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スカイライナー試乗と開業効果の検証

成田高速鉄道アクセス (成田スカイアクセス/成田新高速鉄道)の様子について過去分は下記の通りご紹介しております。

2005年8月
2006年8月
2006年12月
2007年8月
2007年12月

2008年6月

2008年9月
2008年12月
2009年3月
2009年6月
2009年9月
2009年12月
2010年1月
2010年3月
2010年6月
2010年7月
2010年7月開業

2010年7月17日に開業した成田スカイアクセス(成田新高速/京成成田空港線)。
開業当日の様子は既にご報告しておりますが、その際は日程、行程の関係で開業最大の華である新型「スカイライナー」には乗りませんでした。
その後なかなか試乗する機会に恵まれませんでしたが、ようやくこのほど試乗する機会を得ました。

あわせてE259系に統一されたNEXも試乗しましたが、それに先立ち、NAA(成田空港会社)から成田スカイアクセス開業後の空港アクセスの動向についても発表されています。その速報値を見ると、必ずしも順風満帆と言えない状況や、新ダイヤでの変更が奏功しているかどうか微妙な点も浮き彫りになっています。

こうした分析も含めた試乗ルポを今回はお届けします。

宣伝攻勢をかけるが(空港第2ビル)

※写真は2010年8月、12月撮影

※成田新高速の進捗に関しては下記もご参照ください。

2005年8月
2006年8月
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2007年8月
2007年12月

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2008年9月
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2009年6月
2009年9月
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2010年1月
2010年3月
2010年6月
2010年7月
2010年7月開業


●開業から5ヶ月あまり
2010年7月17日の開業から5ヶ月あまり。成田スカイアクセスの開業ブームも落ち着き、成田空港のアクセス交通として地道に輸送しているという感じになって来ました。

開業当日の様子を前回お届けしたほか、折にふれて特にアクセス特急の様子を見てきましたが、実見としての印象としてはアクセス特急の苦戦と一般特急の健闘、そしてスカイライナーの定着に対し、シティライナーの大苦戦という感じです。
こうした様子はいろいろな媒体でも見聞きするものでしたが、公式発表として、2010年10月29日に成田空港会社から「成田国際空港アクセス交通実態調査」が発表されました。
この数字については後で詳しく触れるとして、なにはともあれスカイライナーへの試乗がまだであり、ようやく年の瀬の12月になって試乗したのです。

実は天の邪鬼なことにシティライナーを先に試乗しており、その空きっぷりに危機感すら覚えるほどでしたが、今回のスカイライナー試乗も年末休暇の直前とあって動きが少なく、復路にあわせて試乗したNEXともども利用実態という意味ではちょっと淋しかったことも事実です。

●スカイライナーを見る
12月半ばの土曜午後、という非常に中途半端な時間帯になってしまった今回の試乗ですが、京成上野駅に入るとそれでもライナー券売り場や券売機、外貨両替コーナーには人だかりが見えます。
賑わうターミナルという意味では日暮里から乗車すべきですが、せっかくの初乗車なので、始発から終点まで全区間と思い立ったが故の上野乗車です。

日中は20分ヘッドの合間にシティライナーが入る

私も券売機でライナー券を購入しましたが、シートマップで選択できる座席は空席が目立ち、結局当日私が乗車した車両は10人もいない状態で、上野の様子や日暮里到着の状況からすると、全体で100人乗っているかどうか、という感じです。

折り返しの電車到着前にホームに立つと、所在無げにたたずむ渡航客が数人。一方5ヶ月が過ぎてもまだ試乗熱があるのか、それっぽい人も親子連れやいわゆる「鉄」系を含めてちらほらという状況で、00分-40分の繰り返しとなる日中の40分発なので、もう少しいるかと思いましたが少なかったです。

シティライナーとの邂逅

折り返しとなる電車が到着すると車内整備。自動回転するリクライニングシートが1つおきに動く様子は見ていて面白いです。
そのうちに50分発となるシティライナーが到着し、上野駅でつかの間の邂逅ですが、シティライナーの動向が予断を許さないだけに、いつまでこのシーンが見られるのでしょうか。

サービスコーナー周り。AEDはカウンターの下

上野乗車にしたのは、大勢乗り込んでくるであろう日暮里までの間に車内をひと当たり見て回る魂胆もありました。
まあ上下に3つ並ぶ円形窓のあるサービスコーナーも小ぶりで、カウンターの下にAEDがあるのは今時の装備です。客室とデッキを隔てる自動ドアに窓が無く、金緑色の雲のようなデザインは屏風か襖のような印象で、これも山本寛斎による風と凛を和風にアレンジしたデザインということでしょうか。

デッキ部分のデザインは秀逸

床が青系統の濃淡で波目模様となり、星を散らしたかのようにアクセントが入る様は市松模様のアレンジで波を表現したとありますが、波であれば夜光虫が漂う水面に浮いている感覚、それよりは星空をイメージするデザインです。

客室イメージ。貫通路に窓が無いのも落ち着いた雰囲気

座席は薄めで華奢に見えますが、座ってみると悪くは無くこれで十分という印象。リクライニングはそれなりに傾きますが、傾けると却って姿勢が辛く感じるのは航空機のエコノミーの座席と似ている?まあ「36分」の乗車ならこの程度で良いでしょう。
座席のデザインもスタイリッシュですが、テーブルの留め金のストッパーがカチカチとうるさいのは要改良でしょうか。
気になったのは窓が汚れていて点々とした染みが付いていること。愛でるような車窓ではないとはいえ、やはり気になります。

薄く見えるがスタイリッシュな座席


●いざ成田へ
そうこうしているうちに出発時間です。
恩賜上野公園の地下をうねるように走る区間はスピードも上がりません。博物館動物園駅の廃墟が闇の中に沈むのを見て、道灌山下寛永寺坂駅の廃駅を過ぎると地上に出ます。5複線のJR線をまたぎ、新しい高架線に取り付くと日暮里駅の3階ホームです。

ここで車内はうってかわって、と言いたいところですが、上野の比ではないものの、絶対数としては少ない乗客です。
指定された号車でないところに並んでいたのかホームをキャリーバッグを引きずって走る人もいますが、手近なところで乗ってしまえばいいのに。反対側の一般列車ホームの乗客の視線も感じつつ停車時間が過ぎてゆきます。

荷物置き場はオープンな雰囲気

日暮里を出ると車内放送が入り、いよいよスタートという感じ。
それでも都内の区間、特に隅田川を渡るまではカーブが多くスピードが乗りません。デッキへのドア上部にはモニターがあり、停車駅の表示と各種の案内、CMが流れますが、目新しいのは「経由線のご案内」と称してこれから進むルートを徐々にオレンジ色で塗っていく仕掛け。そして前面展望も高砂通過時と印旛沼橋梁付近で流れました。

経由線のご案内

日暮里から9分ほどで青砥通過。全区間に占める比率を考えると青砥までで9分というのはかかり過ぎという印象を持つ人も多いですが、あと27分もあると考えるとそんなもんかという気もします。
複雑な分岐をまたいで北総線に入る高砂での前面展望は良い企画です。そして北総線の高架に入りましたが、開業当初からのいきさつがまだ生きているのか、江戸川橋梁までは全くスピードが上がりません。当初は矢切退避の普通が頭を押さえているのかと思いましたが、先行の普通を追い抜くのは新鎌ヶ谷であり、あの減速は「騒音対策」しかありえません。

一変したのは江戸川橋梁から。圧力を感じるくらいの加速でスピードアップ。地下に入り矢切を猛スピードで通過してからは130kmの高速クルージングです。1期線区間に入ると堀割の中を行く独特の眺め。風景が風景なだけにあまりスピード感を感じませんが、並行する北総アウトバーンことR464を行くクルマがあっという間に後ろに去っていくことでスピードに気が付きます。

NT中央からは北千葉道路の工事が目に付くようになり、そして印旛日本医大を通過。ここから160km運転です。

●やはり速い160km
ニュータウン萩原線のアンダーを過ぎるとさらなる高みへ向けての加速です。ここから土屋まではわずか10km、4分程度で走る計算です。
四半期ごとに歩いたりした沿線が走り去るのは開業当日にアクセス特急から見た風景と一緒ですが、スピード感は段違い。印旛捷水路を渡るトラスもあっという間に流れ去り、モニターには前面展望が映し出され、160km運転の景色をご堪能あれということでしょう。

前面展望放映中

八代あたりのGG信号が見えるとアクセス特急なら減速にかかるころですが、こちらはスピードを維持して松崎TNをあっという間にパスして成田湯川を通過しました。
単線になる38番分岐も本線側なので衝撃もなく、人家が増えてきたなと思うと土屋で、ここからはJR線と並行です。

この電車は成田湯川での追い越し、根古屋での交換もなくちょっと興ざめですが、ちょっと期待していたJR線との並走もなく、堀之内を過ぎるとトンネルが連続し、空港第2ビルへ。
都計は確かに日暮里から36分。ショーウィンド的な存在ではなく、大多数の列車が36分運転というところに京成の自信を感じます。従来のスカイライナーは「51分」といっていましたが、実は朝一の船橋、成田通過便だけでしたから。

上りシティライナーとの交換なので若干長めに停まったあと、最終コースへ。アクセス特急がチラリと見え、こちらは従来からのホームを区切った4番線に到着しましたが、飽きさせない道中でした。

●空港を見る
帰りは新宿近辺で会合があることもあり、乗り比べという意味でNEXを利用しました。
取り敢えず指定券を押さえて後は空港見物。あとで詳しく述べるNAA発表の数字が京成の伸び悩みを示しており、空港でのアピール不足を指摘する声もあることから、その辺りを重点的にチェックしたのです。

「スカイライナー」が目立たない京成カウンター

まず言えることとして空港に降り立った人へのアピールという意味では、NEXのほうが圧倒的に目立ちます。
JRはみどりの窓口、改札口、旅行センターとも「成田エクスプレス」を前面に押し出し、しかも赤で目立つ表示です。京成も設備的には同じ位置、数があるんですが、「スカイライナー」が前面に出ていません。アピールという意味で決定的なのは旅行センターの使い方で、京成はおなじみの「たびるーむ」ですが、JRのそれがNEX発売所と化しているのに対し、京成のそれはスカイライナーの切符を売っているかもわからず、立ち寄る人もいません。

左JRで右京成だが...

空港構内でのポスター掲出などは禁止されているのか、鉄道駅の案内に従って構内に来てからが勝負になっているのですが、せっかくある設備を活かしきれていないのは大きいです。
あとは成田空港駅(第1ターミナル)で、北ウィングから来ると、後から設置した発車案内が元からある「京成線のりば」の案内を隠してしまい、「JR線のりば」しか見えなくなっているのも気になります。

「京成線のりば」が見えない...

確かにスカイライナーなどの時刻は見えますが、一見さんには分かりづらく、「JR線のりば」という単純な表記に従えば目立つNEXの案内というコンビネーションに負けてしまいます。
このようにせっかくのツールが生かし切れていないというのも、京成の伸び悩みの原因ではと指摘せざるを得ない、という結論に至りました。

目立つNEXの宣伝

処方箋としては、まずスカイライナーを前面に押し出すこと。イメージカラーである青を使いたいのですが、京成本線のラインカラーであり、カウンター類のカラーも青なので、みどりの窓口などの緑に対して赤を使って目立たせているJRのようにはいきません。次善の策としてオレンジでしょうか、これは目立ちますし、空港2駅での誘導にもマッチします。
こうしてスカイライナーに目が行く仕掛けがまず必要でしょう。

NEXは地道な呼び込みも


●復路はNEX
こちらも指定席券売機のシートマップ機能で購入した時にはかなり空いていました。空港見物の時間を取るために1本後にしたため、その時点では40分程度の時間があったとはいえ、1両丸ごと空いている車両もあり、全体的に動きが少ない日のようです。

乗車は空港第2ビルからにしたんですが、改札を抜けてさてホームにと思ったその時、いきなり呼び止められました。
別に撮影その他を咎められたわけではなく、なんと奇遇にもパリ駐在中の友人と出会ったのです。一時帰国だそうで、大寒波の欧州から着いたばかりとのこと。

じゃあ私はこっちなので、と無粋なことも言えず、さっきのシートマップ情報を見ればガラ空きなのは分かっていたので、友人の車両にお邪魔して隣席に座りましたが、案の定空いていたのは当然として、検札が無かったのにはちょっと驚きました。
京成もそうですが、指定座席に座っていれば検札は無く、違う座席、指定券非所持だと検札するというルールのはずですが。

E259系の車内を観察するつもりでしたが、前回の一時帰国時に飲んで以来の1年ぶりの再会ということもあり、話に夢中になるうちに都内に至ったので、あまり観察できていません。
その代わりに正真正銘の渡航者の利用を見ることになったわけですが、まず目についたのがきっぷはクレカ購入ということ。現金払いというケースは欧米では少ないわけで、今や中国などでもカードの普及が著しい中、カード対応は必須ということを改めて認識しました。

気になったのはスーツケースの扱い。デッキから入ったところに大型荷物置きがあるのは253系からの設備ですが、数字錠式のチェーンロックがあるのはセキュリティ上安心にみえますが、空港第2ビルのわずかな停車時間に使用となると、ここで手間取ることで後ろの乗客が荷物置きを使うどころか乗車できない状態になってしまいます。

手間取ったチェーン式ロック

日暮里という「途中駅」がターミナルとなる京成がロックではなく監視カメラをセキュリティ対策にしているのに比べると、確かに途中駅の停車が多く、セキュリティ対応が必要とはいえ、やや企画倒れのような気もします。
乗りなれた人ならスマートに扱うのかもしれませんが、E259系初乗車の友人もまず操作方法に目を通すから大変でした。

シートはスタイリッシュなスカイライナーに対し、デザイン的にはオーソドックスとも言えるものです。
モニターはデッキとの扉上だけだったスカイライナーに対し、JR西日本の321系、225系のように中央部分にも設置されているのは見やすいです。JR EAST PASSやSuicaの宣伝といったあたりは抜け目ないという感じですが、CMがスカイライナーとかなり被っていたのは代理店が共通なのか、スポンサーが敢えて両方に出しているのか。多分後者でしょうが、会社を越えて同じ成田アクセスで同じCMというのはちょっと不思議な感覚です。

E259系車内

東京で大半が降車し、渋谷で友人はじめ残りの半分が下車。渋谷というのは日暮里から正反対ですから京成でも不便ですし、リムジンでも時間がかかるとあってここの停車はヒットと言っていいのでは。

座席の様子

新宿の時点ではガラガラでしたが、乗車効率という意味では東京発着でよさそうなものの、こうした直通客のニーズの集大成というのが馬鹿にならないです。それがセールスポイントになっているだけに、はっきり言えばガラガラですが横浜や新宿、大宮への延長をしているということでしょう。池袋などでも直通を謳う宣伝が大きく出ていますし。

池袋での宣伝

新宿はNEXがもっぱら使う5番、6番線に到着。山手線などへの乗り換えはホーム池袋寄りの階段から地下道を延々と歩くのが億劫ですが、それでも案内は分かりやすく、混み合う構内でも分離したことで空いているので、ストレスはかえって感じないのかもしれません。

延々と歩くのは...


●そしてシティライナー
こちらは8月に空港第2ビル−日暮里で試乗しています。
改正当初から予想をはるかに下回る空きっぷりに、本改正一番の失敗の呼び声も高い存在になってしまっていますが、試乗時もスカイライナーが概ね7割程度の乗車で、NEXも同程度という中、空港第2ビルや京成成田で乗車列車を含めて上下2列車ずつを実見しましたが、20〜30人程度の入りと、40分ヘッド時代に船橋、成田関係だけでコンスタントに20〜30人はいたことを考えると、当時の「基礎票」すら逸走してしまった結果になっています。

悩ましいのはスカイライナー時代はそれこそ今回のスカイライナー試乗のように日程や時間帯のアヤで極端に乗客が少ない時でも、船橋や成田需要が一定数存在することで下支えになっていたのですが、列車を分離したことでスカイライナーは下支えが無くなり、シティライナーはニッチ需要しか残らない状態とどっちも困った結果になっています。

ちなみに船橋では従来通りドア扱いを限定していますが、青砥では全扉を開けるので、特急券を持たない乗車が懸念されます。実際試乗時にもそうとしか見えない乗客がいましたし。

苦しいシティライナー

シティライナーの極端な不振については、京成社長も見直しに言及しているくらいですが、そもそも渡航需要が少ない日中の時間帯に気休め程度の設定ではいけません。もともとスカイライナー自体の利用も少なかったのですから。

さらに本線のお出かけ需要という意味でも中途半端です。特に沿線へのお出かけ需要の創出という意味では、近年観光に力を入れている佐倉をターゲットにしたいですし、休日に多く見られるゴルフ需要を考えると往復とも使えません。
成田山参拝への対応という意味でも実は中途半端で正時に始まり約20分かかる護摩法要を軸に考えると、シティライナーの成田到着も出発も冗漫で、散策や買い物を考えてもどちらかの時間は合わせたいものです。

大きいのはダイヤが上野口、空港口での制約により大幅に遅くなったこと。日暮里、上野から補完列車として使おうとしても、スカイライナーとの時間差が付き過ぎました。改正前に比べて約10分の所要増はその価値を大きく下げています。
特急を追い抜くのは差別化という意味で有効ですが、佐倉で抜けばスジも立つのに八千代台になっているのが快速の佐倉折り返しとの兼ね合いもあるようです(本線上でエンド交換をするので、シティライナーが佐倉で特急を追い抜くときに折り返しの快速がいる場所が無くなる)。
一方で本来はシティライナーが追い越すと思われる感じで快速が小岩でカラ退避(3分停車)しているなど、本来のスジでない、しわ寄せを引き受けてしまった感のあるスジでは、利用者にアピールできません。

●交通実態調査を見る
さて冒頭にも記した2010年10月29日に成田空港会社から発表された「成田国際空港アクセス交通実態調査」です。

これは2、3年に1回実施されている実態調査が本年3月だったため、成田スカイアクセス開業後の追加調査を9月に行ったものですが、定例調査と異なりある程度ざっくりした数字しか出ておらず、またそれも出発旅客のみのため、全入港者の数字がありません。また各セクターの数字が実数だったり比率だったりと統一性が無く、計算してようやく数字が出てきます。

さらに本年3月の定例調査当日にJR線の事故があり、鉄道利用者の数字がかなり歪んでいるため、比較検証しづらいのもネックで、リリースでも前々回となる2007年3月の数字と比較しています。

それを分析してみると、実見の印象とおおむね一致していますが、やはり数字を見ると考えさせられます。

(出発旅客)07年3月10年9月差異
実数比率実数比率実数比率
NEX557212.72659114.25+1019+18.30
それ以外23215.3018073.91△514△22.15
スカイライナー34517.88472310.21+1272+36.85
シティライナー--2870.62+287(+45.18)
本線一般列車633614.46501010.83△1326△20.92
アクセス特急--21154.57+2115(+12.46)
路線バス975722.27807017.45△1687△17.29
貸切・送迎バス890320.32890319.25--
タクシー10412.3810452.26+4△0.38
自家用車483011.12488810.57+18△0.38
国内線航空12532.8624975.40+1244+99.31
その他3090.713100.67+1△0.38
合計43813100.0046248100.00+2435+5.56

※バスについては今回区分してないので貸切バスを前回と同数で仮定。
※自動車(タクシー、自家用車、その他)については全体の増減比で按分。


●伸び悩む京成
今回の数字ではバスや自動車の小分けの数字(シェア)が出ていないので正確性がイマイチですが、自動車等の実数変化がほとんどないことから、貸切・送迎バスの数字も同程度と仮定すると、鉄道が増加し、リムジンバスが減少した格好です。
荒っぽい計算ですが、鉄道の増加の6割近くがリムジンからの転移、残りは出国自体の増加というイメージです。

驚いたのはNEXが18%増やしています。増加の実数としては1019人であり、健闘どころか躍進と言ってもいいでしょう。比較対象が07年のため、成田スカイアクセス開業前後の影響というより、渋谷の全列車停車、武蔵小杉停車の影響がまず挙げられますが、それにしても予想外の数字です。

一方のスカイライナー(含むシティライナー)の増加数1559人、率にして45%増は、空気輸送のシティライナーを除けば本数比で2時間当たり33%の輸送力増加をはるかに上回っており、かなり効率よく増加しています。対NEX比では前回が62%だったものが76%に上昇しており、日暮里の「ハンデ」があっても拮抗状態に持ち込んでいます。

一般列車の比較ですが、NEX以外のJR一般列車が514人、率にして22%の減少ですが、これは「エアポート成田」を乗り通す層というよりも我孫子線経由の減少でしょう。この裏返しがアクセス特急に効いているわけで、東成田や新鎌ヶ谷で目立つ渡航客がその数字になっていると見ます。

アクセス特急に向かう渡航客(東松戸)

京成の本線一般列車は1326人、21%の減少で、アクセス特急は2115人の増加。差し引き約790人の増加の多くはJR一般列車からの乗り替わりでしょう。(東葛地区からの我孫子線経由のほか、東武野田線、武蔵野線沿線から船橋経由「エアポート成田」の層も流れているはず)

京成特急は5010人、アクセス特急の増加のうち、JR一般列車の減少分がフルに効いたと仮定して差し引くと高砂方面からの乗り替わりは約1600人という計算になりますが、従来の高砂以西からの利用が全部乗り替わったと仮定すると、一般列車の利用のうち高砂以西からの利用が全体の2割程度になってしまうため、本線経由のままという乗客が多い計算です。

アクセス特急の絶対値は1個列車あたり単純平均で100人程度と、数回の実見を考えると悪くは無いですが、一般列車全体での増加がさほどでもないことを考えると、スカイライナーと違い需要の掘り起こしに苦戦している印象です。

一般特急の高砂以西からの利用が半分と控えめに想定しても、3000人程度の乗り替わり対象があるなかで、アクセス特急へのシフトは4割強に留まり、日中の本数比5割(2:1)を下回ります。(高砂以西からの利用比率が高ければシフト比率はさらに下がります)
一般列車全体での増加は12%、JR一般列車との差し繰り分を差し引くとわずかに4%の増加では、スカイライナーと違い、「増発」効果が全く出ていません。

この数字から見えることは、スカイライナーは強気に出ても客の増加が付いてきそうなこと。残念ながらシティライナーを見切って20分ヘッドを実現したほうがいいかもしれません。

一般列車は本線特急の底堅さと、アクセス特急の苦戦。アクセス特急は新鎌ヶ谷、東松戸乗り換えの需要掘り起こしに関しては我孫子線経由とみられる利用の数字を激減させるなど相当な効果は見られますが、都内からの「指名買い」、需要掘り起こしに失敗した格好で、本線特急とのシナジー効果も不発の様相です。

逆に一般特急の堅調ぶりは想像以上で、LCCターミナル設置をにらんだ東成田線への振り替えといった意見がいかに現実離れをしているかを示しています。

●羽田国際化の影響
今後の見通しとしては、羽田国際化が一番影響するのがNEXでしょう。NEXが強い地域は都心、城南、神奈川方面で、まさに羽田が便利なエリアですし、価格対応力のあるビジネス需要が多いのもNEXでしょうから。

スカイライナーのシェアは相対的には上昇しますが、絶対値的には微妙で、アクセスの利便性向上による成田需要の確保をJRと協調して進めていくべきですが、12月7日の県議会での答弁で京成からの情報として明らかになった内容として、スカイライナーの利用は出国以外も含む全体で日あたり1100人、想定を下回るとあり、どうやら既に羽田国際化の影響が出ているようです。





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