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蕉 門

槐本之道

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大坂道修町の薬種問屋の主人。伏見屋久右衛門。初号東湖。別号諷竹。

之道 大坂人、後諷竹ト号ス、道修町ドウシヨ伏見や久左衛門ト云、今ハさ藤や忠左衛門、跡カスカナリ。

『蕉門諸生全伝』 (遠藤曰人稿)

 元禄3年(1690年)6月、 幻住庵 に芭蕉を訪ねて入門。「之道」と改号。



 元禄3年(1690年)8月、之道は幻住庵に芭蕉を訪ねる途次、 鬼貫 のもとを訪れている。

   諷竹を東湖といひし昔の宅にて筒
   の花入に薄を入て壁に掛たるを

此すゝき窓より吹や秋の風

『仏兄七久留万』

   中の秋十日あまり、之道、芭蕉翁を
   たづねて行日、後のなつかしきを
  伊丹
   鬼貫
橋よりも戻る心を勢田の奥

 空いそぎする秋の船衆
   之道


 元禄3年(1690年)9月、 『江鮭子』 (之道編)序。

 元禄5年(1692年)夏、車庸・之道は勢多・石山の螢見に出向き、膳所の人々と歌仙。

   即 興
   珍碩
螢見や茶屋の旅籠の泊客

 湯殿の下駄に散レる卯の花
   車庸

そよそよと風にはちくの皮干て
    正秀

 笠一繩手先へゆく鑓
   昌房

百舌鳥ひくやおこしかけたる岨の月
    曲水

 露のよどみにむつはねてとぶ
   探志

椀家具も人の跡かる舶の秋
   之道


 元禄6年(1693年) 、 洒堂 は大坂に移るが、之道と軋轢を生じる。

 元禄7年(1694年)閏5月、之道は去来の許に芭蕉を訪ねて惟然・丈草・支考・野明と歌仙を巻く。

   落柿舎即興

牛ながす村のさは(わ)ぎや五月雨


 同年9月9日、芭蕉は大坂に着き酒堂亭に入り、後に之道亭に移る。9月14日、畦止亭で歌仙を巻く。

   住吉の市に立てそのもとり長谷川
   畦止亭におのおの月を見侍るに
 芭蕉
升買て分別かはる月見かな

秋のあらしに魚荷つれたつ
   畦止

家のある野は苅あとに花咲て
    惟然

いつもの癖にこのむ中服
    洒堂

頃日となりて土用をくらしかね
    支考

榎の木の枝をおろし過たり
   之道


同年9月26日、 浮瀬亭 で半歌仙。

   此集を鏤(ちりばめ)んとする比、芭蕉
   の翁は難波に抖数(藪)し玉へると聞
   て、直にかのあたりを訪ふに、晴々
   亭の半哥仙を貪り、畔止亭の七種の
   恋を吟じて、予が集の始終を調るも
   のならし。

此道や行人なしに秋の暮
   ばせを

 岨の畠の木にかゝる蔦
   泥足

月しらむ蕎麦のこぼれてに鳥の寐て
    支考

 小き家を出て水汲む
   游刀

天気相羽織を入て荷拵らへ
   之道

 酒で痛のとまる腹癖
   車庸


同年10月5日、芭蕉は之道亭を出て 南御堂 前に移る。

 元禄9年(1696年)10月12日、芭蕉の三回忌に諷竹は 義仲寺 を訪れている。

凩も誘ひあはすや墓まいり


 元禄10年(1697年)、上京。 『染川集』 (哺扇編)刊。諷竹序。

 元禄11年(1698年)3月、 『淡路島』 (諷竹編)刊。丈艸序。諷竹跋。

  同年5月末、 岩田涼莵 は伊勢を立つ。

   團友子發足に下りあはせて

一ふしはどこへ出しても夏男
   諷竹


 元禄13年(1700年)、 『青莚』 (除風編)刊。諷竹序。

 元禄16年(1703年)10月9日、浪化は33歳で没。

御書中も扨は古筆か神無月


 宝永2年(1705年)3月、魯九は長崎に旅立つ。諷竹は餞別の句を詠んでいる。

柳よりあまりて春の夜寒かな
 南堀江
 諷竹


正徳2年(1712年)、没。享年未詳。

之道の句

一通り猪の牙の跡の薄かな


鶯もふできに成て山ざくら


行く人や門田のわせの籾づもり

   天王寺に遷座ましましける善光寺の如来を拝   して

みだ頼むこよひになりぬ後の月


雲に雲おほひ重るあつさかな


うくひすの小頸捻るや朝けしき


ふるひゆく心もしらて梅の花



小座鋪も風吹止は長閑にて

   天神奉納

ことに此神も愛せり松と梅

 さかのはな見にまかりて渡月橋をわたり

やりわたす花の嵐や大井川



灌仏や釋迦も畠に二年越


皆我につかはるゝなり年のくれ

何故そ雨にうたれて杜宇

さらさらの匂ひならねと梅の花


寒けれど風のはづみや梅の花


夜は凍(いて)晝は解つゝ蕗の塔


捻上て友待顔や雁の首


花あれは市の中にも鳥の聲


明がたや又水鳥の一くずれ


しくれけり今夜は聞し箸洗ひ

   病中吟

おもひ出す人の多さよけふの月


瓜畠に秋や來かゝる日の色


花に寢てつかまるゝ迄蝶の夢


あたゝかな泥もどろどろ水なれよ


あき雨や笹の裏葉を吹とをし


中立や路次てふらるゝ梅の笠


住みよしのまひと時雨と暮るまて

市立て鵜沼のさとや啼蛙


梅一重とゝけつくしの枯野塚

秋もけふたつ日や川の薄濁り


七草にかゝむ小腰や八十の弓


またさかぬ梅の梢や三かの月


京よりも晝は伏見のほとゝぎす


十五日たつや睦月の古手買


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