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俳 書
『芭蕉句鑑』
(松宇文庫)
①
・
②
天保の頃成立。
元禄二巳年 春の部
高き家にのぼりて見れはの御製の有かたく今もなほ
叡慮にて賑ふ民や庭竈
とう山旅宿
陽炎の我肩にたつ帋子哉
歌よミの先達多し山さくら
遙けき旅の空を思ひやるにもいさゝかも心にさハらんのむつかしけれハ日頃
住ける庵
を相知れる人に譲りて出ぬ此人なん妻を具しむすめ孫なともてる人なりけれは
草の戸も住かはる家そ雛の家
奥の細道
千住にて
行春や鳥鳴魚の目はなミた
野州室八島
糸ゆふのむすひつきたるけふり哉
田家春の暮を思ふ
入相の鐘も聞えす春の暮
夏の部
あらたうと青葉わか葉の日の光
しはらくは滝にこもるや夏の始
時鳥裏見の滝のうらおもて
陸奥一見の桑門ふたり那須の篠原一見せんとなほ殺生石見んとていそきけるも俄に雨降出しぬれは先此所にとゝまりて
落来るや高久の宿のほとゝきす
那須の温泉明神相殿に八幡宮を移し奉りて両神一方に拝れ玉ふ
湯を結ふ誓もおなし岩清水
結ふよりはや歯にひゝく泉かな
夏山に足駄を拝む首途哉
木啄も菴はやふらす夏木立
野 中
秣負人をしをりの夏野哉
野を横に馬ひきむけよ時鳥
殺生石
石の香や夏草赤く露暑し
田一枚植て立さる柳かな
奥州今の
白川
に出る
早苗にも我色黒き日数かな
西か東歟先早苗にも風の音
日数重るまゝに白川の関にかゝりて旅心定まりぬ
関守の宿を水鶏に問ふもの
風流のはしめや奥の田植哥
世の人の見付ぬ花や軒の栗
此句初かくれ家や目たゝぬ花を軒の栗と吟ありしを後にかく直されしとや
文章を略
早苗とる手もとや昔忍すり
田や麦や中にも市の時鳥
笈も太刀も五月にかされ帋幟
笠嶋はいつこ五月のぬかり道
阿武隈川の水もとにて
五月雨は滝降埋む水かさ哉
桜より松は二木を三月こし
菖蒲草足に結ハん草鞋緒
松島
の賦略す
嶋々や千々に砕けて夏の海
秋鴉亭の佳景に對す
山も海もうこき入るや夏座敷
夏艸や兵ともの夢のあと
五月雨の降残してや光堂
蚤虱馬の尿するまくらもと
涼しさを我宿にしてねまる也
這出よ鹿火家か下のひきの声
眉掃を俤にして紅粉の花
閑さや岩にしみ入蝉の声
五月雨をあつめて早し最上川
ありかたや雪を薫らす南谷
涼しさやほの三日月の羽黒山
雲の峯いくつ崩れて月の山
語られぬ湯殿にぬらす袂かな
悼遠流天宥法印
其魂を羽黒にかへせ法の月
新庄風流亭
水の奥氷室たつぬる柳かな
鶴か岡
重行
亭
珍らしや山を出羽の初茄子
あつみ山や吹浦かけて夕涼ミ
暑き日を海に入たり最上川
時鳥啼音や古き硯筥
象潟や雨に西施か合歓の花
汐越や鶴脛ぬれて海涼し
夕晴や桜に涼む浪の花
小鯛さす柳涼しや蜑か軒
はつ真瓜たてにや割らん輪にやせん
コウチ法印の霊地にて
みな月やから鮭拝む野栖山
秋の部
文月や六日も常の夜には似す
越後国出雲崎といふ所より佐渡へハ海上十八里となり初秋の薄霧立もあへす流石に波も高からされハ只手の前の如く見渡さる
荒海や佐渡に横たふ天の川
新潟にて
海に降雨や恋しきうき身宿
高田医師細川青菴にて
薬園のいつれの花を草まくら
ひとつ家に遊女も寝たり萩と月
早稲の香や分入右は有磯海
塚もうこけ我泣声は秋の風
秋涼し手毎にむけや瓜茄子
此句初残暑しはし手ことに料理れと吟ありしをかく直されしとそ
くりからや三度起ても落し水
あかあかと日ハつれなくも秋の風
歓水亭
ぬれて行人もおかしや雨の萩
しほらしき名や小松吹萩薄
浪の間や小貝にましる萩の塵
いろの浜
小萩ちるますほの小貝小盃
如水別埜
篭り居て木の実草の実ひろハはや
木因亭
かくれ家や月と菊とに田三反
前文略
藤の実は俳諧にせん花の跡
如行
亭
痩なからわりなき菊の含
(つぼみ)
かな
如行か席上の
響応をせいして
白露のさひしき味をわするなよ
前文略
其まゝに月もたのまし伊吹山
蛤のふた見に別れ行秋そ
硯かと拾ふやくほき石の露
内宮はことおさまりて
外宮
の遷宮を拝侍りて
尊さに皆おしあひぬ御遷宮
伊勢の中村といふ所にて
秋風や伊勢の墓原猶凄し
前文略
月さひよ明智か妻の咄せん
蜻蛉やとりつきかねし艸の上
草のとほそに住わひて秋風の悲しけなる夕くれ友とちの方へつかハしける
ミの虫の音を聞に来よ草の庵
冬の部
伊賀山越
はつ時雨猿も小ミのをほしけ也
自画賛
いかめしき音やあられの桧笠
前文略
先祝へ梅をこゝろの冬こもり
時雨ふれ笠松へ着く日也けり
長嘯か墳もめくる歟鉢敲
元禄三年午 春の部
都近き所に年をとりて
誰人か薦着てゐます花の春
子とも等よ梅折残せ牛の策
鶯の笠落したる椿かな
園女
亭
暖簾の奧ものゆかし北の梅
二見の図を拝ミて
うたかふなうしほの花も浦の春
陽炎や柴胡の原のうす曇
伊賀国花垣の庄はそのかミ奈良の八重桜の料に附られけるといひつたへ侍れは
ひと里は皆花守の子孫かや
雲雀啼中の拍子や雉子の声
蛇喰と聞はおそろし雉子の声
翁曰うつくしき皃かく雉子のけ爪かなといふハ
其角
か句なり蛇くふといふは老吟なり
木のもとは汁も鱠もさくらかな
珎夕
か洒楽堂の記を略
四方より花吹いれて鳰の海
出羽の
圖子呂丸
をいたむ旅にて死せし人なり
当帰よりあはれは塚のすみれ草
望湖水惜春
ゆく春を近江の人とおしミける
夏の部
時鳥声横たふや水のうへ
翁曰此句ハさせる事はなけれとも白露横江といふ奇文を味ひて詠合せたる也一度ハ一声の江に横たふやとも又声や横たふとも句作得せしか人にも判させて江の字をはふきて水の上とくつろけ句の匂ひよろしき方に後に定しと也
幻住庵の記略す
先たのむ椎の木もあり夏木立
草の葉を落より飛螢かな
無常迅速
頓て死ぬ気色は見えす蝉の声
日の道や葵かたふく五月雨
秋の部
木曽の旧庵
にありて敲戸の人々に対す
草の戸をしれや穂蓼に唐からし
かゝ
(く)
さぬそ宿は菜汁に唐からし
名月や座にうつくしき顔もなし
三井寺の門たゝたかはやけふの月
名月や鶴脛高き遠干かた
打手の浜にて
十六夜や海老煮るほとの宵の闇
堅田にて
病鴈の夜寒に落て旅寝哉
木曽殿とうしろ合の夜寒かな
むかし聞秩父とのさへ相撲とり
詞書を略
柴の戸の月やそのまゝ阿弥陀坊
野々宮の鳥居に蔦もなかりけり
冬の部
時雨るや田のあら株の黒むほと
留守の間にあれたる神の落は哉
湖水眺望
比良三上雪かけわたせ鷺の端
(橋)
旅 行
初雪や聖小憎の笈の色
洛の御霊別当景桃丸興行
半日は神を友にや年わすれ
大津にて
三尺の山もあらしの木の葉かな
また埋火の消やらぬ臘月の末京都を立出て
乙州
か新宅に春をまちて
人に家を買せて我はとし忘
元禄四未年 春の部
湖頭の
無名庵
に春をむかへ三日閉口四日初て題
大津絵の筆のはしめハ何仏
乙州
東都行餞別
梅若菜まり子の宿のとゝろ汁
路通
みちのくへ趣時
草まくらまことの花見しても来よ
田家にありて
麦飯にやつるゝ恋歟猫の妻
万乎別墅
年々や桜をこやす花のちり
闇の夜や巣をまとハして鳴千鳥
花の蔭硯にかはるまる瓦
前文を略
観音のいらか見やりつ花の雲
嵐山にて
華の山二丁のほれは大悲閣
山吹や笠にさすへき枝の形
支考
東行餞別
此こゝろ察せよ花に五器一具
春の夜は桜に明て仕舞けり
夏の部
行者堂
にて
汗の香に衣ふるはむ行者堂
竹椽の前に柚の木一もと花かうはしけれは
柚の花や昔しのはん料理の間
霍公鳥大竹藪をもる月夜
手を打ハ木魂に明る夏の月
夏の夜ハ木魂に明る下駄の音
廿二日の条にある寺に独居していひし句也とありて
うき我をさひしからせよ閑古鳥
五月四日落柿舎 を出るとて
五月雨や色紙へきたる壁の跡
時鳥まねく歟麦のむら穂花
石川丈山の像
風かをる羽織は襟もつくろハす
本間主馬か亭に招れしに大夫の家名を称して 二句
ひらひらとあくる扇や雲の峯
蓮の香に眼を通ハすや面の鼻
游刀亭納涼二句
さゝ波や風のかをりの相拍子
湖や暑をおしむ雲の峯
湖水田植
渺々と尻並へたる田植かな
秋の部
盆過て霄闇くらし虫の声
座右銘
人の短をいふ事なかれ
己か長を説事なかれ
ものいへは唇寒し秋の風
高瀬の漁火といふ題をとりて
篝火に鰍や浪の下むせひ
翁云下むせひといふ所鰍ならてハ不叶余の魚にてもよきといふ人にハ論するに不及といへり
前文章略す
鎖明て月さし入よ浮見堂
蜑の家は小海老にましるいとゝ哉
安々と出ていさよふや月の雲
前文略
こちらむけ我も淋しき秋の暮
九月九日乙州か一樽を携来る
草の戸や日くれてくれし菊の酒
正秀亭初会
月代や膝に手を置宵のうち
画賛の句を乞ハれて
暮の秋ぬかみそ壺もなかりけり
しつかさやゑかゝる壁のきりきりす
范蠡かちやうなんの心を 西行
すてやらて命をおふる人ハミなちゝのこかねをもてかへるなりとあるうたのこゝろを
ひと露もこほさぬ萩のうねり哉
ある書に此句を画賛と題し又西行の哥にならふといふ詞書をしたる句にひと露もこほさぬ菊のこほり哉と出せるハ非也句意も非ならす其上句意も此句と同し心也此句ハ西行か画賛に范蠡か詞書を添てしかいへる句なり
ある智識の曰クなま禅大疵のもといとありかたくて
稲妻を悟らぬ人の尊さよ
冬の部
月の沢と考えける明照寺に旅のこゝろをすまして
たつとかる涙や染てちる紅葉
同寺の堂の奉加の言葉書に曰く竹樹密ニ土石老タリと誠に木立物ふりて殊勝に覚侍れは
百年のけしきを庭の落葉哉
美濃の垂井矩外か許にて
作り木の庭をいさめる時雨かな
葛の葉の表見せけり今朝の霜
美濃耕雪亭別墅
凩に匂ひや付しかへりはな
寒き夜に不破の関守人は誰そ
千川亭
折々に伊吹を見てや冬篭
熱田梅人亭にやとりて下略
水仙や白き障子のともうつり
されはこそあれたきまゝの霜の宿
同新城家中菅沼権右衛門宅
京に倦てこの凩や冬住居
鳳来寺に参篭して
木枯に岩吹尖る杉間哉
夜着一つ祈出したる旅寝哉
嶋田の駅
塚本か家
に行て
宿かして名をなのらする時雨哉
霜月はしめ武江に帰り
都出て神も旅寝の日かすかな
三秋を経て
草庵
に帰れは門人日々に群り来りていかにと問ふにこたへ侍り
ともかくもならてや雪の枯尾花
常憎むからすも雪のあした哉
さし篭る葎の友歟冬菜売
行年や薬に見たき梅のはな
魚鳥のこゝろはしらす年わすれ
元禄五甲
(ママ)
年 春の部
年々や猿にきせたるさるの面
春もやゝけしきとゝのふ月と梅
鴬や柳のうしろ藪の前
木曽の情雪や生へぬく春の艸
おとろへや歯に喰あてし海苔砂
草庵に桃桜あり門人に
其角
嵐雪
あり
両の手に桃と桜や草の餅
起よ起よ我友にせんぬるこ蝶
子に倦くと申人には花もなし
那須
雲峯寺
仏頂禅師
の小庵を尋て
留守に来て棚さかしする藤の花
夏の部
時鳥鳴や五尺のあやめ草
鎌倉にいきて出けんはつ松魚
秋の部
草いろいろ各花の手からかな
青くてもあるへきものを唐からし
三日月に地は朧なり蕎麥の花
名月や門にさし込汐かしら
柱は杉風枳風か情を削住居ハ曽良岱水か物すきをわふ猶明月のよそほひにと芭蕉五本を植て
芭蕉葉をはしらに懸ん庭の月
秋の野や草の中行風の音
冬の部
けふはよ
(ママ)
り人も年よれ初時雨
支梁亭口切
口切に堺の庭そなつかしき
深川大橋
のなかはかゝりたる時
はつ雪や懸かゝりたる橋の上
架なりたる時
有かたやいたゝいてふむ橋の霜
うち寄て花入探れ梅椿
葱白く洗あけたる寒かな
月花の愚に針立ん寒の入
寒菊や小糠のかゝる臼のはた
蛤もいけるかひあれ年の暮
元禄六酉年 春の部
元日に田毎の日こそ恋しけれ
人も見ぬ春や鏡の裏の梅
去来かもとへなき人の事なといひつかはすとて
菎蒻
(こんにやく)
のさしみもすこし梅の花
露沾 公にて
西行の庵もあらん花の庭
鐘つかぬ里は何を歟春の宵
夏の部
曙やまた朔日にほとゝきす
許六
餞別
椎の花のこゝろにも似よ木曽の旅
うき人の旅にもならへ木曽の蠅
露沾公にて仕る
五月雨の鳰の浮巣を見に行ん
秋の部
前文略
蕣や昼は錠おろす門の墻
朝かほや是もまた我友ならす
老の名のありとも知らす四十雀
榎の実ちる鶉の羽音や朝嵐
深川
五本松
といふ所に舟さして
川上とこの川下や月の友
前文略
入月の跡は机の四すミかな
岱水亭にて
影待や菊の香のする豆腐串
八丁ほりにて菊の花さくや石屋の石の間
(あひ)
柳陰軒
にて
散る柳あるしも我も鐘を聞
小名木沢桐奚興行
秋に添て行はや末は小松川
冬の部
大根引と云ふ事を
鞍坪
(ママ)
に小坊主乗るや大根引
竹の賛
撓ては雪待竹の気色かな
元禄七戌年 春の部
蓬莱に聞はや伊勢のはつ便り
梅か香にのつと日の出る山路かな
八九間空に雨降る柳かな
傘に押わけ見たる柳かな
青柳の泥にしたゝる汐干哉
声に似ぬ発句も出よはつ桜
此句下の桜いろいろ置かへ侍りて風をはつ桜と
いひ出たり此初といふ字位よろしきとてき
ハめられしと翁もいはれき
句空への文章
うらやまし浮世の北の山さくら
桜をハなと寝ところにせぬそ
花に寝ぬ春の馬の心よ
花に寝ぬ是もたくひ歟鼡の巣
前文略す
四つ五器の揃はぬ花見心かな
夏の部
木かくれて茶摘も聞や郭公
潅仏や皺手合する珠数の音
此句初ハ
涅槃会
やとありしそ後潅仏に
しかへられしとなり
卯の花やくらき柳のおよひこし
贈
桃隣
新宅自画賛
寒からぬ露や牡丹の花の蜜
大垣の城主日光御代参勤させ給に
扈従す
岡田何かし
におくる
笹の露袴にかける茂り哉
武府を出て故郷に趣くを人々
川崎まて送り来りて餞別の句を
なす其のかへり事をすとて
麦の穂をたよりにつかむ別れ哉
駿河路や花橘も茶の匂ひ
道はたに休らひて
とんミりと樗や雨の花くもり
大井川水出て嶋田
塚本氏
の
もとに泊て二句
五月雨の雲吹落せ大井川
苣
(ちさ)
はまた青葉なからや茄子汁
佐夜の中山
に
命なりわつかの笠の下涼し
夏の月御油より出て赤坂や
鳴海知足亭
杜若我に発句の思ひあり
尾張にて旧交に対す
世を旅に代かく小田の行戻
露川か輩佐谷迄道送りして
ともに隠士山田氏亭に仮寝す
水鷄鳴と人のいへはや佐谷泊り
野水閑居を思ひ立けるに
涼しさハ差図に見ゆる住居哉
蔵田氏に隨ひて
柴つけし馬の戻りや田植酒
雪芝か庭に松を植るを見て
涼しさやすくに野松の枝の形
柳骨離片荷は涼し初真桑
去来落柿舎にて
朝露よこれて涼し爪の泥
此句ハ初瓜の土といはれしを涼しきといふに縁あるを思ひめくらして泥とハなしかへられたり
六月や峯に雲おく嵐山
此句中七文字種々句作ありたれとすハらて漸々として峯に雲おくと云句を出吟ありしとそ句作骨を折られたる所といへり
小倉山常寂寺にて
松杉をほめてや風の薫音
清滝や浪にちりこむ青松は
初ハ大井川浪にちりなし夏の月といふ句也然るをかく直されしと也
清滝の水汲よせてところてん
秋の部
前文略
稲妻や顔のところか薄の穂
稲つまや闇のかた行五位の声
前詞書を略
家は皆杖に白髪の墓参
初ハ一家みな白髪に杖のといはれしを直されし也
尼寿貞か身まかりけるを聞て
数ならぬ身とな思ひそ魂祭
名月の花かと見えて棉畠
名月に梺の霧歟田のくもり
ミの虫庵
にて
今宵誰よし野ゝ月も十六里
片野の望翠宅にて
里ふりて柿の木持たぬ家もなし
伊勢の斗従に山家を訪れて
蕎麦はまた花てもてなす山路哉
松茸やしらぬ木の葉のへはりつく
行秋や手をひろけたる栗のいか
ひいと鳴尻声寒し夜の鹿
菊の香や奈良には古き仏達
闇峠にて
菊の香にくらかり登る節句かな
菊に出て奈良と難波ハ宵月夜
升買て分別かはる月見かな
泥足か集
の俳諧催しける時所思
此道や行人なしに秋のくれ
此□一ハ句人声や此道帰る秋の暮といふを出されて衆評の上□なれしとそ□□□
笈日記
にあり
清水の茶屋四郎左衛門方にて
松風の軒をめくりて秋くれぬ
旅 情
此秋は何て年よる雲に鳥
目にかゝる雲やしはしの渡鳥
園女か家にて
しら菊の目に立て見る塵もなし
芝柏興行
秋ふかき隣は何をする人そ
旅に寝て夢ハ枯野をかけ過る
貞徳 宗鑑 守武の画賛に
東藤子賛を乞
其詞云
三翁ハ風雅の天工をうけえて
心匠を万歳に伝ふ此かけに
遊んもの誰か俳言をあふかさらんや
月花のこれやまことのあるし達
前書を略
世にふるもさらに時雨のやどり哉
宗祇
世のなかはさらに宗祇の時雨哉
西行上人画賛
捨はてゝ身はなきものと思へとも
雪の降る日は寒くこそあれ
花の降日はうかれこそすれ
姨石と鳴かはしたる雉子哉
澁笠のうらに書付給ふるハ
世にふるもさらに宗祇のやとり哉
又人々に書て給ふたるハ
世の中はさらに宗祇の時雨哉
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