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俳 書
『薦獅子集』(巴水編)
高砂住の江の松を古今萬葉 | |
のためしに引れしより塵う | |
せすして連歌につたふ然る | |
に此松は枝葉百間にあまり | |
て諸木にことなる氣色尤俳 | |
諧なるべし | |
江戸 | |
蓬莱の松にたてばや曾根の松 |
其角
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仝 | |
立寄て我成(セイ)ひくし梅の花 |
露沾
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仝 | |
柴部屋を北の隣に梅のはな |
曾良
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大坂 | |
咲花も亂より後の古ひ哉 |
洒堂
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京 | |
花守や白きかしらをつき合せ |
去來
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仝 | |
空腹に須磨を呑こむ鹽干かな |
史邦
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大坂 | |
蒔石や藏の戸前の玉椿 |
之道
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江戸 | |
夏祓目の行方や淡路しま |
嵐雪
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なつかしき津守の家の若葉哉 | 牧童
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大津 | |
雲の峯あまの羽衣干て見せ | 乙州
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僧 | |
御祓や砂地をはしる足のうら |
丈草
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ぜゞ | |
熨斗むくや磯菜凉しき島かまへ |
正秀
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鰯雲鯛も蚫も籠りけり |
北枝
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大津尼 | |
御火燒のもり物とるな村烏 | 智月
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京 | |
風寒き流の音や手水鉢 |
素牛
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住吉の隅に雀の冬籠り |
句空
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御神樂や心々に聞てとれ | 巴水 |
魚荷は大道を過鴉は榎にとまる | |
神の鳥居にとよみけん予滑稽の | |
板短尺をおもひ立都鄙遠境の佳 | |
句乞盡すあまりに蕉門の句とも | |
をくゝりて我にあたふうつし得 | |
て是を舒巻し日々に清廉にすゝ | |
む神慮にかなひけるよと此名を | |
こも獅子と烏帽子を着せ桐の箱 | |
に房結んて奉納し侍りぬ于時元 | |
禄酉冬日加陽巴水 | |
春もやゝけしきとゝのふ月と梅
| 芭蕉 |
一莚ちるや日かけの赤椿 | 去來 |
小松 | |
種池の底澄わたる寒みかな | 塵生 |
毒ための其名もゆかし春の草 |
凡兆
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ねかはくは花のもとにてはる死な | |
んと讀しを | |
山中 | |
西行は死まて花のこゝろ哉 |
自笑
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山中 | |
宇治川の水に臂はる蛙哉 |
桃妖
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みの | |
雛を見に奥迄はひる男哉 |
此筋
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みの | |
重箱や一輪挿の桃の花 | 千川 |
羽黒の
呂丸
はいまた若うして風雅 | |
の友をしたひ初て洛にのほり程な | |
くなき身となりしこそ尚あはれな | |
れ | |
國の子はわろさいふらん手向草 | 智月
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旅する身の行方おもひやら | |
るゝそかし | |
旅人の葬の供にや行胡蝶 | 乙州
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年々や猿に着せたる猿の面
| 芭蕉 |
僧 | |
七種や寺の男の藪にらみ |
支考
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山櫻ちるや小川の水車 | 智月
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東武に志ありて白川の橋はらはら | |
鷄に踏初、與市か蹴上の水にわら | |
ちをしめ直すもあとゆかしく | |
鈴かけをかけぬはかりの暑哉 | 史邦 |
芭蕉の舊庵
木曾塚
にて史邦に別る | |
ゝの二首 | |
宵寐して凉しくあゆめ朝のうち | 智月 |
路通西國旅寐も去年今年と | |
立歸り文來りしを發句して | |
返す | |
其まゝにあれよ凉しき骨海月 | 智月 |
伊勢の
園女
にあうて | |
雲の嶺心のたけをくつしけり
| 路通 |
武江より上るに南江とかや | |
いひし茶やに宿りしか其夜 | |
白雨しきつて前後の百川徃 | |
來留りぬ明れは空にくけに | |
てりわたり晝貌の眠りもさ | |
やうやうし鳥にさめ旅は葎 | |
もをかしく相客の與かる雜 | |
談盡果けれは | |
國々の咄し續きやかんと鳥 | 乙州
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との葉の紅葉はかふもこさ | |
らふか | |
なふなふなふそなたの事か花薄 | 宗因
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編たして椽先淺し小萩原 | 曲翠
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いろの濱に誘引れて | |
小萩ちれますほの小貝小盃
| 芭蕉 |
蕉門をまねきて | |
明月や後は誰着ん檜笠 | 園女 |
鎖あけて月さし入よ浮御堂
| 芭蕉 |
きりきりす鳴やかゝしの袖のうち | 智月 |
深川いつれの庵主とかや。此句を | |
得て他にかたくあはすと旅僧の語 | |
り捨て通る。 | |
蕣や晝は鎖おろす門の垣 | |
木曾塚
より歸るとき | |
名古屋 | |
蓮の實の唯つゝほんとぬけにけり |
越人
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渡り鳥鳴は古郷の咄かや | 丈草 |
風雲あつまりやすく又去や | |
すしかからす難波にとゝま | |
りしに空能坊尋來られけれ | |
ば枕を破窓にならべて物が | |
たりする事六十日秋風たち | |
て行末の旅おぼつかなけれ | |
と此度は木曾路をへて
寐覺
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の床
の鹿の聲をなむとすゝ | |
まれけるまゝにとかくして | |
別れぬ | |
うらやまし君が木曾路の橡の粥 | 路通 |
紫の花の亂やとりかふと | 素牛 |
しのはらの古戰場
にて | |
笹蟹のくんて落たる一葉哉 | 乙州 |
ひごろにくき烏も雪の朝哉
| 芭蕉 |
はきちぎる八疊敷の寒さ哉 | 去來 |
月花の愚に針たてん寒の入
| 芭蕉 |
蕎麥切の先一口や年わすれ | 宗因 |
暮の市誰を呼らん羽織殿 | 其角 |
蛤の生るかひあれとしの暮
| 芭蕉 |
王照君か胡國の旅にかはりて | |
肥後助成寺 | |
此あつさ人の見しらぬよごれ面 | 使帆 |
同市眞中 | |
ほとゝきすをのれか聲はふさからす | 長水 |
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