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知足坊一瓢



俳諧西歌仙』(一瓢編)

文化13年(1816年)、刊。知足坊一瓢編。自序。 成美 跋。有鱗・兎一・徐柳校。

笹の散るやうにはへらぬ暑哉
   一瓢

 月のうき出る水を見て居る
   士朗

一瓢
 釈氏 号知足坊 雲耕庵 亦橘中居 住于江戸谷中
  本行寺

士朗
 井上氏 号朱樹 亦琵琶園 俗称専庵 尾州名古屋人
 七十有余歳而没 于時文化九壬申五月十六日

雪雄
 号梅室 加州人 来居于平安

玉屑
 釈氏 号栗本 住于播州米田神宮寺

樗堂
 栗田氏 号息陰 亦二畳庵 予州松山人 遊于芸州
 御手洗没 于時文化十一甲戌八月二十一日

幽嘯
 越後長岡人 来居于肥前長崎

   よろづ病がちに老くちて友もとしどしに
   なくなりぬるを

露の身をもてあつかふや五月雨
   成美

ひろげても寒菊さびし古茶巾
    車両

御油までは往て来た顔や雀の子
    道彦

三つほど寄たき夜とはなりにけり
   一峩

白魚や五歩ほどたらで結ばれず
    対竹

ものに倦て霜夜を覗く眼鏡かな
   諫圃

五月雨や文とりかはす家のうち
    久藏

何処までも秋をのさばれはな芒
    寥松

菜の花に咲なくされなそこの家
   一阿

かはせみの芦にちよいとや角田川
    蕉雨

霧くさきもの焚明の船渡かな
   午心

かすむ日や拍子もかえ(へ)ずいその浪
   可麿

桃さくや家ほり建る浦の人
    完来

きりぎりす鳴けとて植し小菊かな
   詠帰

蚊屋釣ておもひやみけり升落
    護物

うぐひすの見なれ聞なれ端ちかし
   其堂

梅が香の峯にとゞくか雪おろし
   宗瑞

蟹の目のおろかにたつや五月雨
   国村

口あいて不二ものむ気か小蛤
   可良久

菫にも添たけしきやふじの山
    五渡

   山 城

明て行さきざき雁のわかれかな
   月居

   河 内

はや人の家建に来る野うめかな
    耒耜

   摂 津

山風の押へつけるよ鴛鴦ふたつ
   尺艾

あけぼのや露も浮べきはつ鰹
    三津人

咲日から草木とは見ぬ牡丹かな
   奇淵

   尾 張

死残る人の多さよ盆の月
    岳輅

   三 河

月の出てかはるや海の鳴る所
    卓池

煎豆や雨の若葉に京ばなし
   秋挙

   甲 斐

簾出つ柳潜りつ日ぞ永き
    可都里

梅柳捨られぬ世が何処にある
    漫々

あさなあさな草鞋売とや柳ふく
   一作

泥に身を捨たこゝろの巨(炬)燵かな
    嵐外

   相 模

船をりやとりはやされて更衣
    葛三

みの虫も何ぞにかへれ花のはる
    洞々

馬さしと銭いさかひや花の雪
    雉啄

   安 房

笹の葉のさゝやきやうも四月哉
   杉長

美しく留守をつかふぞかきつばた
   郁賀

   上 総

野の宮の風除椿さきにけり
    里丸

象潟や菫のたねは誰が蒔た
    白老

   下 総

苗代に玉のやうなる月夜かな
    鶴老

とりしめぬ盆のはなしや宇治拾遺
    雨塘
  
竹の月はや鮓売の来るころぞ
    素月

加茂川につゝかけたりや心太
    素迪

閑こ鳥背戸から人の来るかして
   李峰

   常 陸

いなづまに逃たやうなり二日月
    李尺

春うれし茶水捨ても草になる
    松江

   近 江

月影のしみこむ松のはしらかな
   千影
  
あら鷹や吹雪の中を雲に入る
    志宇

   信 濃

寝て起て手柄がましや今朝の秋
    素檗

休まする馬の面まで菊のてり
    武曰

我ものになれば掃れず門の雪
    若人

涅槃像銭見ておはす顔もあり
    一茶

   上 野

隣までけし畑行や旅もどり
    碓嶺

   陸 奥

かの草にうちはやされて咲くや梅
    平角

から鮭を本尊にして冬ごもり
    冥々

夕紅葉赤きはものゝ尽る色
    素郷

梅柳世は木がくれて見ゆる也
   雄淵

寒ければ雨の手づまもかはりけり
    曰人

これさへも春の青みや豆腐串
    雨考

住ふるす月や今宵の八重葎
   布席

水かけて明るくしたり苔の花
    乙二

   出 羽

世を捨る人真似もがな萩すゝき
   野松

   加 賀

うの花の下掃はゝき持にけり
   鹿古

   越 後

鶯に筆とつて見ん手六十
    竹里

   備 中

簔虫の巣はつみ残す茶の木哉
    閑斎

   安 芸

咲までは夕顔の名もなかりけり
   玄蛙

   肥 前

炉開て一日高き梢かな
   祥禾

   日 向

けふをしらば小松にあそべ草の蝶
   真彦

   去年の冬わが物見塚に旅宿せし信濃の
   一茶がたぬきの夜話といふは

鳶ひよろひゝよろ神も御立げな
   一茶

 ちれちれもみぢぬさのかはりに
   一瓢

大草鞋小草鞋足にくらべ見て
    ゝ

 一番ぶねにはふるぶちねこ
    茶



頬白の丸いぞけさは寒いやら
   一瓢

 二軒もやいに咲る山茶花
   一茶



   草庵四時

われたのむ門ものらくら柳かな   一瓢

蟻も出てもてなし振やうす畳
    ゝ

むしの来るしほにもなれや壁の草
    ゝ

胡麻三粒はねても嬉し霜の朝
    ゝ

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