても昨年2009年に100周年を迎えたのに続き、「次の1世紀」を切り拓く大きなイベントになりました。
京成の歴史を大きく変えるこの新線、同時に実施された新ダイヤとともに気になる部分、どうなるか興味深い部分は山のようにあるのですが、そうした分析は時間をおいて行うことにして、まずは開業当日の様子をお届けしましょう。

160km通過中(成田湯川)

※写真は2010年7月17日撮影

※成田新高速の進捗に関しては下記もご参照ください。

2005年8月
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●まずは北総線区間
地元の鉄道関係のイベントとしては、それこそ一生の間にもう二度とないかもしれない規模の出来事ですが、とはいえ予定もあって朝から晩まで乗り歩くというわけもいかず、午前中から夕方までの訪問になりました。

改正の目玉、新型スカイライナーも外せないところですが、どうせ乗るのなら利用実態も確かめたいし、ということで、今日は見るだけということにしました。
見どころはいろいろある中、まず朝方は北総線内を見て回り、午後から羽田空港からのアクセス特急に一気乗りして成田空港に向かい、空港2駅を見て成田湯川に立ち寄って帰宅という行程。

ということで新京成で高架化工事が進む新鎌ヶ谷に来ると、早くも新ルートを試すのかキャリーバッグを持った旅行客が何人か下車。EVはありますが仮設構造ゆえ通路は狭く、ESが無いので大荷物だと大変そうです。

北総線内の乗り降りに使えるのでこの土日のNT中央でのイベント「ほくそうサマーフェスタ」に合わせて2日間限り発売のフリーきっぷ「ほくそうサマーフェスタきっぷ」を1000円で購入。
実は後述する理由で定期券売り場が長蛇の列で、記念きっぷは売切の表示ですが、何かあるのか、と引きかけたのですが、改札で聞くとそこで売ってくれたのでひと安心です。

新鎌ヶ谷駅頭

取り敢えず千葉NT中央へ。
一陣の風のように駆け抜けたスカイライナーに改めて「開業」を実感し、やってきた京急1500系の印旛日本医大行きに乗車。
NT中央は「ほくそうサマーフェスタ」の会場とあって、9時前の段階、改札につながる自由通路状をメイン会場として出店や舞台のセッティングが最高潮です。地元CATVでしょうか、報道陣も最後の打ち合わせ中です。

ほくそうサマーフェスタ会場(NT中央)

発車案内に「通過」があるのは習熟運転中もそうでしたが、今度はそこに「アクセス特急」の文字も。
やってきたアクセス特急は下り2番列車の乗り返しで京急600系。字幕車は京急のみですが、「(飛)アクセス特急」の字幕の色はオレンジでした。

「アクセス特急」の文字が(NT中央)

北総線の中では格段の利用者数のNT中央ですが、その中でもアクセス特急への狙い乗車は顕著のようで、見送って乗った無退避の普通もそれなりに乗りこみましたが、数が違います。
こうして見るとアクセス特急への狙い乗車は時が経つにつれてどうなるのでしょうか。

その普通で移動したのは白井。
市議会による値下げ原資を織り込んだ予算案否認など、今回の改正に冷や水を浴びせた格好の街ですが、そのせいなのかスカイアクセス開業関連のイベントや看板は駅前に見当たりません。
駅構内の各駅共通の横断幕と、これも各駅にある航空機の写真や模型の展示企画。それくらいです。

いつもと変わらぬ駅頭でした(白井)


●新鎌ヶ谷、東松戸
足の便もよく見通しが利くせいでしょうか、撮り鉄諸氏の人出も多い新鎌ヶ谷です。もっとも、脚立を持ち込んで撮影していた人もいましたが、罵声が飛ぶこともなく、地元の中高年や親子連れなど、純粋に電車を見に来た、乗りに来たと言う人も多いです。

スカイライナーを見る人、撮る人

「マニア」は10時から駅南のイオン横の交通広場で開催の「新鎌ケ谷駅フェスタ」に向かったようで、出店の鉄道会社のブースには開始前から「濃い」集団の人だかりが出来ていましたが、鉄道会社のほうも「濃い」出品ですからどっちもどっちです。

新鎌ケ谷駅フェスタ会場

ここで少しスカイライナーやアクセス特急ウォッチング。

アクセス特急の交換(新鎌ヶ谷)

日中ダイヤへの移り変わり時期だけに、当駅で上下アクセス特急交換というレアシーンがあったりしましたが、さてスカイライナーの通過で撮影しようとしたところ、速いです。速すぎます。昔の銀塩の一眼レフならともかく、コンデジだとある程度感というか一か八かでシャッターを押すしかありません。

走り去るスカイライナー(新鎌ヶ谷)

移り変わり時期のため25分(高砂口では28分)空く時間帯で、いったん西白井まで戻る余裕があることが分かり西白井へ。ここも白井同様開業景気が見えませんでした。

東松戸へ移動した電車、矢切でアクセス特急の通過待ち合わせなんですが、新鎌ヶ谷ではスカイライナー退避だけを案内して高砂へは後のアクセス特急が先着と案内しません。西白井の発車案内もそうで、このあたりは詳細な表示をする京成系とは思えない雑さです。

結局東松戸到着時にようやく通過追い越しを食らうことが案内されましたが、すぐの発車となる東松戸ですから、そのわずかな間に降りるかどうかの判断というのは酷です。

東松戸はラッチ内コンコースで地元学校のコンサートが間もなく開演という感じ。
駅には「祝・成田スカイアクセス 一般特急停車」の横断幕が出ています。

東松戸駅頭

ここから羽田空港への移動に際しては、7月16日開業の市川リムジンを試すこととして、武蔵野線、総武緩行線経由で移動しましたが、到着した武蔵野線からスーツケースやキャリーバッグを持った旅行客が何人かおり、こちらも新ルートを早速試す層のようです。

●アクセス特急へ
市川リムジンは行徳地区での迷走?を堪能した後、湾岸線の渋滞にはまってしまい羽田まで2時間コース。おかげで予定より1本遅いアクセス特急になってしまいました。さらに遅れたらその後のアクセス特急は京急車が続くため、危うく3050系での試乗が出来なくなるところでした。

アクセス特急は京急、都交線内ではエアポート快特であり、高砂折り返しの都交、京成線内普通と合わせて20分ヘッドの設定です。今回改正で京成線内がアクセス特急と普通になりましたが、それまでは佐倉系統の快速。そういう意味では5月16日改正の段階から京急線内に大きな変化は行先を除けばありません。
ですから羽田空港駅の表示も「(飛)快特」であり、唯一行先が「成田空港」となり、さらに「成田スカイアクセス線経由」と入っているのが目新しいものの、ごちゃごちゃして見づらいです。

(成田スカイアクセス線経由)が目新しい


昼下がりともなると「鉄」の試乗も一段落のようで、品川方面先発とはいえ10分程度時間がある段階では車内はガラガラでした。
発車間際になって座席の半分以上が埋まる程度。そうした中にどうも北総線内が目的地の家族連れがいて、この家族にとってはそれまでのエアポート急行→普通が革命的なスピードアップになっており、改正さまさまでしょう。

「成田スカイアクセス線経由」を表示中

その3050系、アクセス特急用に新造された京成の最新通勤車ですが、基本的には3000系の増備車の扱い。とはいえ3050系の通称通り番台区分があり、外見も違うしカラーリングも違うため、新系列車という位置づけでいいでしょう。

飛行機柄の拡大

座席は飛行機柄のモケットですが、国際線ゆえか今や少数派になりつつある4発機、しかもジャンボでないスタイルがモチーフです。ドア上にはLCDの案内表示機がありますが、他社なら2基据え付けるところを1基にして、空いたスペースには広告というのはなんか中途半端です。
なお種別・行先表示は「(飛)快特|成田空港」ですが、交互表示で「(飛)快特|成田スカイアクセス線経由」と出ます。

3050系車内(羽田空港)

そのLCDですが、停車駅案内や広域路線図などを表示、となっているのですが、停車駅案内が、社局を越える部分で他社区間のそれが出てこない(薄くなってしまう)のはなぜでしょうか。

品川で多くが下車。都交線内では大門でさらに下車。後ろ寄りの車両だったので、先頭部に乗り換え通路がある三田での降車は目立ちませんでした。
ぽつぽつとは乗って来ますが、浅草までといった線内利用がメインです。
押上から京成線になりますが、車内は閑散としたままです。青砥では発車案内器が近かったので改正バージョンを見ましたが、経由欄に「成田スカイアクセス線」「京成本線」が入り、さらに行先欄に「北総線経由」「船橋経由」と入ります。

経由表示が入った発車案内(青砥)

ちなみに3050系で表示されている経由表示との交互表示ですが、3700系のフルカラーLEDも同様に交互表示を始めており、「特急|京成本線経由」という表示が見られます。

「京成本線経由」の表示(空港第2ビル)


●成田スカイアクセス線内
上記の広域路線図などは、公式の路線名に忠実に、高砂から成田スカイアクセス線とし、印旛日本医大までは北総線の線と二本立ての表示です。
それが顕著に出たのが車内放送で、スカイアクセス線内の停車駅案内の際、通過駅も示すのですが、その時、「北総線のXX駅は通過です」と、同一線路ながら「他社」線にある駅は他社駅のように扱っています。これは英語も同じで、「●●, ●● on Hokuso line」と峻別しており、徹底しています。
一方で上記の発車案内器や、空港2駅の表示では、「北総線経由」とあるわけで、別線扱いなのか同一線なのか統一されていません。

さて高砂を出てもしばらくはまったり進みます。それが豹変するのは江戸川橋梁のあたり。新柴又あたりまでは従前の3灯式信号のままですし、開通当初の騒音問題もあるのか、高速運転を明らかに都内では手控えています。
グイグイと加速してトンネルに入ってもスピードを落としません。そのまま猛スピードで地下の矢切を通過しましたが、トンネル風の問題は克服しているのでしょうか。日中ダイヤなのでここで通過追い越しとなり、東松戸で片接続になります。

3050系側面


東松戸、新鎌ヶ谷と停車して乗降相半ばという印象。一期線区間に入ると堀割の中を猛然と進みますが、これまでならここでノッチオフ、というスピードからさらに加速するわけで、走行音も予想以上に響く感じです。

NT中央ではイベント参加がてら試乗という感じの乗客が乗り込み、印旛日本医大でも試乗と思しき乗客が乗り込んでおり、それなりの乗客のまま新線区間に入ります。

京急600系のアクセス特急(NT中央)

新線区間に踏み出すと、お立ち台とも言える側道や跨線橋に多くの人影が見えます。
しかしスピードを上げながら通り過ぎた「俯瞰ポイント」に人影はなく、徒歩範囲で見に来ているということでしょうか。瀬戸のトンネルはあっという間。吉高高架橋から捷水路に向かいます。ちなみに吉高の台地から見下ろすポイント、今月のダイヤ情報で好撮影地として紹介されていましたが、現時点でも柵があって入れない、視界が狭いのですが...

R464との交差(甚兵衛大橋付近)

捷水路のトラス橋が流れ去り、地上からだとアーチが美しい印旛沼橋梁は車内からだとどこが起点で終点か分かりません。
これまで足掛け6年間、クルマや徒歩で見てきた沿線を車内から見下ろすのは新鮮です。そして炎天下、また寒風吹く中を1日かかりで歩いた沿線があっという間というのも複雑です。

甚兵衛機場を過ぎ、八代高架橋のエリアに入ると早くも減速。成田湯川駅の副本線入線に備えてのものです。
松崎トンネルは最徐行という感じで、成田湯川に到着です。

●成田湯川を見る
今回の新線区間で唯一の新駅。アクセス特急のみの停車となり、朝は遅めで夜は早仕舞いという営業形態は、実は成田NTの一角という立地を考えるとあまりにも消極的です。

成田湯川の駅名標

アクセス特急はここでスカイライナーの退避を行うため長時間停車になるのが特徴で、成田空港行きの場合、これまでのかっ飛びぶりが、ここでの長時間停車を境に退避に交換待ちと時間を空費するステージに変貌します。

新幹線タイプの中間駅

駅は本線となる通過線を挟んで相対式ホームがあるいわゆる新幹線タイプの配線。下りホームから上り列車が出せるように片渡りが松崎TNの中にありますが、上記の通り成田湯川折り返しの設定は見送られています。利用が伸びれば早朝深夜に折り返し列車の設定があるかもしれません。

松崎トンネル方を見る

新幹線タイプの配線のおかげでスカイライナーは160kmの最高速度で通過します。需要がどうせ少ないと高をくくって建設コストを削減したのか、ホーム端部は幅は狭いしエンドまでの距離も短いしと撮影には不向きな構造で、当日は狭いスペースに鈴なりの状況でした。

ホーム端部は狭い

そしてお目当てのスカイライナーの通過は、狭いスペースから見えることは見えます。
しかし速いのなんの。新鎌ヶ谷でも撮影が困難でしたが、成田湯川はその比じゃありません。金属音を轟かせて現れた純白と藍色のボディがあっという間に駆け抜けます。後述のとおりいったん下車して撮影もしてみたんですが、対向ホーム上から試してみても、先頭部を撮影し、振り返って後追いを、という時間の短いこと...

成田湯川駅改札

ここは帰りがけに降りてみましたが、3階のホーム、2階に中間コンコースを置き、1階の改札フロアという3層構造。2階は吹き抜けで豪華な印象ですが、よく見ると高架橋のコンクリートの構造物を化粧板などの目隠しもしないで取り込んだ構造であり、バブル期に流行ったコンクリート打ちっぱなしをイメージさせる構造といったら褒めすぎでしょうか、「吹き抜け」も高架線の床板をそのまま天井にしたが故の高さであり、案外と質素です。

2階コンコース改札口から2階コンコースへ

駅前ではイベントがあったようです。午前中を中心にお神輿や山車の巡幸などがあったようで、夕方前には後片付けのトラックがいるくらいでした。
宴の後、という雰囲気の駅頭には記念乗車券や補充券が売り切れたとの張り紙があり、ここも「鉄」が大挙して押し寄せたんでしょうか。
開業前に訪問した際には雑然とした感もあった駅前広場脇のバス待機場ですが、舗装され、杭とトラロープでそれなりに仕切られました。かつてのように事務所や洗車設備などが復活するかどうかは微妙ですが、バス路線自体が駅に入るようになっており、「湯川車庫」ではなく「成田湯川駅」として拠点化するのでしょう。昔からここからのバス便は便利であり、アクセス特急(もしくは折り返し便の設定)次第では成田NTの玄関口として機能するポテンシャルは十分です。

バスも乗り入れた駅前広場

●新根古屋など
さて成田湯川を出ると単線です。成田湯川駅から見通せるかと思ったのですが、駅東側の切り通しの部分がピークになっていて見通せません。

成田湯川を後にして

距離的には成田湯川を出て少し進むと下り線側を本線にした分岐器で単線になりますが、ここが上越新幹線下り線からの北陸新幹線分岐とならんで日本で最も制限速度の高い38番分岐器が採用された箇所で、160kmでの分岐側通過が可能です。新幹線はそれでも速度制限になりますが、最高速度が160kmのスカイライナーは減速することなく通過できます。見た感じは上り線は分岐で左に振って、右カーブが入るので、制限がかかりそうに見えるのですが。

38番分岐器

Y字分岐にしてさらに緩和せず、下り線を直進にした単純な単複にしたのは、将来の複線化を想定しているのでしょうか。
北千葉道路はこのエリアでは北側(下り線側)を並行しており、大谷津運動公園など南側(上り線側)に将来の増設を考慮した微妙な空間が見て取れます。
土屋の既設線への合流も、南側の1線分を残して接続していますし、トンネルや堀割がネックの既設線はともかく、土屋までの複線化は比較的簡単そうですが、だったら最初から、という思いもあります。

土屋手前の単線高架橋

大谷津運動公園の中を突っ切り、土屋で既存高架橋に入ると後はJR成田線の脇を並走するだけ。JRが長年単線でしか利用してなかった区間ですからこの区間を「新線」というのはちょっと後ろめたいですが、JRが京成側の路盤を使っていた旧根古屋信号所は畳んで空港方にある堀之内信号所になり、京成も若干空港寄りに(新)根古屋信号所を建設しているなど、レールを敷くだけでなく手もそれなりに入っています。

なお新根古屋も今回の改正で重要なポイントとなりました。単線の制約、京成本線側との調整もあり、かなり苦しんだようですが、アクセス特急とスカイライナーの2本交換には分かっていながらも退屈でした。

単線区間があり、折り返し時間の確保が必要といったダイヤ編成上、空港でのネットダイヤが必須となっており、スカイライナーおよびシティライナー、京成本線特急、アクセス特急はそれぞれ綺麗な20分ヘッド(もしくは40分ヘッド)になっています。ここから逆算しての設定になるため、そのしわ寄せをアクセス特急が一身に被る格好です。

新根古屋での交換

新根古屋は下り線側の一線スルーですが、そうした苦悩を反映させて交換する列車の停車・通過位置もダイヤに応じてまちまちです。
例えば試乗した下りアクセス特急は本線(下り側)に入り、アクセス特急、スカイライナーの順で交換して出発しましたが、帰りの上りアクセス特急は本線に入り、交換した下りのアクセス特急は副本線(上り線)に入っています。

想像するに、下りのアクセス特急と交換した上りアクセス特急は、ここで成田湯川で抜いていったスカイライナーとも交換するので、スカイライナーを本線とするため副本線に入ったのでしょう。ただ、後続の下りアクセス特急も本線に入り、今度は上りスカイライナーまで交換するので、上りスカイライナーは副本線通過となったようです。新根古屋の分岐は成田湯川のように高速対応ではない(ただしノーズ可動式)ので、速度制限がかかります。

●空港第2ビル
100分の長旅もようやく終わり、成田空港です。スケジュールの関係上、アクセス特急のゴールを目前にして空港第2ビルで下車しました。
自動放送を聞いていて気になったのですが、これまで確か成田空港駅は「Narita Airport Terminal」という表現だったのに、どうも全体的に「Narita kuko station, passenger(airport?) terminal 1」というようになっているようです。
駅名や線名の英訳について、日本語読みに忠実にする傾向にありますが(「Sobu Kaisoku Line」など)、慣れでしょうが、ちょっと違和感を感じました。

まずは分離柵をスカイアクセス側から見ます。もちろん本設となった分離柵は、ステンレス製の腰があまり高くないもの。上り線ホームのテープにあった高さ120cmというところでしょうか。

分離柵(空港第2ビル下り線)

進入禁止のマークとともに、「これより先は京成本線(成田スカイアクセス線)ホームのため通り抜けできません。」という注意書きが柵とホームに貼られています。
柵自体には扉が付いており、駅員が行き来できるようになっています。
この分離柵ですが、成田空港、空港第2ビルの計4ヶ所に設置されていますが、ほぼ同じ構造です。空港第2ビルは柵のすぐ手前までいけますが、成田空港は余裕をもった停車位置ということもあり、手前に「入れません」の表示があり、ギリギリまで進入できないようになっています。

「門」の封鎖状況

空港第2ビルの分離関係では、まず「門」の封鎖は背の高い(160cmくらい?)のステンレスの枠にアクリルの目隠しを付けた柵が立ちました。
焦点の上りホームは分離柵設置位置に他と同じスタイルの柵が設置されています。
そして例の発車案内器の表示ですが、下記の通りになっています。

背後の壁面にも同様の注意書きその英文表記


(京成本線経由)
「今度の電車は経路が異なるためご乗車できません」
(スカイアクセス経由)
「この電車は 成田スカイアクセス線 (飛)アクセス特急 北総線経由羽田空港行きです」

これの和英反転表示です。(スカイライナー、シティライナーは見ていませんが、シティライナーは同じでしょう)

アクセス特急の場合はその英文表記

京成本線経由の発着を見ましたが、スカイアクセス側のホームに京成本線経由である旨の注意放送が流れて、発車案内器の表示があるだけで、普通にドアが開きます。駅員は京成本線側にいるようで、車掌が目視はしていますが、誤乗対策になるかどうか。

ドアはすべて開く(柵の向こうはスカイアクセス)

いや、意図的な誤乗もあるかもしれませんが、その対応はどうなんでしょうか。2本ほど発着をみましたが、空港第2ビルで降車する乗客が何人かいました。無料バスがあるとはいえ時間がかかるので(特に1タミ→2タミは東成田駅経由)この区間だけの利用もあるので、、1本待ってスカイアクセス経由に安く乗る、という目的とは断定できませんが、降車の際は前6両からというように徹底してもらいたいですね。
京成的にはわざわざ1本落として10分待ってスカイアクセス経由にされても、実用ではないだけに「まあご苦労さん」といったところでしょうから、「不正対策」は特段しないのかもしれませんが。

スカイアクセス側の案内京成本線側の案内

コンコースの中間改札も本格稼働。成田空港駅もそうですが、京成本線の青、スカイアクセスのオレンジとも、光源を内蔵して光らせるとかなり派手というか、妖しい感じすら醸し出しています。特に改札回りはオレンジ、青の競演となっており、目が疲れます。

中間改札付近改札付近

中間改札の使用開始で、きっぷ等の取り忘れに注意を促す看板も目立ちます。

きっぷの取り忘れにご注意

そしてホームが縦列使用となったことから、成田スカイアクセス線の列車は京成本線ホームを、京成本線は成田スカイアクセス線のホームを通過することから、通過列車に注意を促す表示もできています。

「通過電車です」(成田空港駅)


●成田空港など
終点の成田空港駅に移動します。
成田空港駅ではスカイライナーを一目見ようとする「鉄」だけではなく普通の乗客や家族連れで黒山の人だかりでした。上記のようにオレンジと青がくどいほど輝いていますが、もともとダウンライト系の落ち着いた雰囲気をコンセプトにしていただけに、誤乗対策とはいえ取って付けたようなド派手な表示は雰囲気を大きく損なっています。ただ公共交通の本旨を考えると、見栄えは二の次ですからやむを得ないのでしょうが。

スカイライナーに群がる人々

案内優先と言えば、成田スカイアクセス開業に合わせ、空港側も案内を一新しており、通路の床や柱に出発ロビーは緑、到着ロビーは黄色を使った誘導表示を貼っており、案内を強化しています。

空港側の案内も(第2ビル)

成田空港駅は既存ホームの縦列分離使用のほか、新設の1番線をアクセス特急専用ホームとしています。(一部例外あり)
そのため動線が複雑になるため、1番線との分岐点はひときわ派手な感じです。

中間改札1番線への分岐

帰りもアクセス特急なので1番線に向かうと、オレンジのゲートを過ぎると落ち着いた雰囲気です。

1番線側からコンコースを見る

分岐地点にはアクセス特急のみの発車案内が出ていましたが、都交線内通過運転(エアポート快特)の場合は「(飛)アクセス特急」、そうでないもの(都交線内各駅停車、上野行き)は「アクセス特急」と峻別してますが、日本人でも分かりづらいのに、英文もわざわざ飛行機マークで峻別しているのはどうなんでしょうね。

アクセス特急にも違いが...

LCDモニターの付いた京急600系でしたが、最初は「鉄」ばっかりだった車内も発車時刻の頃には渡航客がそれなりに乗ってきて、空港第2ビル発車時点では座席がさらっと埋まる感じ。
こうして見るとアクセス特急も人気では、と思うでしょうが、どうも「先発の一般列車」としての認識のようで、先発が京成本線経由ならそちらに乗るのかもしれません。

1番線に向かう空間

成田湯川での下車を挟んで2本のアクセス特急に乗車したのですが、どうも本線経由の一般特急と誤乗したような客も少なからずいて、携帯で迎えの人に連絡する人や、車内の停車駅案内に見入る人(京急車はスカイアクセス開業に対応していない!)がちらほらいました。
特に成田湯川を出て、「印旛日本医大を出ると、次は千葉ニュータウン中央」と言われてはじめて決定的に違うことに気が付く人が多いようです。

1番線ホーム停車中のアクセス特急

最後に、シティライナーですが、「Skyliner」「Airport Express」の表示を消されたAE100系による運行が始まりました。
字幕は赤紫の専用のものが用意されましたが、利用のほうはさっぱりです。
「最終」の発車となる92号を見ましたが、空港第2ビルの時点で前5両は無人。船橋で客扱いをする7号車を中心に30人以上は乗っており、空港第2ビルでも20人以上が乗り込んで、乗客が指定席の号車に集中したため発車時刻を過ぎてしまうほどで、船橋需要の底堅さを実感するとともに、しかし1個列車を成立させるほどではないという現実も突きつけられます。

停車中のシティライナー

かといって今まで1個列車の2割程度の需要をそのまま切り捨てるには惜しいわけで、成田需要の掘り起こし、さらには佐倉など京成本線での追加停車など、中途半端ではあるが新しい試みのこのライナーをどう育てるか。もう少し様子を見たいものです。


以上、開業当日の様子を駆け足で見て回ったのですが、利用実態、特にアクセス特急とシティライナーについては後日おちついてから改めて見る必要があるでしょう。早くも渡航客の定着が見て取れましたが、学校によっては夏休みに入った3連休初日という特異日であり、またこれを言ったら実も蓋もないのですが、スカイライナー利用客にとっては「経路変更」「スピードアップ」に過ぎず、開業したからと言って大きな変化があるわけでもないでしょう。

強いて言えば今回は見ませんでしたが、早朝にアクセス特急が設定されたことで、早朝のエコノミー派の利便性が大幅に向上したことは特筆できるでしょうか。
これまで空港8時着の特急までは、津田沼から各駅の快速だけで、さらに早朝の時間帯は普通電車を乗り通す渡航客も少なくなかっただけに、空港に7時前に着くアクセス特急の設定は何気にポイントが高いです。

オールスターキャスト(空港第2ビル)

最後に、「成田スカイアクセス」開業のもう一つの側面をご紹介してレポートを終わりにしましょう。

空港2駅で京成本線とスカイアクセスを分離した一つの原因が、北総線の運賃とのバランスです。京成本線経由と同一にしたら、印旛日本医大からほとんど上がらないのは北総線から搾取している、という批判があり、新線区間でもそれなりに徴収するように運賃設定した結果の「200円の格差」です。

同時に北総線の運賃を県や地元の市、京成電鉄が補助を出して値下げすることになり、今回改正から適用になったのですが、白井市議会はこの値下げ案に対する反対決議を行うなど、地元の歩調も一致していません。

しかし、普通運賃の値下げ幅こそ平均4.9%で、通勤定期に至っては1.1%という渋い値下げですが、それまで地元自治体のみの補助で実施されてきた通学定期の25%の割引が、全線で適用されるようになったことは大きいです。
まあそれなりの企業ならいかに北総線でも会社が負担する通勤定期に対し、各家庭が身銭を切る通学定期の負担は大きく、それがゆえに子供の進学に制約がかかるという笑えない事態が現実にあっただけに、今回の措置は非常に大きな一歩です。

定期券は値下げ後に購入を...

「4.9%」だけをクローズアップして、次代を担う子供たちへの「25%」まで拒否して良いものなのか。
この日の朝、当日から新運賃での定期券への切り替え開始ということで、私が実見しただけでも新鎌ヶ谷、千葉ニュータウン中央の定期券売り場に出来た長蛇の行列は、その九分九厘が学生層であり、いかに今回の値下げの効果が大きいかを物語っていると感じます。

定期券売り場の長蛇の列(NT中央)

最後は重い話題になりましたが、沿線風景は華やかな開業景気だけではないことを伝えたかったのです。






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