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沢露川

『流川集』(露川編)


元禄6年(1693年)10月、『流川集』(露川編)刊。 丈草 序。

   夏之一
  梅下翁
ほとゝきす待やら淀の水車
    宗因

一節にほふ風のたちはな
   露川

里人の野菜をはこふ夕月に
    支考

狂哥の集もこのころの秋
   白堂



   夏之二

唐破風の入日や薄き夕凉
   翁

誰かためそ朝起ひるね夕凉
    其角

大雨に今一なきやほとゝきす
    丈艸

盤斎の湯衣なつかし夕凉
    洒堂

茶焙(アフリ)の水のみかゝる暑さかな
    正秀

   あはゝうき世にすゝむへかりけり

蚊の聲にのかれすまして蚊屋一重
    曲翠

取茸の内の暑さや棒つかひ
    乙州

鷹の羽の松より落るすゝみ哉
  大津尼
川中に登して見たし夏の月
   智月

時鳥いつこ喜撰か住ところ
    露川

石山の門うつ比をほたる哉
   車庸

ちからなき獨活のしけりや時鳥
   素覽

   東武におもひ立けるころおのおの 木曾塚 に會して

鈴掛をかけぬはかりのあつさ哉
    史邦

起ふしにたはふ紙帳も破ぬへし
    素牛

行馬の水にいなゝく夏野哉
   游刀
  三河
水際のこゝろもとなし蓮の花
    白雪

   秋

一ツつゝ名乘てわたれ秋の鳥
   乙州
  ミノ
我を客我をあるしの月見哉
   如行

   濃の已百おもひかけぬ盲目となれはそれをさへ
   哀に聞侍るに

行あたる壁にもさそなけふの月
    已百

   名 月

川筋の関屋は幾つ今日の月
   其角

名月や誰か養ひて稲のはな
   桃隣

悟らぬか月の矢矧の番所
   露川

たはこよりはかなき桐の一葉哉
   支考

   追 悼

(クヤミ)いふ人のときれやきりきりす
    丈艸

   春

温飩うつ跡や板戸の朧月
    丈艸

膳立に水うつ比か桃の花
    支考

一莚ちるや日うらの赤つはき
    去來

世の中になにやさかしき雉の耳
    其角

四方より花吹入て湖の波
   翁

   留 別

落つきのしれぬ別やいかのほり
    丈艸

   四 鳴   春夏秋冬

照りつゝく日やかけろふの芝移
   史邦

くり石や藏の戸前の玉椿
   之道

   冬之一

淺漬に笠を脱けり雪の宿
   其角

手の氷りても削る魚串
   岩翁

月の暮猫の化粧の静にて
   支考

菊の雫にぬるゝきり紙
   沾徳



   冬之二

團栗は小春に落る端山かな
    言水

暖簾や雪吹きわたす旅籠町
    去來

魚鳥の心はしらす年わすれ
   翁

このわすれなかるゝ年の淀ならん
    素堂

白髪に我あやからん年わすれ
    支考

暮て行市の名殘や切草履
    已百

   旅 行

明星や霜吹おろす伊吹山
   露川

   法師はかりうらやましからぬものはあらし

鳶の尾やめされてけふの雪の花
   支考

山鳥も尾をとりまはせ年の暮
   露川

網代守大根ぬす人見付たり
   其角

塩鯛の歯茎も寒し魚の棚
   翁

   元禄六龍集癸酉初冬

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